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最近、相続に関心を持たれる一般の方が増加しています。今年に入ってからは、私どもの事務所にも特に中高年の女性の方から多数の問い合わせをいただくようになりました。
もっとも、相続のプロとしてとても気になる傾向があります。それは、大半の方が『相続税』に対して関心をお持ちで、いま激増している遺産分割協議での相続トラブルは自分には関係のないことだと思い込んでいることです。
確かに、昨年秋に政府税制調査会が相続税の課税を強化する方針を示しました。これまで相続税を納める必要がなかったような一般の人でも、今後は多少相続税を納めることになるケースも出てくるかもしれません。
しかし、私は仮に相続税の課税が強化されたとしても、相続税が払えずに不動産を物納しなければならないような事態に直面される方はほとんどいらっしゃらないと考えています。それよりも、誰がどの遺産を相続するかという話し合いで本当に相続人の皆さんがもめることはないだろうかについて、今一度考えていただきたいのです。
先行きが不安な現代において、まとまった金銭を手にする機会は相続くらいしかないという人は今後も増え続けることでしょう。しかも、相続はちょうど住宅資金や子供の教育資金が必要になる頃に発生することが多く、それでも今と同じように冷静に判断しながら話し合いができる人はそれほど多くはいないのではないでしょうか。
事実、私どもは『子供たちはみな仲が良いから心配いらない』と話しておられた方が亡くなり、いざ相続が開始して相続人同士がトラブルになってしまい『こんなことになるとは思わなかった』と途方にくれながらご相談においでになるケースを多々経験しています。
遺産分割協議は、残された遺産をどう分けるか、対立する感情をどう調整するかという、とても難しい問題です。災害や振り込め詐欺などと同じように、決して他人事ではありません。本当に相続トラブルにならないかどうかは、実はご自身が亡くなられた後に、私どものような第三者の立場である専門家が相続人の皆さんに対して『法律上はこれだけの権利がありますが、あなたはどうお考えになりますか』と聞いてみなければわからないのです。その時になって、『遺言さえあればなあ』と嘆いてみたところでどうすることもできないのです。
ひとりでも多くの人に、相続税のご心配よりも『もっと大事なことがある』ことを伝え続けていきます。