ふるさと納税裁判で泉佐野市が逆転敗訴
事業承継の手段として「社外への引継ぎ」は増加傾向にあり、その中でも特にM&Aについては、事業承継だけでなく、企業規模の拡大や事業多角化など成長戦略の一環としても、中小企業の間で広がりを見せています。
中小企業庁編「中小企業白書2023年版」では、M&A成立前までの取組に関して実施したアンケート調査に基づき分析を行っています。
まず、買い手としてM&Aに関心がある企業を対象に、希望するM&Aの相手先企業の特徴についてみると、相手先企業の規模としては「自社より小規模」、業種としては「同業種」、属性としては「仕入先・協力会社」、地域としては「同一都道府県」・「近隣都道府県」など比較的近隣の地域、形態としては「水平統合」を希望する傾向にあります。
買い手としてM&Aに関心がある企業を対象にM&Aの目的を回答割合の高い順にみると、「売上・市場シェア拡大(74.6%)」、「人材の獲得(54.8%)」、「新事業展開・異業種への参入(46.9%)」となっています。
M&Aを買い手として実施した企業の満足度別に、最も重視したM&Aの相手先企業への確認事項についてみると、M&Aの満足度が「期待以上となった」企業は、「期待を下回った」企業と比較して、「相手先経営者や従業員の人柄・価値観」を重視する傾向にあることがわかります。また、買い手としてM&Aに関心がある企業を対象に、M&Aを実施する際の障壁についてみると、「相手先従業員等からの理解が得られるか不安がある(51.6%)」という回答が5割以上と最も高くなっています。
このように、M&A成立前の段階から「相手先経営者や従業員の人柄・価値観」を確認しておくことが重要となるのです。
では、中小企業におけるM&A成立前までの段階ではどのような取組が求められるのでしょうか。
そこで中小企業庁編「中小企業白書2023年版」において、M&Aの実施によりグループ間の相乗効果を発揮させている企業の事例として紹介された、株式会社坂井製作所(岐阜県各務原市)の取組についてみていきましょう。
株式会社坂井製作所は水栓金具を中心とした金属部品の受託加工・組立てを手掛ける企業です。現社長が将来の成長を見据えてM&Aを検討する中、2015年に取引先の子会社であった同じ市内の企業を買収しました。この企業は部品加工業務の後工程に当たる組立て業務を主に担っており、相乗効果を見込めたことが買収の決め手となりました。
2020年には岐阜県内の製造業者を買収しました。後継者不在の悩みを抱えていた譲渡側の社長から相談があったことを機に、経営者同士で買収に向けた話し合いを始めました。対話の際には相手先経営者と価値観を一致させることを重視し、「譲渡側の雇用を維持する」という点で価値観が一致し、M&Aに至りました。M&Aにあたっては公的支援機関に仲介を依頼し、両社がフェアな状態で契約手続を進められるよう心掛けました。M&A成立後は経営統合を円滑に進めるべく、経営理念・行動指針の明文化や評価基準の見直し等を行い、グループとしての経営方針を浸透させることに努めました。
M&Aの結果、自社グループで加工できる範囲が広がったため、新しい事業分野へ進出することが可能となりました。
このように、中小企業のM&Aにおいては譲渡側企業と価値観を一致させることを重視しながら、経営統合を進めることが重要となるのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)