その子の内側の体験の世界76

吉田洋一

吉田洋一

テーマ:子育て支援

その子の内側の体験の世界」第76回目を解説します。

 キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
 「その子を見守る」の意は、その子を放ったらかしにするという意味ではありません。
 その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。
 また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
次は、「その子にはたらきかける」です。
 親は、わが子が5歳になるまでに積極的にかかわることがとてもたいせつになります。
 これは、子育ては「脳を育てること」で詳細に解説しました。
 もう一度、読み直しましょう。


「その子を見守る」8
 「その子を見守る」の意は、その子を放ったらかしにするという意味ではありません。
 その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。

 診断は操作的診断

 発達障害の診断とは、どのようなものでしょうか。それは「操作的診断」というものです。「操作的診断」ってなに?と考えていらっしゃる方に、この「操作的診断」について述べたいと思います。

 <症状でグループ分けするというアイデア>

 世界保健機構(WHO)は、様々な疾患の国際調査をしています。グローバルな統計調査をしようとするとき、国や地域によって診断に不統一があっては困ります。このためWHOでは、ICDと呼ばれるあらゆる疾患を網羅した統計のための国際分類を編んで、診断のグローバルな統一を図っています。
 はじめは身体疾患が中心でしたが、ICDの第9版を編むにあたってWHOは、その精神疾患部門の統一分類の作成に本格的に取り組みました。そこで考えられたのが、従来の病因・病理による診断分類ではなく、「症状」による診断分類でした。
 近代医学では科学的ではないとして斥けられたやり方に後退したわけですが、19世紀の記述精神医学以来、症状の記述なら精神医学は年季を積んできました。症状を理屈抜きに拾い上げるだけなら学派間の不一致が生じることはないわけで、生まれたのがICDの第9版(ICD-9(1977))における精神疾患部門の診断分類です。
 ただし、精神障害の個々の症状は非特異的なものばかりで、ある症状とある精神障害とを直に結びつけるのは到底無理です。しかも、精神疾患の症状は、ほとんどが主観的なものです。そのような非特異的で主観的なものに頼って、どうして客観的かつ統一的な診断が可能になるのだろうか?不可能というほかはありません。そこで苦肉の策として、精神障害を「症状の集まり(症候群)」としてグループ分けすることにして、複数の症状がどんな組み合わせで揃っているかのちがいによって分類し、診断し分けるという方式が工夫されました。このような診断の方式を「操作的診断」と呼びます。

 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

吉田洋一プロはIBC岩手放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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