民事調停手続の利用
◆残業時間が減って固定残業代を減額したい
働き方改革や在宅勤務などで残業時間は以前より減少傾向にあります。固定残業代を支払っている場合で残業時間の減少が続くと設定時間と実際の残業時間が合わず減額をしたいと会社側が考えた時、どのように改定をするのでしょうか。
これまで従業員が受領できていた固定残業代の金額が減少することになりますので不利益変更にあたるのではないかという問題があります。
◆最近の裁判例では
令和和3年に審判された事件ではみなし手当減額の有効性が問題となりました。この事件では、第一審では割増賃金は労働基準法第37条その他関係規定により定められた方法により算定された金額を下回らない限りこれをどのような方法で払おうとも自由であるとして、固定残業代の廃止や減額に労働者の同意は不要とされました。
しかし控訴審では本件の年俸制の合意の内容はみなし手当も含めるものであった以上、みなし手当の減額は賃金規定の定めにより可能であるとして、実際には少ない時間である等の理由で会社は自由に減額できないとして違法としています。
これはみなし手当も年俸制の一部という前提ですが、通常の月給制で残業であることが明確な固定残業代であればその削減も合法と判断される可能性はあります。
◆実際に下げるときの注意点
実際は紛争を避けるためには給与規定等で「固定残業代」は減額もできることを定めておくことが良いでしょう。「固定残業代は年度ごとに前年度の所属事業場の全従業員の時間外労働の実績により見直す」などの定めをすることです。
その後実際の残業時間が減少しているという実態を説明し固定残業代を減額変更することの同意を得ます。他の労働条件で改善できることがあれば提案したりしながらできる限り大勢の同意を得て減額するのが道筋です。給与辞令などを出し、確認のサインをとるのがよいでしょう。