平成31年税制改正大綱 個人所得課税(一般)編
岸田文雄政権が掲げる新しい資本主義の実行計画が閣議決定されたことで、「資産所得倍増プラン」の策定に向けた動きが本格化しました。少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の拡充が柱となりますが、税制優遇とセットの投資拡大策には「投資枠を拡充しすぎると『金持ち優遇』との批判を受ける」(金融関係者)との懸念もくすぶっています。
岸田政権は、イデコの加入対象年齢を現行の64歳以下から65歳以上に引き上げます。NISAについては、現行は来年までとなっている制度の恒久化や年間拠出額の上限(現在は約120万円)引き上げ、制度の対象となる株や投信など金融商品の拡大が今後の検討課題となりそうです。
ただ、ある金融関係者は「投資枠を広げすぎると投資の余裕がある人だけが得をして、投資ができない人も含めた納税者が減った税収を広く薄く穴埋めすることになる。投資のインセンティブ(動機づけ)は大事だが、制度設計を間違えると公平性の観点からたたかれる」と警戒感を隠しません。
岸田政権は当初、株や投信で儲ける富裕層への課税強化となる金融所得課税の見直しを目指しましたが、市場の反発や株価の急落を受けて棚上げしたまま。税優遇によって投資拡大を図るNISAなどの拡充とは互いに矛盾した政策のように見えますが、ある財務省幹部は「金融所得課税を10%から20%に引き上げた時に、中低所得者も投資しやすいように作られたのがNISA。矛盾はしない」と述べます。「金持ち優遇」「格差拡大」といった批判を和らげるため、NISAなどの拡充と金融所得課税の見直しをセットで進めようとしているのでしょうか――。岸田政権の金融政策から今後も目が離せなそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>