マザリングから育まれるもの
その子の内側の体験の世界」第62回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
「その子を見守る」の意は、その子を放ったらかしにするという意味ではありません。
その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
次は、「その子にはたらきかける」です。
親は、わが子が5歳になるまでに積極的にかかわることがとてもたいせつになります。
これは、子育ては「脳を育てること」で詳細に解説しました。
もう一度、読み直しましょう。
「その子にはたらきかける」19
言葉のはじまり2
私たちの交わす言葉には「指示性」(認識)と「表出性」(関係)とが様々な濃淡で織り込まれています。例えば、「今日は天気が悪いです」と述べれば、指示性をもった表現で、天候に対する一つの認識を表す言葉です。これに対して「今日は天気が悪いですね」と述べれば、そこに表出性が加わり、天候への認識だけではなく、その認識を相手と分かち合おうとする話し手の気持ち(情動)が加味されています。さらに「今日は天気が悪いねえ」となれば、もっと表出性が強まり、悪天候に対する話し手自身の気持ち(情動)も加わったものになります。
指示性と表出性からなる言語の構造は、認識の発達と関係の発達からなる精神発達の構造と呼応しています。言語発達の研究は、もっぱら指示性の発達に向けられやすいですが、しかし喃語における「情動の共有」が言語コミュニケーションの出発点で、言語の発達は表出性を基盤としてその上に指示性が構築されていく過程と考えられます。
例えば、初語の「ママ」は、「あなたは母親である」という指示的表現としてではなく、「おかあさん」という表出的な表現として発せられたものでしょう。また、「やだ、いや」という言葉を幼児は早く覚えますが、これも情動性の高い表出的な表現なのです。
次回に続きます。