高血糖も子供の喫煙も、カギを握るのは〇〇!

笠原友子

笠原友子

テーマ:未来への絆プロジェクト

子育て世代の生活習慣病を考えるまちかど糖尿病指導薬剤師の笠原友子です。
学校薬剤師もしていて、
ここ10年以上、担当校では小中合同の学校保健委員会が開催されています。

今日のお話は、今年の学校保健委員会でいただいたテーマは
「朝食について」

子供たちの精神の健康も体の健康も、親の生活習慣が握っている。
そんな一見当たり前のことなど、保護者達はみな分かっています。
ところが日々の生活の中で見過ごして行って、意外と気づかない。

そんなポイントを、生徒たちの実態と共にミニレクチャーを行い
ここから、小中学校に分かれた各PTAと
学校職員、学校三師(医師・歯科医師・薬剤師)と共に協議します。

心がけ一つで、親も子も生活習慣病は遠のきます。

厳しい言い方ですが、自分自身が生活習慣病になるような育て方で
子は生活習慣病になりやすく育つのです。
(※家族性高脂血症など遺伝的素因の大きなものを除きます)

保護者が健康でいることは、子供たちの夢を叶えるためにとても大切です。
親の生活習慣は、子供たちの生活習慣を引きずりますし、
子の健康は、親の安定的な仕事時間の確保にもつながりますね。

朝食と〇〇の意外な関係

2009年度生から毎年、全校生徒に向けて
生活習慣アンケートを実施させていただいており
この中から気づいたことを盛り込んだ薬物乱用防止教室を行って
中学生を通じた家庭への健康教育を試みています。

なぜ、こんな面倒なことをしようと思ったかと言うと
先にお話しした通り、子育て世代は健診の再検査をあまり受けない年代です。
その上、中学生は遺伝が影響しにくい思春期反抗期の年代です。
中学生に健康教育をすれば、家庭に持ち帰って
保護者を教育する可能性ありと考えたのです。


アンケートを始める直前のことです。
筆者の経営する薬局に、年の頃中学生と思しき男子生徒が
深刻な顔をして飛び込んできました。

おずおずと、言いにくそうに出てきた言葉が、
「おばちゃん、ぼくに禁煙指導をしてもらえませんか?」

生徒の口から出てきた言葉と生徒の印象とのギャップに驚きながらも、
さぁ一緒に始めようと言っていたら、
処方せん調剤の患者が立て込んだすきに、
一番筆者の居場所に近くの人目を避けたコーナーから、突然いなくなってしまいました。

そこで、中学校のアンケートの中に「喫煙」の項目を入れることにしました。
・時々吸っているのか?
・常習的に吸っているのか?
・吸ったことはないのか?
・禁煙したいのか?
・禁煙指導を希望するか?

この項目には、当初職員会議で猛反発が出ました。
学校教育現場としては、触れてはいけない話題だったようです。

この喫煙項目に関しては、
アンケート結果を発表した石川県学校保健研究大会の場でも
各学校の校長先生方から猛反発を受け、この発表コーナーだけは
激論が続きました。

教育者ではない筆者にとっては
「臭いものには蓋をしておけ、話題にするな」的に聞こえてなりませんでした。
ところが筆者は学校薬剤師という立場ですが医療者です。
生徒が助けを求めてきているのに、なぜ受け止めてやろうとしないのか?
事なかれ主義を公然と口にする校長陣に、逆に苛立ちを覚えてしまったほどです。

このように反発を受ける項目にもかかわらず
アンケートに入れることを許して下さった担当校の先生方には
ほんとうに感謝しています。

こんな質問に、真面目に答える生徒ばかりではない
というのも承知で毎年アンケートの中で聞いていますが、
喫煙者は激減しました。たまに1人か2人です。
学校内の先生方にお聞きするところによると、
回答結果は校内の現状とリンクしているそうです。


そして中学生の喫煙の問題は、アンケートを取ることで、
家庭生活との関係が浮かび上がったのです。

驚くことに、喫煙は朝食摂取それも孤食と関係していました。
(相関係数=0.2~0.3**)

