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建売住宅のメリットとデメリット

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:神戸、芦屋、西宮で家を建てる

今回は建売住宅、特に関西エリアの建売住宅事情について書いていきたいと思います。


神戸から大阪にかけての阪神間では、ほぼいつでも建売住宅が販売されています。

私の事務所のある神戸市も、建売住宅の多い地域です。

関西全般、駅から程近い住宅地であれば、どのエリアも同じではないでしょうか。


建売住宅の場合、家の敷地はどれも狭めです。せいぜい20坪から30坪くらいまででしょうか。

販売価格については、大体新築マンションと同じくらいです。戸建て住宅としてはそんなに高いものではありません。

敷地は狭く、家はこじんまりとしていますが、その価格で土地付きの一戸建てが購入出来るのですから、販売は順調なようです。

人気のある物件の場合、工事中に買い手が決まるものもあります。


建売は値段から考えるとお手軽な住宅ですが、実際はどうなのか・・・建築士としての考えを書いていきます。



◇建売住宅は、注文住宅に比べて何故安いのか

家が安いのは良いことですが、注文住宅に比べて安すぎることに不安を覚える方もいると思います。

建売住宅が安い主な理由の一つは、住宅設備や内装など、家の装備品を選ぶときに汎用品で安いものを使っていることです。

建売住宅で使われている住宅設備、たとえばキッチンやお風呂、洗面、トイレなどは、メーカーの量産汎用品で最もお買い得なものが選ばれます。

フローリングの床材や玄関ドア、内装ドアなどの建具も、一番リーズナブルなものが選ばれています。

それに対して、注文住宅では住宅設備は施主が好みで選びますので、「一番安いもの」が選ばれることは殆どありません。

結果として、この住宅設備の値段の差額だけで、注文住宅に比べて数十万円~数百万円の違いが出てきます。


また、建売住宅の設計段階において、この家に住む予定の「施主」は居ません。

そのため、家の内装などの仕様は一般的なもので固定され、その仕様は同じ会社の家では殆ど同じ内容になっています。

発注業者も施工業者もこういう家つくりに慣れていますので、細かい打ち合わせなども必要ありません。

設計にも手間は掛けませんし、工事が始まればあとは一気に作業が進められ、あっという間に家が建ちます。

つまり、施工時の労務費は最小限に抑えられています。

これも、家が安くなる理由のひとつです。



◇建売住宅と手抜き工事について

建売住宅の設計や施工についてですが、私は建売住宅の設計管理を専門に行っている訳ではありませんので断定的なことは言えませんが、
「今時、建売物件だからといって、あきらかな手抜き工事が行われることはないだろう」
と考えています。

しかし、反面、
「建売物件の業者には、工事が雑な業者もいる」
という印象も持っています。


建売住宅では、着工時にこの家に住む「施主」は居ません。

従って、工事を行う施工会社にとっての施主は、発注者=建売住宅の販売業者になります。

建売住宅の施工工事において、施主=販売業者が最も重視する点は、

・工事価格が予定通りに仕上がること

・工期が予定通りに終わること

・内装が綺麗に見えること

だと思います。

基礎や柱や耐力壁など、見えない部分については、それほど気にしていないのではないしょうか。


必要な壁を抜いたり、鉄筋を減らしたりするような手抜き工事は、流石にまず無いと思いますが、見えない部分については、多少、工事が雑な業者もいると思います。


また、注文住宅の施工と比べたとき、これは明らかに違うなあと思う点としては、「工事中の近隣住民への配慮」があります。

通常の住宅工事の場合、建てた家は建築主がこれから生活をする場所になるのですから、工事業者も近隣の方に充分気を使います。

たとえば、夜間や休日には工事を行わないようにしたり、搬入車両の通行が邪魔にならないように気を使ったり、様々な配慮を行いながら工事を進めていきます。

それに比べると、建売住宅の工事現場では、そういった近隣配慮の意識が希薄です。

それは工事業者が気を使う相手は発注業者であって、その発注業者は将来そこに住む「施主」ではないからです。


建売住宅の工事について、工事費が安いからといって明らかな手抜きは無いとは思いますが、このあたりのことについては少し気になります。



◇家の安全性は大丈夫か

都会の建売住宅で最も多い家のかたちは「ビルトインガレージ付き3階建住宅」ではないでしょうか。構造は在来木造で、敷地は狭め。

間取りとしては、

・1階にビルトイン駐車場と玄関(+個室の場合もある)

