企業の生成AI導入による生産性向上への期待と課題とは? 生成AIの活用と生産性向上(その2)
ここでは、事務部門(間接業務)における熟練技能の見える化・標準化から、AIやIT
ツールを活用したナレッジデータベース構築までの全体像を解説します。
1. 事務部門における「熟練技能(暗黙知)」の定義
事務部門における熟練技能とは、単なるPC操作や書類作成の手順にとどまりません。
①状況判断と決断力
「急に忙しくなった」「担当者が交代した」といった状況の変化(4Mの変化)に対して
何を優先しどう対応すべきかという経験則に基づく判断。
②思考プロセス
見積もりや設計などの業務において、「なぜその判断に至ったのか」という背景にある
技術的根拠やロジック。
これら言語化されていない「暗黙知」を、組織全体で使える「形式知(データ)」へ変換
することがDXの第一歩となります。
2.事務部門のベテラン社員から知恵を引き出す4つのステップ
事務部門の熟練技能を継承するには、ITツールで業務の素材や変化点を集め、AIを用い
て判断ルール(作業分解された形式知)を構造化し、それをナレッジベース(AIチャット
ボット等)として現場の実務や教育(OJT)に組み込む仕組み作りが不可欠です。
以下にそのステップを示します。
Step1:見える化手法と標準化(作業分解とルールの抽出)
属人化した業務を誰もが実行できるよう、まずはアナログとデジタルの両面から「業務
の見える化」と「標準化」を行います。
①作業分解による言語化
業務を細分化し、ベテランが無意識に行っている判断基準や急所を「作業分解」によっ
て具体的な言葉やルールとして言語化します。
②教育の標準化
単なる作業手順ではなく、「新人にどう教えるか」という視点でマニュアル化する
ことで、誰が教えても同じ品質になる「教え方の標準」を作ります。
Step2:IT・デジタル技術による「データと変化点」の収集
AIがノウハウを学習するための「素材」を集め、事務職場における状況の変化を客観的
に捉えるために各種ITツールを活用します。
①行動ログの収集
業務システムや日報管理ツールなどから、過去の報告書や作業のログを抽出し、「いつ
どのような変化があり、どう行動したか」というデータを集約します。
②音声・動画記録ツール
テキスト化しにくい暗黙知を引き出すため、Web会議ツール等を用いてベテランへの
ヒアリング音声を記録したり、複雑なPC作業を動画マニュアルとして記録します。
③オフィス向けIoT
製造現場のスマートファクトリー化と同様に、オフィスでも稼働監視IoTなどを用いて
「人が交代した」「業務が集中している」といった状況の変化(変化点)をリアルタイ
ムのデータとして収集・監視します。
Step3:AIを活用したナレッジデータベースの構築(形式知化の実装)
集めた素材を、生成AIなどの技術を用いて「組織の知恵」として構造化し、現場で使える
システムへ昇華させます。
①対話型ヒアリングと自動抽出
AIがインタビュアーとなり、ベテランとの会話から「なぜその判断をしたのか」という
ノウハウをリアルタイムに要約・構造化します。また、報告書やログから判断基準を
自動抽出します。
②独自のナレッジベース構築
抽出した過去の見積データ、設計図面、そして「判断理由」をAIに学習させます。
③バーチャル熟練者の実装
学習させたデータを用いて、社内FAQや専用チャットボットを構築します。これに
より、若手社員が事務業務で迷った際も、ベテランと同等の精度で状況判断ができる
ようAIがサポートします。
Step4:現場への定着:4つの管理サイクル
高度なAIデータベースを構築しても、現場で使われなければ意味がありません。
①4つのサイクルを回す
デジタル化された手順やルールであっても、「正しく作成し、管理し、正しく教え
守らせる」という4つの管理サイクルを回すことが不可欠です。
②ブラックボックス化の防止
デジタル技術による効率化によって、ベテランの「なぜそうするのか」という思考
プロセスが見失われないよう、AIはあくまで「人による管理を支援・高度化する
ツール」として位置づけ、OJTと併用して活用することが重要です。
★事務部門で上記のような課題があるという企業様からのお問い合わせを
お待ちしております。解決に向け、一緒に取り組んでいきましょう。