その上、朝食摂取は肥満とも関係していました。

そこで、学校側がすぐにとった行動が、
各学年の学活テーマを朝食にし、夏休みには
「親子朝ごはんつくり教室」
親子で時間を取りやすい日程で、親子で朝食への関心を高めていきました。

アンケート結果を基にした中学生への薬物乱用防止教室兼健康教室は、
2011年の東日本大震災の年を除いて
毎年続けています。

転出したのち1年明けて再赴任してきた先生が
「別の学校かと思った!」
と熱っぽく言うほど、校内の雰囲気が変わっていたそうです。

担当校は、能登半島の海岸よりの学校ということもあって
他の地域からは「荒い」印象があるらしいです。

確かに以前は荒かったです。
全国の学校も荒れた1990年代には、夜中に校舎内をバイクが走り抜けていました。

ところが今では、どこかの大学付属中学校かと思うくらい
礼儀正しく素直で仲間思いの生徒たちです。

孤食の生徒たちはストレスも抱えている

子供が中学生くらいになると、体だけは大人並みになりますから
親はつい、大人並みのからだの子供たちに甘えてしまいます。
ところがこの甘えが、そのまま生徒の精神状態や体型に反映しています。

家族で朝食をとるケースに対して、
一人もしくは兄弟で朝食を食べる場合を孤食と定義すると
朝食を食べていない生徒たちは、孤食の割合が高く
さらに、朝食を一人もしくは子供だけで食べている生徒は
夕食も一人もしくは子供だけで食べている割合が多いです。

この孤食の生徒たち
不眠やストレスを感じている割合が多いだけでなく
肥満の割合も高いのです。

夕食を孤食で過ごしている生徒たちの野菜の摂取率は低く
野菜の摂取率の低いと、時々眠れないと訴える生徒が増えます。

「兄弟だけ」が一番やばい

一人っ子の場合は、
「一人だけじゃかわいそう」という気持ちが生じるのか、
親もそれなりの心の込め方をしているように受け止めていますが
兄弟がいる場合には
「一人じゃないから兄弟で助け合える」
という気持ちが親に芽生えるのか、放置率が高くなります。

たとえば、食事の手作り率は
あくまで生徒が感じている様子ではありますが
兄弟だけで食べている場合は、手作りではないと生徒が感じている割合が高く、
生徒たちも野菜はあまり食べていないと答えています。

親の愛情不足は栄養不足につながる

親が手をかけてくれるのを愛情と感じるのか、
うざいと感じるのかは別として
手作りかどうか野菜摂取であるかどうかは、
栄養素の摂取と精神安定にまでつながります。

家庭での手作りではない食品類には、
しばしば保存料など食品添加物が使われます。
これら添加物は、その成分中の構造残基によって
亜鉛・鉄などミネラルを吸着し
体外に排泄してしまいます。

精神安定に必要なミネラルやビタミン類が不足を起こしてしまえば、
いら立ちや精神不安定の原因にもなりますし
睡眠の質も低下して、朝寝坊の上朝食欠食、と
負のスパイラルが口を開けて待っていますから
何とか避けて通りたいものです。

どうすれば、親も子も健やかでいられるのか?
さらに小中学校の養護教諭がとった今年の生徒向け朝食アンケートの下に
今年はこの朝食の問題に対して、激論討議を行ったわけです。

小中学校も共に、活発な討議の名でしばしば聞こえてきたのが
「子供たちへのメンタル面での配慮」

親世代の朝食欠食は高血糖体質への近道

朝食欠食は、子供たちの心とからだの成長にも悪影響がありそうですが
親世代のからだにとっても、影響は少なくありません。

親世代の朝食欠食は高血糖体質につながるのです。
朝食欠食は、昼食後と夕食後の血糖値を上げます
朝食を抜くと体重が増えるようです。

親の健康のためにもつながる学校保健委員会でした。
新任の2人の養護教諭の先生方もお疲れさまでした。

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笠原友子
専門家

笠原友子(薬剤師)

笠原健招堂薬局(有限会社笠原)

漢方の選薬用質問と血液検査結果から微量栄養素の不足や日常の生活習慣をチェックし、微量栄養素補給と漢方薬の選薬だけでなく生活指導で糖尿病をはじめとする生活習慣病に対応し、特定保健指導までできるのが強み。

笠原友子プロは北陸放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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