管理職の上手な褒め方・叱り方②「叱る」について
先日の日曜日(6月30日)、湧別町・佐呂間町・北見市にまたがるサロマ湖畔で開催された「サロマ湖100kmウルトラマラソン」に参加してきました。2019年に初参加し、今回が3回目の参加です(2020~2022年はコロナの影響で中断)。
結果はというと、40km地点の関門を制限時間内に通過できず……途中リタイアとなりました。30度を超える暑さの影響もありましたが、練習量を考えると妥当な結果かもしれません。35kmを超えた頃から、バテて走れなくなりました。
100kmマラソンというと、人間の足で走るには非常に長い距離ですから、多くの方は「体力に自信のあるバリバリのアスリートが参加するイベント」とイメージするかもしれません。しかし実際は、今回のサロマ湖100kmマラソンのエントリー選手のうち、10代~30代はわずか14.3%でした。参加者の大半は年齢層の高い皆さんであり、50代・60代の方が56.1%を占めています(70代以上の参加者も84名いらっしゃいました)。おそらく、リピーターの方が大半を占めているのでは、と予想できます。
皆さん、なぜこんなにマラソン大会に参加し続けるのでしょうか(私も含めてですが)。マラソンは、決して楽なスポーツではありません。今回、バテて走れなくなったと述べたように、走ることは当然疲れますし、走っている最中は苦しかったり、つらかったりします。走り始めてから「申し込まなければ良かった」と後悔したことも何度もあります。しかし、それでも「また来年もエントリーしよう!」と私はすでに決心しています。この「やる気」はどこから生まれてくるのでしょう。
今回は、マラソンを通じて「やる気~モチベーションはどこから生まれてくるのか」について考えます。
① 目標を持つことは、モチベーションの大前提
モチベーションという言葉は、ラテン語の「MOVERE(モーベレ)」に由来しています。これは現代英語の「MOVE」を意味する言葉で、動く、特に「何かに向かって動く」を意味します。通常、私たち人間は目的や目標なしには行動しません。意識的であれ無意識的であれ、何らかの「得たい結果」のために動くのです。
そう考えると、モチベーションとは何か「得たい結果=目的」があって、それに向けて行動する力であると定義できます。つまり、目的や目標があることはモチベーションが生まれる前提と言えます。
ところが、「目指したい何か」があっても、それが頭の中にぼんやりと存在し「言語化できない状態」では、具体的な行動に結びつきません。目標というものは、具体的であればあるほど質の高い行動につながる可能性が高まります。
目標を考える際に知っておくと役立つ考え方に「SMARTの法則」というものがあります。目標設定における定番のフレームワークです。SMARTは頭文字で、それぞれSpecific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(実現可能)、Realistic(現実的)、Time-related(期限が明確)を意味しており、これに合致するよう目標を考えると行動が生まれやすくなります。
そう考えると、マラソン大会へのエントリーはSMARTの法則のほとんどすべてをクリアしている目標設定と言えるでしょう。具体的で、測定可能で、期限が明確な目標が設定されることでモチベーションが生まれるのです。
※ 具体的な目標を持つことがモチベーションにつながる
② 成功体験が自己効力感を高める
自己効力感とは、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、「自分の能力を信じる気持ち」を意味します。簡単に言うと、「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思える感情のことです。「自分ならできる」「きっとうまくいく」と考えていれば「自己効力感が高い」状態だと言えますし、「自分には無理だ」「きっと失敗する」と考えていれば「自己効力感が低い」状態と言えます。
自己効力感はモチベーションに深く関わっていると言われます。特に、目標に向かって「行動を起こす」ときに必要な要素です。自己効力感が高いと、モチベーション高く行動に向かえるというわけです。
自己効力感を高めるためにはいくつかの要因がありますが、最も効果的なのは「成功体験」だそうです。これは大きな体験でなくても構いません。小さな成功体験の積み重ねでも、自己効力感は強化されるとのことです。
ただスモールステップであっても、「成功体験」を得るためには具体的な目標が必要です。目標に向かって努力し、それを達成していくことが重要で、その積み重ねが自己効力感を高め、モチベーションを高めることにも繋がるようです。そう考えると、自己効力感を高めるという観点からも、目標は不可欠ということです。
マラソン大会にエントリーして、大会当日まで全く走らないという人は(あまり)いません。それなりに「練習しておこう」と考えるものです。今日は5km走ろう、10km走ろうという目標を立てて走り、それをクリアするたびに小さな「成功体験」を積み重ねて、自己効力感を高めていくのでしょう。
私は「朝ラン派」なので、毎朝6:00に起きて6km走ってからシャワーを浴び、朝食をとるのがルーティンとなっています。仕事が早かったり、雨が降ったりする日は走れませんが、ちゃんと走れた日は充実感を感じ、朝食も美味しく、体調も良い気がします。そして、「今日もちゃんと走れた」という気持ちが自分の自己効力感を高めてくれます。6kmのランニングは100kmに比べると小さな成功体験ですが、コツコツと積み重ねることで「明日も走ろう」という気持ちが生まれます。
※ 小さいことでも「やり遂げた」という気持ちの積み重ねがモチベーションにつながる(そのためには目標が必要)
③ 行動によって得られる「好ましい結果」を意識する
以前のコラム「管理職の上手な褒め方・叱り方①『褒める』について」で、「行動分析学」という心理学の一体系についてご紹介しました。行動心理学は、「なぜ私たちの行動は起こるのか」という、行動のメカニズムについて研究する学問です。我々は「自分の行動・発言・ふるまい」によって「好ましい結果」が得られると、同じ行動を繰り返す可能性が高まり、「好ましくない結果」が得られると、同じ行動を繰り返す可能性が低くなる、というものです。
マラソン大会に出ると、たとえ完走や記録更新といった大きな結果が出なくても、何十キロも走った満足感、美しい景色の中を走る喜び、エイドでの水のおいしさ、沿道で応援してくださる皆さんの温かい声援、折り返しですれ違う仲間とのエール交換など、数えきれない「ご褒美」があります。もちろん、走り終わった後のビールは格別です!あの美味しさは、走った後でないと経験できません。
マラソン大会に出たことのある方は、「好ましい結果が得られる」ことを知っているので、同じ行動(大会にエントリーする)を繰り返すわけです。
※ 行動によって生まれる「好ましい結果」を意識することがモチベーションにつながる
とまぁ、なんとなくマラソンとモチベーションの関係について、3つの観点からお話ししました。
もちろん、モチベーションを生み出す要素は他にもたくさんありますが、ここでお話しした①明確で具体的な目標を持ち、②その目標に向かうための「小さな目標」を達成して「成功体験」を積み重ね、③行動によって生まれる「好ましい結果」を意識することがモチベーションにつながる、という考え方は、お仕事の場においても活用できるのではないでしょうか。
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「モチベーションマネジメント研修」では、モチベーションの生まれるメカニズムや、自身のモチベーションをコントロールする考え方を理解することにより、前向きに仕事に取り組めるスキルを習得します。
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