その子の内側の体験の世界35
その子の内側の体験の世界」第7回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
「その子を知る」6
○観念の世界を生きる(人間世界の固有性)
この基本構造は、時代と文化を超えて普遍的なばかりではなく、人間に限らずすべての動物においても普遍的なものであると思います。
仔虫や仔鳥も生まれて初めて出会った世界を虫や鳥の知り方で知っていき、虫や鳥のかかわり方でかかわりをもちつつ、成虫や成鳥へと育っていくのです。
ただ、ここで人間とほかの動物とを分かつのは、その「世界」のあり方の違いです。
アメーバやクラゲや虫や鳥にとって、周りの世界とはモノによって成り立っている天然自然の物質世界です。その自然世界と物質的にかかわりながら生きるのが、動物たちの生存の基本的な行動なのだろう。
もちろん人間も一個の生物である限り、物質的な環境に取り囲まれ、その世界と物質的なかかわりを営むことで生命を維持しています。
しかし、人間生活にとって本質的な「世界」は、物質的なかかわりを営むことではありません。
私たち人間にとって「世界」とは、単なる物質的な自然世界ではなく、人間自身が長い歴史を重ねてつくり上げてきた「人間世界」つまり「社会的な文化的な共同世界」なのです。
人間はこのような共同世界をいわば、他の動物の自然世界と同様な生き方をしているのです。
この世界は「物質」によって成り立っているのではなく、「観念」によってすなわち「意味(概念)や約束(規範)によって成り立っているのです。
これが生まれ落ちた子どもが、知っていき、かかわっていかなければならない人間固有の世界なのです。
ここから人間独自の精神発達の構造が生まれてきます。
次回に続きます。