資産移転の時期の選択に中立的な税制
相続したものの不要な土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。来年には相続土地の登記が義務化され、違反者には罰則があることから、使う当てがなく売り手もつかない土地の処分方法として、新制度の利用を検討するケースも増えそうです。
国は来年から相続時の不動産登記を完全義務化します。正当な理由なく登記を怠れば10万円以下の過料が科されることとなります。対象は過去の相続も含むすべての土地となっていることから、これまで管理が面倒だったり固定資産税負担を納めたくなかったりという理由で放置していた土地も登記せざるを得なくなるでしょう。そうした売り手もつかないような〝負動産〟オーナーの選択肢として、国が新たに用意したのが「国庫帰属制度」です。
ただ、利用価値の低い土地を引き取るだけあって、国が制度の利用に一定のハードルを課しているなど、注意すべき点は多いのが実情です。例えば申請に当たっては、土地に建物がある、担保権や使用収益権が設定されている、他人の利用が予定されている、土壌汚染されている、境界が明らかでない、所有権の存否や範囲について争いがあるなどの事情がある場合には、却下事由に該当し、そもそも審査を受け付けてもらえません。
審査を受けられるとなれば、承認申請書、土地の位置および範囲を明らかにする図面、申請者の印鑑証明書などの必要書類を用意して法務局で手続きを行います。1件当たりの審査手数料は1筆当たり1万4千円。仮に審査で不承認となり帰属制度が利用できなかったとしても、審査手数料は返還されません。
さらに審査では、国による管理にコストがかかり過ぎないかがチェックされます。こうした条件をクリアして審査を通過すれば、晴れて不要な土地を国に引き渡すことができますが、その際には10年分の管理費に当たる負担金を納めなければなりません。金額は原則20万円ですが、市街地や農用地区にある宅地、田畑、森林などは金額が上がり、面積によっては100万円を超える負担金が発生することもあるので注意が必要です。