研究開発税制 10社で減税額の4分の1
中小企業の成長に向けた支援においては、自社の経営状況や課題などを的確に把握することが求められます。
こうした中、企業の経営状態を把握するためのツールとしてローカルベンチマーク(以下、「ロカベン」)への期待が高まっています。
ロカベンとは、企業の経営者と支援機関等が同じ目線で経営に関する対話を行うことができるよう作成されたツールである「ローカルベンチマーク・シート」を作成・活用することで、企業の経営改善等を目指すものです。財務情報としては、①売上増加率、②営業利益率、③労働生産性、④EBITDA有利子負債倍率、⑤営業運転資本回転期間、⑥自己資本比率の6つの指標が用いられています。そして非財務情報としては、「業務フロー」、「商流」、「4つの視点(①経営者への着目、②事業への着目」、③企業を取り巻く環境・関係者への着目、④内部管理体制への着目)が用いられており、これらの内容を整理することで企業の抱える課題や強みを把握できる点が特徴です。
2023 年4月には、ロカベンの記入事例や解説、対話例などを盛り込んだ作成ガイドである「ローカルベンチマーク・ガイドブック」が改定され、SDGsやDXへの取組事例等が追加されました。同ガイドブックは企業編と支援機関編に分かれており、企業・支援機関双方の視点から、事業についての理解を深めることができるようになっています。
ロカベンの活用は、企業の経営者が自社の業界内における位置付け等を客観評価しつつ自社の事業について理解を深めることができるだけでなく、金融機関・支援機関等とともに経営課題を解決し、新事業の展開に向けて踏み出すことにもつながるのです。
では、ローカルベンチマーク(以下、「ロカベン」)は具体的に中小企業においてどのように活用されているのでしょうか。そこで中小企業庁編「中小企業白書2024年版」において、ロカベンを活用した企業の事例として紹介されたわさび屋株式会社(本社所在地:岐阜県郡上市)の取組みについてみていきましょう。
わさび屋株式会社は、わさびの栽培からわさび加工食品の製造・販売を行う企業です。同社ではコロナ禍により経営環境が悪化したことを受け、民間金融機関による実質無利子・無担保融資を活用しました。その一方で、今後の元金返済開始に備えて、経営改善の取組みを行う必要がありました。
こうした状況下で、現社長は、岐阜県信用保証協会よりロカベンの活用について提案を受けました。その後、実際にロカベンを作成するにあたり、「業務フロー」、「商流」の内容に沿って保証協会や同社の従業員と対話しつつ、自社の業務を5つに分けて業務内容と差別化のポイント(強み)をまとめました。
こうした取組みにより、他社との差別化ポイントに気づくことができたことに加え、ロカベンの「4つの視点」を作成する中で、「後継者の育成」、「在庫管理・取引先管理のデジタル化」などの課題も明確になりました。また、全従業員が業務全体を把握し情報を共有することができるなど、従業員の意識改革にもつながりました。その後、同社では、ロカベン作成により気付いた自社の強みや知的資産を活かしつつ、大学と連携し新商品の開発に成功しました。
このように、ロカベンの活用は、企業の経営者が自社の事業への理解を深めるだけでなく、経営課題を改善し新事業展開に向けて踏み出すことにもつながるのです。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)



