コロナ禍での温泉地の再生
「黒字倒産」という言葉がありますが、常識的に考えると違和感のある言葉です。儲かっている会社は倒産しないはずですから、“黒字”と“倒産”は本来両立する言葉ではないように思うからです。“黒字”か“倒産”のどちらかが間違いなのかもしれません。
<ケース1>本当の黒字倒産
倒産は損益計算書で計算される利益とは関係ありません。倒産とは約束した債務を支払えない状況ですから、支払期日に支払金額に相当するキャッシュがなければ倒産してしまいます。
たとえば、以下のような損益計算書と貸借対照表を持つ会社があったとします。
<損益計算書>
売 上 高:200
売上原価:100
当期純利益:100
<貸借対照表>
売掛金:200/買掛金:100
/純資産:100
/(当期純利益:100)
これを見る限り、利益は上がり純資産もあり、何の問題もない会社だと思っても不思議ではありません。問題は売掛金と買掛金の支払期日です。この会社の資産は売掛金だけですから、買掛金を支払うには売掛金が現金化されなければなりません。ところが、買掛金の期日が4月末日なのに売掛金の期日が5月末日だったとしたら、買掛金の支払いができなくなってしまいます。これが黒字倒産です。
しかし、本当にこのような形で黒字倒産するとすれば、関係者は愚かです。この例でいえば、銀行は4月末に決済資金100を融資しても、5月末には200の売掛金が回収できるのですから、銀行の融資金回収に問題ありません。この場合、“黒字”は正しく“倒産”が間違いです。こうした会社は倒産させてはいけません。こんな道理が分からない銀行と、銀行を説得できない経営者がいるとすれば、大いに糾弾しなければなりません。
<ケース2>粉飾の黒字倒産
しかし、話はこれで終わりではありません。黒字倒産と言われるものの第2のケースが考えられます。損益計算書の黒字あるいは貸借対照表の自己資本がまやかしの場合です。
たとえば、損益計算書の売上高が粉飾であったとしたら、売掛金は架空のものになります。そうなると、売掛金を貸借対照表の額面どおり回収することは不可能ですから、銀行は融資できません。もし、銀行がだまされて融資してしまえば、返済財源が不足し銀行の貸出金は焦げ付いてしまいます。
あるいは、損益計算書の利益は正しいとしても、土地などの資産に含み損があり実質的に債務超過になっていれば、やはり融資金の返済財源は不足しますから、銀行は融資を渋るでしょう。こうなると、倒産もやむなしといえますから、この場合は“倒産”が正しく、“黒字”が間違いだといえます。
<ケース2>の粉飾は論外であり、外部からの手助けにより救うことは難しくなりますが、<ケース1>の場合は倒産させてはいけません。そのためには、損益だけを見るのではなく、資金管理(資金繰り)が重要になります。損益と資金管理は経営の両輪です。そのことを経営者は再認識しなければなりません。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)