人生の節目と遺言 ~家族への未来のメッセージ~1
前回は、自筆証書遺言の基本ルールについてお話ししました。
今回は、相続のご相談の中でもよく登場する
「不動産の共有」
について考えてみたいと思います。
不動産は分けることができない。
預貯金であれば、金額で分けることができます。
1,000万円の預金なら、相続人が二人の場合500万円ずつに分けることもできます。
しかし、不動産はそう簡単にはいきません。
家を半分に切って分けることはできないからです。
そのため、遺言がない場合には、不動産が相続人全員の共有となることがあります。
共有って問題なの?
共有と聞くと、「みんなで持つのだから平等で良いのではないか」と思われるかもしれません。
確かに、一見すると公平な方法に見えます。
しかし実際には、共有だからこそ生じる問題があります。
例えば、親が住んでいた実家を兄弟姉妹で相続したとします。
ある人は、「思い出があるから残したい」と考えるかもしれません。
一方で、「誰も住まないのだから売却したい」と思う人もいるでしょう。
また、「賃貸に出したらどうか」という意見もあるかもしれません。どの考え方も間違いではありません。
それぞれに事情があり、それぞれに理由があります。
だからこそ、結論がなかなか出ないことがあるのです。
維持費はだれが負担する?
さらに、不動産は持っているだけで終わりではありません。
固定資産税がかかります。
建物が古くなれば修繕も必要です。
空き家になれば管理もしなければなりません。
つまり、
不動産は財産であると同時に、管理する責任も引き継ぐことになる
のです。
最近問題となっているケース
ここで少し視点を変えてみましょう。
例えば地方の実家を相続するケースがあります。
子どもたちは札幌や本州で生活している。
実家に戻る予定はない。
けれども親との思い出があるため、「すぐには売りたくない」という気持ちもある。
ところが時間が経つにつれて、草刈りや雪対策が必要になる。固定資産税もかかる。売却しようとしても買い手が見つからない。
そんな悩みを抱えるケースは決して珍しくありません。
しかし、この問題は地方だけの話ではありません。
札幌市中央区のような都市部のマンションでも同じです。
親世代にとっては価値の高いマンションでも、
子ども世代はすでに自宅を所有していることがあります。
あるいは道外で生活しているかもしれません。
築年数が経過したマンションでは、
管理費や修繕積立金の負担も続きます。
将来の大規模修繕や建替えの問題もあります。
その結果、
「相続したけれど住まない」
「管理を続けるべきか悩んでいる」という状況も実際に起きています。
財産の使われ方も考える時代になった?
このように考えると、これからの相続は「誰に相続させるか」だけではなく、「その不動産をどうしてほしいのか」まで考える時代になっているのではないでしょうか。
そして、こうした問題は家族だけで解決できるとは限りません。
不動産会社。司法書士。税理士。弁護士。行政書士。それぞれの専門家の力を借りながら進めることもあります。
相続は家族の問題ですが、家族だけで抱え込まなくてもよいのです。
むしろ早めに相談することで選択肢が広がることも少なくありません。
先送りが代々続く?
私は、相続で避けたいことの一つが、「不動産問題を次の世代へ先送りしてしまうこと」だと思っています。
親の代で決められなかったことが、子どもの代へ。さらに孫の代へ。引き継がれてしまうこともあります。
例えるなら、相続問題の先送りは「小さな雪玉を転がし続けるようなもの」です。最初は小さな問題でも、世代を重ねるたびに相続に関わる人が増え、気づいたときには誰も簡単に動かせない大きな問題になってしまいます。
不動産を売るにも、活用するにも、多くの人の同意が必要になるためです。
親としては、「家族のために残した家」だったとしても、子ども世代にとっては、「どうしたらよいか分からない家」になることがあります。
不動産の承継こそ、家族で納得できるまで話し合うことが大切だと思います。
不動産をそのまま残した方がよいのか。相続が発生する前に処分した方が家族にとって幸せなのか。
私は、不動産を残すこと自体が悪いとは思いません。
しかし、「残した結果、家族が困らないか」という視点も大切ではないでしょうか。売却する。住み替える。賃貸にする。選択肢は一つではありません。
大切なのは、親の想いと家族の将来を考えながら、家族で話し合って決めることです。
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遺言は財産を残すためだけのものではありません。
大切な人への想いを言葉にする、家族への未来のメッセージでもあります。
次回は、
「独身だから遺言はいらない? 独身の方こそ考えてほしい遺言の役割」についてお話ししたいと思います。


