崖っぷちか、それとも新たな覇権か?矛盾だらけの中国経済の「未来のシナリオ」
アメリカのイラン攻撃後、改めて石油エネルギーの調達リスクが世界的に高まっています。
そこで日本の高効率、低CO2の石炭火力発電などに注目が集っていますが、今後、脱石油エネルギーの動きは加速するでしょうか?
しかし、石油はエネルギー以外にもプラスチック材料などにも使われており、それらも含め脱石油の動向についてまとめてみました。
◆米国のイラン攻撃と脱石油の動向:総合分析(2026年3月時点)
2026年2月28日、米軍とイスラエル軍はイランへの攻撃を開始し(作戦名「壮絶な怒り」)、最高指導者ハメネイ師が死亡した。
その後、イランの革命防衛隊はホルムズ海峡の実質的な封鎖に踏み切り、原油・LNG(液化天然ガス)の供給が大きく揺らいでいる。
日本は2025年時点で原油の約94%を中東から輸入しており、そのうち約9割がホルムズ海峡を経由している。今回の同海峡封鎖は、エネルギーの中東依存リスクという第1次石油危機以来の課題が、いまだに解決されていないことを改めて浮き彫りにした。
WTI先物価格は一時75ドルをつけ、封鎖前の週末から12%超上昇した。原油130ドルへの上昇シナリオでは、日本の実質GDPが1年目に▲0.58%、2年目に▲0.96%押し下げられるという試算もある。
◆日本の石炭火力発電の「緊急復活」
日本政府は2026年3月27日、石炭火力発電所の稼働率引き上げを一時的に容認する方針を示した。経産省の審議会資料によれば、LNG調達への不確実性が高まる中、「非効率石炭火力」と呼ばれる旧型設備の稼働率引き上げを4月から1年間認める。この措置によるLNGの節約効果は約50万トンで、ホルムズ海峡を経由する年間LNG輸入量の約1割に相当するという。
これが注目される理由のひとつは、石炭がオーストラリア・インドネシア・カナダなどから調達でき、ホルムズ海峡封鎖リスクが高まる中、中東情勢の影響を受けにくい石炭の比率を高めて電力の安定供給を図るという狙いがある。
しかし同時に、この措置は国が進めてきた石炭火力の段階的削減や、CO2排出量削減目標に逆行する「窮余の策」だ。1年後に再び稼働抑制に戻せるかという出口戦略の不透明さも課題となっている。
◆脱石油エネルギーは加速するか?:「二つの力」の相克
今回の事態は、エネルギー政策を巡る二つの方向性を同時に加速させています。
1. 安全保障の観点 → 石炭・再エネ・原子力への分散を促進
ウクライナ戦争によるロシアと欧州諸国の緊張、今般の中東における軍事衝突は、石油や天然ガスのみならず、原子力や再エネなど多様なエネルギーの供給国・消費国・輸送経路をめぐる動きが、地政学的競争に大きな影響を受けることを改めて浮き彫りにした。
中東依存の脆弱性が露わになるたびに、再生可能エネルギーや原子力への転換の必要性が高まりを見せている。
2. 脱炭素の観点 → 長期的な脱化石燃料の流れは不変
G7環境相会合では、CO2排出削減対策のない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することで合意しており、G7の共同声明で廃止年限が明記されたのは初めてだった。 この国際的な圧力は、今回の「石炭緊急復活」が時限的措置である理由でもある。
つまり、今後の脱石油の流れは「加速するが、路線は複線化する」と見るのが適切です。短期的には緊急措置として石炭・備蓄頼みになりながら、中長期的には再エネ・原子力・水素・アンモニア混焼への転換がより強い動機を持って推進されていくと考えられる。
◆エネルギー以外の用途:プラスチック・石油化学の脱石油動向
石油が使われているのはエネルギーだけではない。政府の月例経済報告でも、プラスチック製品の原料となるエチレンなどの石油化学分野について「減産の動きへの注視が必要だ」と懸念が示されている。
石油化学分野の脱石油の方向性は主に3つです。
1.バイオマスプラスチック:植物を原料とするプラスチックで、従来のプラスチックは化石資源を原料として作られており、作る時にも廃棄する時にも多くのCO2が発生する。
カーボンニュートラル実現に向けて、CO2からプラスチックを作る発想で新しい技術開発が進められている。日本政府は2030年までにバイオマスプラスチックを最大約200万トン導入する目標を掲げている。
2.コスト面でまだ普及に壁がある:汎用プラスチックと比べた各生分解性プラスチックの単価は、PLAが約2〜3倍、PBAT(バイオマス由来)は約4〜5倍となっており、コスト面での課題が残る。
3. CO2からプラスチックを作る技術:NEDOのグリーンイノベーション基金等を通じ、プラスチック原料の供給を、資源の循環やCO2の活用によって持続可能な形にしていく研究が進められている。
◆総括
今回の中東危機は、日本のエネルギー政策が抱える根本的な矛盾を一気に顕在化させた。
短期的には「脱炭素の後退」に見える石炭緊急復活が行われる一方、中長期的には中東依存からの脱却を迫る強いシグナルとして、再エネ・原子力・省エネ・水素などへの投資加速につながる可能性が高いと言える。
プラスチック等の石油化学用途においても脱石油技術の開発は進んでるが、コスト・性能面での実用化にはまだ時間を要するため、完全な脱石油は当面、数十年単位の課題となるだろう。



