2040年の就業構造推計 【第1部】「コストカット」から「成長」へ~中小企業が着手すべき財務・労務のDXシフト
はじめに
第1部では、2026年度税制改正による賃上げ促進税制の見直し内容を整理し、大企業や中堅企業では制度が段階的に廃止され、中小企業においても最大控除率が45%から35%へ縮小されることをお伝えしました。
第2部では、税制優遇の縮小が中小企業の経営にどのような影響を及ぼすのか、財務面と労務面の両面から整理します。
財務の視点:税額控除の縮小による負担の増加
教育訓練費の上乗せ(最大10%)が廃止となり、控除率が最大45%から35%へ低下することで、キャッシュフローにどれだけ影響を与えるかを見てみます。
【ケーススタディ】給与増加額が500万円・教育訓練費を増やした場合
| 項目 | 改正前(最大適用時) | 改正後(最大適用時) | 差引影響額 |
|---|---|---|---|
| 給与増加分に対する控除率 | 45% | 35% | ▲10% |
| 税額控除額 | 225万円 | 175万円 | ▲50万円 |
| 企業の負担額 | 275万円 | 325万円 | +50万円 |
中小企業の多くは、大企業と比較して手元資金に余裕がなく、運転資金の管理が重要となります。賃上げを実施する際、税額控除による還付や納税額の減少は、実質的に「資金繰りの改善効果」として機能してきました。
しかし今回の改正により、この効果が縮小することで、以下のような影響が懸念されます。
具体的な影響
- 賃上げに伴う人件費増加分のキャッシュアウトがダイレクトに影響
- 設備投資や研究開発など、他の成長投資への資金配分が制約される可能性
- 借入依存度の上昇や、調達や返済計画の見直し
特に、物価上昇により原材料費や光熱費も上昇している現状では、人件費増加と税制優遇縮小のダブルパンチとなり、中小企業の財務体質を圧迫するリスクが高まります。
労務の視点その1:賃上げの「継続性」という重圧
税制優遇が縮小する中で、経営者が直面する最大の壁は「賃上げの継続性」です。
従業員は一度上がった給与を前提に生活を設計します。そのため、税制優遇が終了したからといって賃金を引き下げることは、労務管理上極めて困難であり、従業員のモチベーション低下や離職リスクを高めることになります。
厚生労働省の「令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査」によれば、賃上げ実施企業の約72%が「人材確保・定着」を目的としています。
つまり、税制優遇の有無にかかわらず、労働市場での競争に勝つためには賃上げは「避けて通れない道」です。今後は国の支援に頼るのではなく、企業の「自力」での収益力向上が、賃上げ継続の条件となります。
労務の視点その2:教育訓練投資抑制による「未来への投資」の低下
今回の上乗せ措置廃止により、教育訓練への投資意欲の低下が考えられます。
経済産業省の「企業の人的資本投資に関する調査(2023年)」では、人材育成に積極的な企業ほど定着率が高く、生産性も向上しているというデータが出ています。
| 懸念されるリスク | 内容 |
|---|---|
| 成長機会の減少 | 控除メリット消滅を理由に研修を削減し、従業員のスキルが停滞 |
| 競争力の低下 | リスキリングやDX人材育成が遅れ、市場の変化に取り残される |
| 採用力の弱体化 | 「成長できる環境」がない企業は、優秀な若手から選ばれなくなる |
まとめ
第2部では、賃上げ促進税制の見直しが中小企業に及ぼす影響を、財務と労務の両面から整理しました。
次の第3部では、この厳しい環境下で中小企業がどのような対策を講じるべきか、「財務×労務」の両面から整理します。



