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家族信託と成年後見制度の違い

財産管理者の権限

財産の管理を行うという同じ役目の人でも、その呼び名は家族信託と成年後見制度では異なります。家族信託では「受託者」成年後見制度では「後見人」です。 受託者の権限は信託財産の管理と処分のみで、身上監護権はありません。成年後見制度上の後見人は、財産の管理や処分、身上監護権、本人が行った法律行為の同意や取消の権限があります。

財産の処分方法

家族信託の受託者は、その責任において目的の範囲を逸脱しないかぎり自由に財産の運用や処分ができます。不動産の処分も、便宜上の所有者として取引を行えるのです。 一方、成年後見制度の後見人は、原則として財産を維持することが前提です。本人のための支出、または扶養義務者への支出だけが認められています。よって資産の運用や、本人に利益のない売却はできません。

犯罪被害への対応

家族信託の場合は、悪徳商法などの犯罪被害にあった本人の法律行為を受託者が取り消すことはできません。信託された財産は本人から分離されるため、当該の信託財産が犯罪の被害にあう可能性は低いといえるでしょう。 成年後見制度では「法定後見」か「任意後見」かで少々異なります。法定後見においては取消権がある後見人により被害を回復できますが、任意後見では取消権が与えられていないため被害の回復ができません。

本人が死亡した場合の相続手続き

家族信託をしていて本人が死亡した場合、信託されている預貯金は凍結されません。また、自分が死亡しても信託契約が終了しないように設定してあれば、財産の名義が受託者となっているので名義変更の必要がなく、引き継ぎに手間がかかりません。 成年後見制度では、後見は死亡をもって終了します。そのため、後見人が管理していた財産の整理やあらゆる事務手続きは、相続人が行う必要があります。

任意後見制度について

任意後見制度とは

本人に判断能力があるうちに、将来において判断能力に欠ける状態になった場合に備える方法です。つまり、本人があらかじめ選んだ「任意後見人」に療養看護や財産管理の事務について代理権を与える契約を結んでおくのが「任意後見制度」です。 本人の判断能力が低下したとしても、任意後見人が家庭裁判所に選任された任意後見監督人の監督のもと、本人の代理として本人の意思に沿う適切なサポートをすることが可能になります。

任意後見と家族信託の併用

まだまだ健康であり、認知症などでもなくて、とりたてて判断能力が低下していないならば、必ずしも成年後見制度か家族信託かという二者択一を考える必要はありません。 2つを併用するという選択肢もあります。併用することで財産管理と処分面を万全にしながら、身上監護権で生活のサポートも充分にできるというメリットがあります。

どちらかを選択すべき場合とは

財産管理の重要性がなく介護や医療に不安があるなら、任意後見が向いているかもしれません。 任意後見であれば、介護や医療の方向性を本人が決められます。後見を任せたい人をあらかじめ選べるので、安心感も大きいでしょう。 一方、財産管理や財産の承継について心配なのであれば、家族信託の利用が向いていかもしれません。話し合いをベースに財産管理や処分方法を決められるので、フレキシブルに対応することができます。

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