・2階にリビングダイニングキッチン

・3階に個室2~3部屋

こんな感じになります。

狭い土地で経済的、合理的に生活スペースを確保しようとする場合、この形式が最も効率が良いのでしょう。

このかたちは都会の建売住宅の標準スタイルと言ってもいいと思います。


現在の法律(建築基準法)では、3階建ての家には確認申請時に構造計算書の添付が義務付けられています。

従って、このようなかたちの住宅はすべて確認申請時に構造計算が行われており、理論上、新築時の構造安全性は確認されていると考えて貰って良いと思います。


ただ、この間取りは、どうしても1階部分、特に家の正面に耐力壁が少ないという、不安定な構造になっています。

また木造軸組という構造自体、揺れが大きくなりやすくいものですし、法定耐用年数が鉄骨や鉄筋コンクリートより短いことからも判るとおり、数十年という長期耐久性については、あまり大きな期待は出来ません。


結論としては、建売住宅だからといって新築時に地震などの災害で危険な状態になる家では無いとないとは思います。

しかし「将来にわたって、ずっと安心して住むことが出来る家」といえるかというと・・・このあたりの判断は難しいとこです。

工事写真

上記のことを踏まえまして、建売住宅のメリット、デメリットを考えてみたいと思います。


◇建売優宅のメリット

・安いこと
絶対的に安い。これは間違いありません。
注文住宅でこの価格を実現するのは難しいと思います。

・できあがりを見てから購入出来ること。
基礎や柱などの構造は判りませんが、内装については仕上がりを見てから購入出来ますので、間違いがありません。
インテリアについても「出来上がったらイメージと違った」ということはありません。
その点は安心出来ます。


◇建売優宅のデメリット

・住宅設備が安っぽい
実用上は問題ないと思いますが、基本的に住宅設備、内装にグレードの高いものは使われておりません。
これは販売価格からすると、しょうがないと思います。

・家が狭い、小さい
注文住宅より総じて小さいものが多いと思います。
これも土地の広さ、販売価格からすると、しょうがないでしょう。

・家へのこだわりが何処にもない
自分で建てた訳ではなく、出来たものを購入するのですから、これも仕方ないですね。
ただ、建てている途中で販売がはじまり、その段階で購入契約すれば、壁紙などについては少しは変えられるかもしれません。



以下は、個人的な意見になりますが・・・


家を、住むための「機能的な商品」として見た場合、建売住宅というのは、経済的な商品だと思います。

あの価格であの機能というのは、充分市場価値のあるものだと言えるのではないでしょうか。

家について、住むための機能さえ満足していれば良いという観点から判断するのであれば、充分、要望を満たしている物件は探すことが出来ると思います。


ただ、当然ですが、これは「思い入れがある家」ではありません。

また前述の通り、安全性など、家にこだわりのある方にも、おすすめは出来ません。


家は長い時間を過ごす場所ですし、高い買い物でもあります。

マンション、建売住宅、注文住宅など、自分の好みに合わせて、選んで頂ければと思います。


・・・・・・


少し話はそれますが、建売住宅に似たような販売方法の家として「建築条件付き宅地」で建てる家というのがあります。

大体、土地の値段が相場より少し安く、土地購入と同時に「自由設計」で「モデルプラン」のある家を契約するタイプの家です。

これは建売住宅に比べると施主の意向が反映出来るため、安く、好みの家が建てられそうなイメージがありますが、この「建築条件付き宅地」が、結構トラブルになっている例もあります。

【参考】建築士が考える、失敗する家作りのパターン

「建築条件付き宅地」で家を建てる方は、充分、気をつけて下さい。


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

浅井知彦プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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