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自動車産業ではガソリン車から電気自動車(EV)への移行が進んでいます。今後、EVの更なる普及には「短時間の充電」と「長距離走行」が不可欠です。実現には車載電池の開発がカギとなっています。
現行、ガソリン車は満タンにするまでの時間は数分、航続距離(満タンから空になるまでに走行できる距離)は、500km以上になるように設計されています。中には、航続距離が1,000km以上の車もあります。対する、EVモデルでは充電時間が約30分で航続距離は約600km、別のモデルでは15分で260kmといった具合に、ガソリン車には見劣りします。
こうした課題を解決し、電気自動車の普及に拍車をかけるものとして、全固体電池が注目されています。現在は試作段階にありますが、わずか10分以下の充電で約1,200km走行できるといわれています。実用化されたら、ガソリン車と同等のレベルが実現できます。民間のシンクタンクの調査では、全固体電池の世界市場は、2018年は24億円程度でしたが2040年には約3兆8,000億円まで膨らむと予測されています。
全固体電池とは具体的にどのようなものなのでしょうか。通常、電池にはプラスとマイナスの極(正極と負極)があり、その間には電解質(水に溶けると電気を通す物質)が存在します。現在、電気自動車の主流になっている液体リチウムイオン電池は、文字通り電解室が液体です。対する全固体電池は固体になっている点が大きな特徴です。全固体電池はエネルギーを蓄える性能が高くEVの航続距離を伸ばせると期待されています。
また、EVは事故で電池が発火する危険があると指摘されています。固体の電解質は発火などの恐れが少なく、液体よりも安全性が高いとされています。液漏れの危険性が少ないところも利点の一つです。EVの欠点を補う全固体電池。実用化が進むことでEV普及を促進するか、注目したいところです。
自動車産業において、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトが進んでいます。EVの普及を後押しするものとして、全固体電池が注目を集めています。特徴は、充電時間が現行EVの3分の1程度、航続距離は2.4倍の性能を誇ります。今後、EVの普及に拍車をかけると期待され、世界各国の自動車や電池メーカー、研究機関などが競って開発しています。
現在、全固体電池搭載の車は試作段階にありますが、自動車メーカー各社が量産に向け、開発に取り組んでいます。トヨタ自動車は2027年に全固体電池を搭載したEVを投入する計画です。日産自動車も2028年度までに全固体電池を搭載したEVを市場に投入すると発表しています。ホンダは自社で電池の生産を行っていますが、全固体電池は2024年春に実証ラインを稼働させる予定です。
これまで、全固体電池の研究開発では日本の独壇場でした。中でもトヨタは全固体電池の研究開発で先行し、関連特許を多数持っています。ただ、最近では海外メーカーも追いつきつつあります。マクセルなど複数のメーカーが全固体電池の量産化に乗り出しています。ただし、量産化に成功した全固体電池はウエアラブル端末向けなど小容量の製品にとどまっており、車載向けなどの大容量製品への展開には課題が残っています。
全固体電池にはいくつかの課題があります。大きくはコストと耐久性です。コストは量産化が進めば解決される可能性が高まります。ただ、耐久性は高い壁が残されています。商用化されるには数千回の充電に耐えることが求められますが、現状はるかに下回っています。ただ、優れた材料も見つかっており、今後の進展に目を向けたいところです。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)