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中小企業におけるデジタル化・DXの推進

伊藤惠悦

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テーマ:その他

中小企業において人手不足が深刻化する中、デジタル化やDX(デジタル・トランスフォーメーション:顧客視点で新たな価値を創出していくためにビシネスモデルや企業文化の変化に取り組むこと)の推進が求められています。

中小企業庁編「中小企業白書2025年版」において実施したアンケート調査に沿って中小企業におけるデジタル化の取組段階についてみると、2024年の構成比は、「段階1(紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態)」が12.5%、「段階2(アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態)」が52.3%、「段階3(デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態)」が32.0%、「段階4(デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態)」が3.2%となっています。

次にデジタル化の取組段階が「段階2」以上の事業者について、DXに向けたデジタル化の取組内容をみると、いずれの取組段階でも「自社ホームページの作成・更新」の回答割合が最も高くなっています。また、「顧客データの一元管理」や「営業活動や受発注管理のオンライン化」などの取り組みでは、「段階2」の 事業者と「段階3」の事業者との間で回答割合の差が大きく、DXに向けて有効な取り組みである可能性が示唆されます。

さらにデジタル化の取組段階が「段階2」以上の事業者について、デジタル化の取組みの効果についてみると、売上面・コスト面・人材面のいずれにおいても、デジタル化の取組段階が進展している事業者では「とても効果を感じている」と「ある程度効果を感じている」を合計した回答割合が高くなっています。

では、中小企業においては具体的にどのようにデジタル化・DX推進の取り組みが行われているのでしょうか。そこで中小企業庁編「中小企業白書2025年版」において、効率的に社内のデジタル化・DXに取り組む企業の事例として紹介された株式会社倉岡紙工(本社所在地:熊本県嘉島町)の取り組みについてみていきましょう。

株式会社倉岡紙工は、1965年創業の紙製パッケージなど紙製品の企画・設計から製造までを手掛ける企業です。3代目の現社長は、2013年に同社に入社して以降、現場で山積する課題の洗い出しや分析を進めつつ職場環境改善に着手しました。さらに、2016年の熊本地震による本社工場半壊をきっかけに工場建て替えを決意し、DXによる職場環境改善と新規需要獲得に向けた取り組みを加速させました。

新工場建設に向けては、プロジェクトごとに若手従業員を抜てきし、DXを推進しました。まず、熊本県や熊本県産業技術センターの支援を受けながら、在庫管理や位置情報の把握に労力が掛かっていた木型に、RFIDタグを付けるIoT管理に着手しました。新工場では人手の掛かる重労働となっていた作業工程を機械化し、作業負担削減にも取り組みました。

木型のIoT管理によって木型を探す時間がゼロになり、機械化によって作業負担削減が実現したことから、より付加価値の高い仕事に向き合うリソースが生まれ職場環境改善も進んだことで、業績向上や人材確保への好循環につながっています。

このように多額の投資をして全てを一挙に解決しようとするのではなく、社内のボトルネックを特定し、できるところから必要最小限の取り組みを行う「身の丈DX」を推進することで、生産性向上と職場環境改善を実現させることが可能となるのです。

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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伊藤惠悦(税理士)

伊藤輝代税理士事務所

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