人生の節目と遺言 ~家族への未来のメッセージ~4
遺言についてお話しすると、「遺言があれば相続でもめないんですよね?」というご質問をいただくことがあります。
確かに、遺言には相続トラブルを防ぐ効果があります。しかし、私はいつも少し慎重にお答えしています。
なぜなら、遺言は争いをなくす魔法ではないからです。
本当はどう考えていたんだろう?
相続の問題というと、多くの方は財産の話を思い浮かべます。
もちろん、それも大切な要素です。
しかし実際には、「本人がどう考えていたのか分からない」ことが家族の悩みにつながるケースも少なくありません。
実家を誰が引き継ぐのか。
預金をどう分けるのか。
親の介護に尽くした人の気持ちをどう考えるのか。
そんな話し合いの場面で、本当に知りたいのは、
「お父さんはどう考えていたのだろう」
「お母さんは何を望んでいたのだろう」ということではないでしょうか。
家族だからこそ、それぞれの思いがある!
遺言がない場合、その答えを家族が想像しながら話し合うことになります。
もちろん円満にまとまることもあります。
しかし、「きっとこう思っていたはず」という考え方は、人によって違います。
家族それぞれに想いがあり、それぞれに理由があります。
だからこそ話し合いが難しくなることもあるのです。
遺言は家族の道しるべ!
一方で、遺言が残されていた場合はどうでしょうか。
もちろん、遺言があれば全てが解決するわけではありません。
それでも、
「この家は妻に残したい」
「子どもたちには仲良くしてほしい」
「この財産はこう引き継いでほしい」
という意思が示されていれば、家族はその想いを出発点として話し合うことができます。
私は、これが遺言の大きな役割だと考えています。
遺言は万能ではない!
ただ、ここで一つ知っておいていただきたいことがあります。
それは、遺言は亡くなった後に効力が生じる制度であるということです。
遺言は、自分が亡くなった時の財産を、誰にどのように引き継いでもらうかを決める大切な制度です。
つまり、遺言は財産の承継を法律的に支える仕組みなのです。
しかし裏を返せば、亡くなる前の生活や、その後の長期的な財産管理まで、すべてを解決できる制度ではありません。
例えば、
未成年のお子さんがいる場合。
障がいのあるお子さんの将来が心配な場合。
家族に長期間にわたって財産を管理してほしい場合。
このようなケースでは、遺言だけでは十分でないこともあります。
実際の実務では、
生命保険を活用したり、
任意後見制度を利用したり、
家族信託などの仕組みを検討したりすることもあります。
場合によっては、さらに別の制度を組み合わせながら将来への備えを考えることもあります。
遺言+α
だから私は、遺言はとても大切な制度だけれど、万能な制度ではない
と思っています。
そして、それは決して遺言の価値が低いという意味ではありません。むしろ、遺言ができること。
遺言だけでは難しいこと。その両方を理解した上で活用することが大切なのです。
家族への未来のメッセージ
これまでの連載でお伝えしてきたように、遺言は高齢になってから慌てて作るものではありません。
結婚した時。
子どもが生まれた時。
家を購入した時。
人生の節目ごとに、
「今の自分は何を大切にしているのだろう」と考え、その想いを言葉にしていくものです。
私は、遺言とは家族への未来のメッセージだと思っています。
争いをなくす魔法ではありません。
すべての問題を解決する万能薬でもありません。
それでも、家族が迷った時の道しるべを残すことはできます。
そして必要に応じて、ほかの制度と力を合わせながら、大切な人の未来を支えることもできます。
遺言は財産を残すためだけのものではありません。
大切な人への想いを言葉にする、家族への未来のメッセージでもあります。
次回は、
「スマホのメモではダメ? 自筆証書遺言の基本ルール」についてお話ししたいと思います。


