「診断」のもつ意味②
<自己コントロールができず落ち着きのない子>
部分的な発達のおくれのもう一つが、DSMでいう「注意欠陥多動性障害attention deficit/hyperactivity disorder;ADHD」です。ICD-10では「多動性障害hyperkinetic disdorder」と呼ばれています。一言でいえば、自己コントロールがうまくできず落ち着いのない子で、次の3つの特徴をもっています。
1 注意集中困難
一つに注意を持続的に集中させることができません。何か注意を向けていても他の刺激が入るとぱっとそちらに注意が移ってしまいます(転導性が高いのです)。そのためのミスや忘れ物が目立ちます。
2 多動性
落ち着きがありません。じっとしていられません。身体のどこかが動いています(女子ではおしゃべりがとまりません)。
3 衝動性
衝動や欲求のコントロールが苦手で、それにすぐ突き動かされてしまいます。状況を見ずに行動に走ったり、待つことができません。
この3つのどれが強く現れるかは個人差がありますが、注意にせよ行動にせよ衝動にせよ、自己コントロールがうまくきかない状態とみることができます。
注意の転導性や多動性や衝動性は、乳児期から幼児期の初めまでなら、どの子にもみられ、その発達段階では適応的なあり方といえます(新しい刺激に素早く注意を向けては活発に探索したり、衝動や欲求に素早く反応して生存を守ろうとする)。
しかし、一般には成長とともに注意を持続したり衝動を抑えたりすることも必要になり、それらを自己コントロールする力が伸びてきます。ところが、その力の発達が大きく遅れるのがADHDです。
参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著