価格転嫁のコツは「原価示した交渉」
世界規模で異常気象が発生し、大規模な自然災害が増加するなど、気候変動問題への対応は今や人類共通の課題となっています。カーボンニュートラル目標を表明する国・地域が増加し世界的に脱炭素の機運が高まる中、わが国では2030年度の温室効果ガス46%削減、2050年カーボンニュートラル実現という国際公約を掲げており、中小企業の事業活動においてもカーボンニュートラル推進に向けた取り組みを行うことの重要性が高まっています。
こうした状況を受けて、中小企業庁編「中小企業白書2023年版」では、中小企業にとってカーボンニュートラルに取り組むことのメリットについて整理しています。
第一に、設備投資や生産プロセス等の改善などにより、エネルギー使用量が減ることでエネルギーコスト削減につながります。第二に、自社や自社製品の訴求力向上により、競争力の強化や取引先や売上拡大につながる可能性があります。第三に、省エネや脱炭素に取り組んだ先進的事例としてメディアや行政機関等から取り上げられることで、知名度や認知度の向上につながります。第四に、金融機関において脱炭素経営を進める企業を優遇するような取り組みも行われているため、資金調達に有利にはたらく場合があります。第五に、社会課題に取り組む姿勢を示すことで、社員のモチベーション向上や人材獲得力の強化につながります。
以上のように、中小企業がカーボンニュートラルに向けた取り組みを、事業基盤の強化や新たなビジネスチャンスの獲得、持続可能性の強化につながるものと認識して位置づけることで、自社の成長の機会につながるのです。
では、中小企業においては具体的にどのようにカーボンニュートラルに向けた取り組みを行っているのでしょうか。そこで中小企業庁編「中小企業白書2023年版」において、新技術よって顧客企業のカーボンニュートラルに貢献する企業の事例として紹介された株式会社日本テクノ(本社:埼玉県蓮田市)の取り組みについてみていきましょう。
株式会社日本テクノは、熱処理技術の受託加工と熱処理設備の製造・販売を行う企業です。同社の技術の一つにCO2の排出量を抑えることができるものがあり、カーボンニュートラルが社会的に求められる機運が高まる中で、同社社長はこの技術に商機があると感じていました。
現在熱処理の加工で多く使われている「ガス浸炭」は、作業プロセスで炎が発生するためCO2を多く排出する点が課題でした。他方、同社の持つ「ダイレクト浸炭」という技術は、炎を出さずに熱処理を行うことができ、作業品質の安定化に加えて、CO2の排出がゼロになるという特長を有しています。もともと同技術は真空ベースでしたが、大気圧ベースの技術開発を2015年に開始し、大手取引先と共同で投資を続けながら開発に取り組みました。そして2022年に実用化を果たし、2023年には各所で試作を進める段階となりました。
「ダイレクト浸炭」は、既にカーボンニュートラルに取り組む大手企業などからの問合せや試作の依頼が相次いでいます。また、大手企業の担当者などからの工場見学に対応する社員のモチベーションが向上するといった副次的な効果も表れています。
このように、中小企業におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みは新たなビジネスチャンスの獲得などの成長の機会につながるのです。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)