資産移転の時期の選択に中立的な税制
タワマン高層階の実勢価格と相続税路線価のかい離を利用した「タワマン節税」について、政府・与党は相続税評価額の算定ルールを改める方針を固めました。24年度以降の改正を目指しています。タワマン節税を巡っては2022年4月、実勢価格14億円のマンションを0円で申告した納税者に対して追徴課税した国税当局の処分の妥当性が争われ、国税側の主張を認める最高裁判決が下されています。
マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わりません。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向があります。例えば同じマンションのなかでも、1階住戸の実勢価格が5千万円、同じ広さの30階の住戸が1億円で、相続税評価額はいずれも2千万円とすると、実勢価格に対する評価額の割合は1階住戸なら40%、30階住戸なら20%という差が生まれます。数十階にもなるタワーマンションであれば、低層階と高層階の価格の開きが1億円以上になることも珍しくないため、節税効果もその分大きくなります。これを利用して、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」です。
22年4月に最高裁判決が下された裁判では、2棟のタワーマンションを計14億円ほどで購入した納税者が、相続税評価額によって価額を3億円ほどまで引き下げ、さらに購入に当たっての借入金を債務として差し引いて2棟のマンションを0円として申告していました。最終的に追徴課税処分を行った当局側が勝訴したものの、あくまで合法の範囲内で行った相続税対策に対して後出しで追徴課税を行うのは横暴との反発の声も出ていました。
そこで政府・与党は、相続税評価額のルールそのものの見直しに着手することを決めました。自民党税制調査会の会合では、国税庁からタワマン節税規制の必要性が示され、23年に不動産鑑定士や学者らで構成する有識者会議を設置することを決定。具体策を詰め、評価方法を定める財産評価基本通達の改正を行います。