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検査で異常なしの首の後ろの痛みと肩こり|鍼灸の施術経過と再発の背景
首の後ろが突っ張るように痛み、肩までずっしりと重い。病院で検査を受けても大きな異常は見つからなかったのに、つらさだけが続いている…。そんな状態を抱えたまま、仕事や勉強を休むわけにもいかず、毎日をやり過ごしている方もいらっしゃるかもしれません。
検査で重大な異常がないとわかったことは安心できる材料ですが、それで首や肩のつらさが消えるわけではないところに、この種の不調の難しさがあります。
今回は、研究生活を送る20代の男性が首の後ろの痛みと強いこりで来院されたケースをもとに、施術の経過と、一度落ち着いた症状が再び強くなった背景についてお話しします。
長時間の運転をきっかけに強まった首の後ろの痛み
来院されたのは29歳の男性で、大学院で研究や実験に取り組み、夜遅くまで作業することも多い生活を送っていました。ジムにも通っていたそうです。首から肩、とくに項部と呼ばれる首の後ろの痛みとこりが始まったのは2023年12月頃のことで、一度は落ち着いたものの再発し、2024年1月に京都から車で帰ってくる長時間の運転をきっかけに、再び強くなったといいます。
その後、新型コロナウイルス感染症に続いてインフルエンザにもかかり、強い倦怠感が残っていました。睡眠にも悩みがあり、23時頃に就寝しても午前1時頃には目が覚めてしまう中途覚醒があったため、睡眠導入薬を使っていたそうです。
私がとくに気になったのは、車の運転中に症状が出やすかったことです。2024年4月12日には夜間の運転中に具合が悪くなり、救急車で病院を受診されています。MRIなどの検査を受けた結果、大きな異常は認められませんでした。とはいえ、ご本人にとっては首や肩のつらさ、倦怠感、めまいのような不調が実際に続いており、検査の結果とは別に、日々の身体のつらさをどうにかしたいという状態でした。
当院のことは、グーグルマップとホームページをご覧になって選んでくださったようです。
首や肩だけでなく全身の状態を確認した初診
初診時に首を前に倒していただくと項部につっぱり感があり、後ろに倒す動きにも制限がありました。触診では、首から肩、背中に広がる大きな筋肉である僧帽筋と、耳の後ろから鎖骨に伸びる胸鎖乳突筋の緊張がとくに強く、首や肩にとどまらず全身に緊張がみられました。
ご本人にはストレスを感じているという自覚はなかったものの、研究や実験による長時間の作業、長距離の運転、感染症にかかった後の疲労、睡眠の乱れと、身体にとっては複数の負担が重なっている状態でした。
主な訴えについては、僧帽筋を中心とした筋肉の痛みと緊張が大きく関係していると判断しましたが、そうした背景をふまえて、私はこの症状を単なる首・肩のこりとして局所だけで見ることはせず、疲労の度合いや睡眠の状態、自律神経のバランスなども含めて全身を確認しました。
東洋医学的には、肺虚肝実という状態として捉えました。少しかみ砕いていうと、疲労によって身体が消耗している一方で、筋肉などの緊張は強く残っている状態と考えたものです。消耗している部分と張り詰めている部分が同時にあるという見立てをもとに、首のこりだけでなく全身の状態を考えて施術を組み立てることにしました。
5回・5週間を目安に経過に合わせて調整した施術
施術では、自律神経のバランスに配慮した全身への鍼と、緊張の強い頚部・項部への置鍼を行いました。置鍼とは、鍼を刺したあとすぐに抜かずに、一定時間そのまま留めておく方法です。初診の時点で、5回・5週間をひとつの目安として施術計画を立てています。
2回目の4月22日には、症状が軽くなる方向に向かっていたようで、お一人で来院されました。初診時の施術を続けながら、肩甲骨の周囲と大殿筋というお尻の大きな筋肉へのリリースを加え、首だけに集中するのではなく、体幹や骨盤周囲も含めた全身の筋緊張を緩めることを意識しました。
3回目の4月30日には項部の痛みがさらに軽くなっており、状態は良好でした。一方で、煩心と呼ばれる、胸がざわつくような落ち着かない感覚を訴えられたため、神門と郄門というツボへの置鍼を追加しています。この時は、前日から右足首に痛風の症状も出ていました。
4回目の5月13日には、項部の症状も煩心も軽い程度になっていたので、施術内容を大きく変える必要はないと判断し、それまでの方針を続けました。そして5回目の5月31日、首と肩の状態が安定してきたことから、症状を集中的に追う段階を終え、状態を維持するためのメンテナンス施術へ移行しました。
学会発表の準備で再び強くなった首のこり
ところが7月8日、学会発表の準備で非常に忙しくなった時期に、再び項部のこりが強くなって来院されました。このときもそれまでと同様の施術を行っています。その後もお電話で予約のご連絡をいただきましたが、お互いのスケジュールが合わず、実際の来院には至りませんでした。
このケースについて私が正直にお伝えしておきたいのは、症状が完全になくなり、その後二度と出なかったわけではないという点です。初診時に強かった首から肩の痛みや項部のつっぱり感は、施術を重ねるにつれて徐々に軽くなっていきましたが、仕事量が増えて疲労がたまると、首のこりは再び現れました。この経過から、症状には仕事量や疲労の蓄積が大きく関係していたと私は考えています。
ご本人の具体的な感想についてはカルテに十分な記録が残っていないため、ここで推測を交えて書くことは控えます。経過として記しておけるのは、症状が軽くなった後もメンテナンス施術へ移り、忙しさで再びつらくなった際にも来院されたという事実です。なお、これはあくまで一人の方の経過であり、同じような経過をたどるとは限りません。
一度落ち着いた首・肩の不調とどう付き合うか
長時間のデスクワークや運転、睡眠不足、疲労などが関係している首や肩の症状は、施術によって一度落ち着いても、身体への負担が再び大きくなると戻ってくることがあります。身体にかかる負担と、身体が回復できる量とのバランスが崩れれば、筋肉が再び緊張して症状が現れることがあり、それは施術が効かなかったということを直ちに意味するものではありません。
つらくなったら施術を受けるというだけでなく、つらくなりにくい生活をどう作っていくかも大切だと私は考えています。十分な睡眠をとること、長時間同じ姿勢を続けないこと、適度に身体を動かすこと、疲労をためすぎないことは、鍼灸の施術と同じくらい重要です。
もうひとつお伝えしたいのは、めまいや強い体調不良などがある場合に、最初から鍼灸だけで判断しないことです。必要に応じて医療機関で検査を受けたうえで、今回のようにMRIなどで重大な異常が確認されなかった後も症状が続いているのであれば、筋緊張や疲労、睡眠、生活習慣といった別の側面から身体を見直すことが、選択肢のひとつになると考えています。
まとめ
首や肩のつらさは、痛む場所だけでなく、その背景にある疲労や睡眠、生活の負担とあわせて見ていくことが大切だと考えています。一度落ち着いた後も身体と上手に付き合っていけるよう、施術と日々の過ごし方の両面からお手伝いしていきます。
・検査で大きな異常はないと言われたものの、首の後ろの痛みや肩のこりが続いている方
・研究やデスクワーク、長時間の運転などで、首や肩に負担がかかりやすい生活を送っている方
・一度落ち着いた首や肩の不調が、忙しくなると再び強くなる方
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