日本の物価上昇・インフレ率;日銀と識者で、なぜ意見が違うのか?30年のデフレから終息宣言はいつ?
エコノミストの會田卓司氏が解説する「サナエノミクス(高市政権の成長戦略)」の概要と、その背後にある経済論理をまとめます。
この解説の核となるのは、日本を長年縛ってきた「緊縮財政の呪縛」を解き放ち、官民連携の積極的な投資によって供給能力を強化するという考え方です。
1. 「サナエノミクス」と「アベノミクス」の決定的な違い
サナエノミクスは、アベノミクスの「3本の矢」を継承しつつも、現在のインフレ環境に適応した新しい形態であると解説されています。
• 金融政策: デフレ下での大規模緩和(黒田バズーカ)とは異なり、物価安定と経済成長を両立させながら、「緩やかな利上げ」を容認するスタンスです。
• 財政・成長戦略: 需要を喚起する単発的な支出ではなく、「危機管理投資」や「供給能力の強化」に重点を置きます。投資によってビルや工場、新技術といった供給力を増やすことで、長期的にはインフレを安定させ、国力を高めることを狙います。
2. 緊縮財政からの脱却と「見せかけの財政危機」
會田氏は、日本の財政が「火の車」であるという通説は、統計上の「見せ方」による誤解が大きいと指摘しています。
• 60年償還ルールの特殊性: 日本の国家予算で国債費が26%と高く見えるのは、世界でも例を見ない「債務償還費(借金そのものの返済分)」を予算に計上しているためです。これを除外して他国並みの「利払い費」のみで比較すれば、予算に占める割合はわずか6%程度にすぎません。
• 政府の純資産と企業の余力: 日本政府は莫大な金融資産を保有しており、ネット(純負債)で見れば米国より状況が良い側面もあります。また、日本企業は多額の貯蓄(現預金)を抱えており、経済全体の負債構造は極めて安定しています。
• プライマリーバランス(PB)の罠: 2026年度にPBが黒字化する見通しですが、これはG7で唯一、日本だけが成長投資を抑制していることを意味し、むしろ喜ぶべきことではないと警鐘を鳴らしています。
3. 円安の捉え方と新たな産業政策
昨今の1ドル150円前後の円安についても、前向きな捉え方が示されています。
• 「良い円安」への転換: かつての110円台は、バブル崩壊後の異常な円高(オーバーシュート)であり、企業の海外移転やデフレを招きました。150円台はバブル前の水準に戻っただけであり、国内投資の拡大や輸出企業の収益力向上に寄与します。
• 強みをさらに強くする: これまでの新自由主義(民間任せ)の失敗を反省し、アニメなどのコンテンツ産業や、AI、自動運転といった日本が強い分野に官民連携で集中的に投資すべきであるとしています。フランスや米国に比べ、日本のコンテンツ産業への支援額は極めて低いのが現状です。
4. 具体的な国民負担の軽減策
積極財政と成長を前提とすることで、増税なしでの政策遂行が可能であると述べています。
• 消費税減税(食料品0%): 税収は毎年低く見積もられる傾向があり、実際には上振れした分だけで食料品の消費税を0%にする財源(約5兆円)は賄えるとしています。
• 社会保険料の適正化: 現行の社会保障制度は「永遠にマイナス成長」という極端に悲観的な前提で設計されています。1%の経済成長を実現できれば、年金積立金は将来的に膨大に膨らむため、現役世代の保険料を引き下げる余地が生まれます。
結論
會田氏の解説によれば、高市政権の狙いは、「わざと悪く見せている財政状況」の真実を明らかにし、PB黒字化目標という呪縛を解いて、将来の成長のための投資に舵を切ることにあります。
これにより、所得が増え、供給能力が高まる「強い経済」を次世代に残すことが真の目的であると締めくくられています。



