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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

家を建てるとき自分で壁を塗りたい人へのアドバイス

2019年1月8日 公開 / 2020年5月6日更新

テーマ:住宅

コラムカテゴリ:住宅・建物

今回は自宅を建てるとき、自分で壁を塗ってみたい人(一部セルフビルド)に参考になりそうなことを書いていきます。


ちなみに、本格的なセルフビルドについては過去にもこちらに書いています。

◇自分で家を建てたい人、セルフビルドの実際

【参考】【1】テレビや雑誌に惑わされない。

【参考】【2】法的な問題について(確認申請、建築許可)

【参考】【3】建築工事の実務作業、安全性の確保

【参考】【4】それでもやりたい人向け、新築DIYについて。


上記を読んで頂ければ判りますが、私は「普通の人が家のすべてをセルフビルドすることは、かなり困難ではないか」という立場です。

しかし、折角自分の家を建てるのですから、どこか一箇所でも自分でやってみたいという人も、当然います。

本格的なセルフビルドを行うほど時間と手間は掛けられないけど、少しぐらいは家族が手がけた分が欲しい・・・・そういう人に人気があるのが「自分で壁を塗ってみる」ことでしょうか。


確かに家を作る作業の中で、どこか一箇所でもセルフビルドをしてみたいとと考えたとき、

◇天井の仕上げを行う
→ 作業が困難。足場も高い。施工不良で天井が落ちてきたら大変。

◇床貼り
→ 時間が掛かりすぎる。完成するまでその部屋が使えない。

◇棚板など
→ 特に新築でなくても出来る。仕上がりがインパクトに欠ける。

・・・上記のように、作業が簡単すぎるか、困難すぎるという欠点があります。


それに比べて、

◇壁を塗る
→ 仕上がり面積が広く見栄えがする。素人でもそれなりに作業できそう。

やはり「壁塗り」をしてみたい人が多いのは判ります。



施主が行うことが出来る壁の塗り仕上げには、塗料を使った「塗装仕上げ」と、漆喰や珪藻土などの壁材を使った「コテ塗り仕上げ」の2種類があります。


「塗装仕上げ」については、素人がいきなり作業しても、そんなに難しくないと思います。

ポイントは周囲を汚さないよう「養生」をしっかり行うこと。

養生については、ホームセンターに行けば様々な「養生シート」を売っていますので、そこから選べば大丈夫です。

もう一つのポイントは、壁に直接塗料を塗らず、塗装下地用の壁紙を使用することです。

たとえば・・・

ペインティングウォール
写真は「ペインティングウォール」という壁紙です。

ペインティングウォール
この壁紙には専用塗料で直接色を塗ることが出来ます。

塗装専用の壁紙ですので、色ムラが少なく、初心者でも綺麗に仕上がります。

こういう壁紙を使えば、壁に直接色を塗ってしまうより、失敗に対するハードルも下がります。

絵心のある方、個性を出したい方は、新築施工時に、こういう壁紙を選んで貰っても良いかもしれません。



「コテ仕上げ」による塗り壁については、本来、技術と手間が必要な作業になります。

プロのように「壁一面を凹凸無く綺麗に塗る」というのは、かなり経験を積まないと難しいかもしれません。

しかし、これも難しく考える必要はありません。とりあえずやってみましょう。


コテ仕上げの良さは、多少凹凸やムラがあっても、手作りの雰囲気が出せることです。

ある程度のコテムラについては、有った方がむしろ味わいが出て良いかもしれません。

コテを使うことが難しい場合、ローラーで塗れる材料を選ぶという方法もあります。

ローラーを使っても、良い感じに凹凸が出る場合もあります。

ジョリパット
写真は、住宅の内装仕上げでよく使われるジョリパットという材料です。

この商品は、色などの種類が多いこと、作業性が良いこと、値段が手頃であることから、多くの現場で使われています。

ジョリパット
この写真の仕上げもジョリパットです。

材料の選び方、塗り方次第で、いろいろな仕上げが楽しめます。


塗り壁の材料については、様々な種類があります。

個人住宅用として人気があるのは、珪藻土、漆喰などでしょうか。

これらについては様々なメーカーから様々な商品が販売されていますので、好みで選んで頂いて良いと思います。



塗り壁の材料の歴史は、元々、土を使ったものが始まりだったと考えられます。

壁に土を塗る
  ↓
土だけでは脆いので、藁などを混ぜる
  ↓
それでもボロボロ崩れるので、しっくいなどを混ぜて強度を上げる
  ↓
繋ぎとして強度のあるセメントを混ぜたモルタル壁が出てくる
  ↓
更に付着が強く崩れにくい有機系材料を混ぜた壁材が普及する

・・・壁に塗る材料は、このように「強度を上げ、付着を強くする」ように進化してきました。


現在販売されている壁塗り用の材料には、

◇付着が強くて塗りやすく、仕上がりもしっかりしているもの
→ 付着や強度を上げる糊の成分が多く、表面が固く、仕上がりにツヤが有るものが多い。

◇風合いが柔らかくやさしい仕上がりのもの
→ 繋ぎである糊の成分が少ない。自然なざらつきが期待出来るが、表面が削れやすく、脆い。

大きく分けると、上記のような傾向があります。

材料選びは、塗りやすさ、仕上がりの固さ、風合いなどから総合的に判断して決めて貰えればと思います。


施主自らが施工する塗り壁は、家の構造材ではありませんので、壁の厚みや仕上がりについては自由に作業して貰って構いません。

しかし、あまり分厚く塗ると、自重で剥がれる可能性がありますので、商品の説明書に従って、厚みを管理してください。

凹凸のある分厚い塗り壁を作りたいという方には、ラスという下地金網を使う方法もありますが、仕上がりを考えてもそこまで厚く塗る必要は無いと思います。



家を建てるとき、自分で壁を塗りたいという方は、事前に設計者に相談してみて下さい。

施工会社、現場監督さんは少し渋い顔をするかもしれませんが、そこは設計者さんが何とかしてくれると思います。

ハウスメーカーの家の場合、こういったセルフビルドは嫌がられるかもしれませんが、一応、お願いだけはしてみても良いかもしれません。



最後に施工費用についてですが、内装壁の数面を自分で塗ることした場合でも、基本的に施工費用のコストダウンにはならないと思います。

この点については、御了承ください。


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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