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中小企業における人材の定着 

伊藤惠悦

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テーマ:その他

中小企業においては、採用し育成した人材が定着し自社の企業活動に貢献し続けてもらうことが重要になります。
中小企業庁編「中小企業白書2024年版」では、中小企業を対象としたアンケートに基づいて、中小企業における人材の定着に向けた取組みの現状について分析しています。

まず、人材の確保・定着に向けた人事関連施策への取組状況についてみると、「積極的に行っている」及び「ある程度行っている」と回答した割合の合計は、「賃上げ」で8割以上、「専門性に応じた業務分担・配置」で6割以上となっている一方、「キャリアプランの明確化」では、3割程度となっています。

次に、働き方改善に向けた取組状況についてみると、「積極的に行っている」及び「ある程度行っている」と回答した割合の合計は、「休暇制度の充実」、「労働時間の見直し」では、7割を上回っている一方で、「テレワークの推奨」では、「行っていない」と回答した企業が過半数を占めています。

さらに、従業員満足度を確認するための取組状況についてみると、従業員規模が大きい企業ほど、社内調査を行って従業員満足度を確認している傾向にあり、とくに「301人以上」の企業では、過半数が自社での社内調査を「行っている」ことがわかります。

また、従業員満足度を確認するための取組みとして日常のコミュニケーションにどの程度取り組んでいるかについてみると、従業員規模の小さい企業ほど「積極的に行っている」と回答する割合が高い傾向にあります。その一方で、「行っていない」と回答する企業も従業員規模の小さい企業ほど多く、日々のコミュニケーションの必要性の有無が企業によって分かれている可能性があります。

では、中小企業における人材の定着において具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで、中小企業庁編「中小企業白書2024年版」において、地域の企業と連携して人材育成と同時に定着率の向上に取り組む企業の事例として紹介された株式会社新越ワークス(本社所在地:新潟県燕市)の取組みについてみていきましょう。

株式会社新越ワークスは、1963年に金網の製造工場として創業し、現在は主に業務用厨房機器の製造販売を手掛ける企業です。1980年代には金属加工の技術を応用してキャンプ用品にも進出し、売上全体の5割程度を占めるまでに成長しています。燕地域は金属加工業の集積地であり、地域全体で技術者を確保していく必要がありますが、同社も含め地域内の多くの企業が人材不足に悩んでいる状況でした。

そのような中で、同社社長は、地域の企業と連携し、新入社員を対象とした合同研修会の開催や、中堅社員を対象とした技術者同士の相互出向など、人材の採用拡大・育成・定着を図るための独自の人事施策を展開しています。同社が2022年より他社の若手社員と合同で開始した新入社員の研修会は、人事担当者のアイデアから始まりました。研修では、若手社員による会社説明(プレゼン)の後、各社混合のグループワークを実施します。研修後には懇親会も行い、交流の場も提供しています。このような取組みが奏功し、同社の新入社員の定着率が向上するとともに、入社後の研修体制などが評判となり新入社員の採用にも成功しています。

このように働き手から働き続けたいと思われるような職場を目指し、職場づくりに取り組むことが重要となるのです。

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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