交際費等の損金不算入・少額減価資産特例は延長!
上場企業の役員報酬の決定方法の透明化が求められています。そこで、役員報酬における「公平性」の問題について、考えてみます。
会社の経営者には二つの顔があります。一つは株主から委託を受けて、株主の利益を実現するために会社を経営する株主の代理人としての立場であり、もう一つは社員の延長線上に存在する社員のあがり(最終形)としての立場です。
アメリカなど海外の大企業の経営者は社外の経営専門家の中から選ばれることが多い。彼らは株主から経営を任せられているのだからということで、株主利益最大化を目的に経営します。
専門経営者にとっては株主価値が第一であり、株主価値を最も端的に表現するのは株価ですから、株価にほぼ連動する形で報酬が決められることに違和感はありません。だから、社員の給与水準とまったく懸け離れた高額報酬でも平然と受け取ることができます。また、社員に余剰があれば、雇用削減に躊躇しません。その際、社員をリストラして株価が上昇すれば、経営者は自分の収入を増やすことができると考えます。逆にいえば、そういう人だからこそ、ドラスティックなリストラ策を実行できるともいえるのですが。
一方、日本では、徐々に専門経営者が増えてきたとはいえ、内部社員から経営者が選ばれるのが普通です。彼らは一般社員の代表として、株主利益より社員の待遇の方が気になるのは自然の成り行きです。
役員報酬の決定には、ある種の公平感が必要となりますが、その公平感には二種類あります。一つは、株価や業績を評価基準にして他の同業他社の経営者との比較を行う、いわば「横の公平性」であり、もう一つが、同じ会社の一般社員との比較による「縦の公平性」です。
これまで、日本では「縦の公平性」を重視してきましたが、経営報酬の透明化はもっぱら「横の公平性」を基軸としたものとならざるをえません。一方、経済成長の鈍化で、全体のパイは変わりませんから、「横の公平性」を重視すればするほど、「縦の公平性」は失われていきます。その結果、経営層と従業員との給与格差は拡大していくでしょう。
一般社員の給与と関係なく、経営者報酬だけが右肩上がりになるのは社会にとって決して望ましいことだとは思いません。高所得者には使い切れない資金が残る一方、低所得者の窮乏化は進み、社会の分断は加速し、トータルとしての消費にはマイナスに作用します。また、経営者報酬の株価連動化がより鮮明になれば、経営者は短期的な株価の上昇ばかりを気にかけ、長期的な会社の成長がおろそかになることも懸念されます。
そんな懸念をよそにグローバル化の名のもと、「縦の公平性」を犠牲にした「横の公平性」が一層幅をきかす時代になりそうです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)