強まる中国によるレアアース輸出禁止や経済的圧力:日本はどのように自立し、経済安全保障を強化すべきか?

濱田金男

濱田金男

テーマ:日本の未来を考える

レアアースの世界情勢、2010年以降の日本の対応、および南鳥島海底レアアースの
可能性について、以下の通りまとめます。

1. レアアース世界の現状:中国一強の背景
レアアース(希土類)は、その名の通り「稀少」だと思われがちですが、実際には
陸上だけでも莫大な埋蔵量があり、資源量自体は決してレアではありません。
しかし、現在中国が供給の大部分を握り「一強」状態にあるのには、技術的・コスト
的な理由があります。
• 精錬コストと環境リスク: 鉱石からメタルを取り出す精錬の過程では、ウラン
 やトリウムなどの放射性物質を含む有害な廃棄物が出ます。中国はこの厄介な
 廃棄物の処理コストを極めて低く抑えることで、世界の市場を席巻しました。

• 各国のジレンマ: アメリカやオーストラリアも資源は持っていますが、厳しい
 環境規制により自国での精錬には莫大なコストがかかります。その結果、多くの
 国が「汚れ仕事」である精錬を中国に押し付けてきたのが実態です。

• 戦略的カードとしての利用: レアアースはEVのモーターやスマートフォンの磁石
 さらに高度な軍事兵器に不可欠であるため、中国はこれを外交交渉の強力なカード
 として利用しています。

2. 2010年以降、日本が取ってきた対応
2010年に発生した尖閣諸島周辺での問題をきっかけとした「レアアースショック」
以降、日本は「脱中国」に向けたサプライチェーンの多角化を進めてきました。
• 調達先の多角化: 中国依存度を一時8割超から5割程度まで下げた時期がありま
 した。具体的には、オーストラリアの鉱石を、放射性廃棄物の処理インフラが
 整っているマレーシアで精錬し、日本へ持ち込むというルート(オーストラリア
 ・マレーシア・日本ルート)を構築しています。

• 備蓄と代替技術の開発: JOGMECなどを通じた政府備蓄が行われているほか、
 日本が強みを持つ高い精錬技術や環境技術を活かしたリサイクル研究も進めら
 れています。

• 外交と経済安全保障: 日米連携を強め、資源を持つ国と技術を持つ国が協力して
 最終製品までを完結させるサプライチェーンの構築を目指しています。
 また、最近では中国による対日輸出禁止措置などの経済的圧力に対し、さらなる
 多角化と自立した国家体制の構築が求められています。
********************

中国によるレアアースなどの輸出禁止や経済的圧力に対し、日本がどのように自立
し、経済安全保障を強化すべきかについて、以下の4つの観点からまとめます。

1. 調達先の多角化と国際連携の強化
中国への過度な依存を脱却するためには、「調達先の多角化(マルチラテラル化)」
が最優先事項です。
• 非中国サプライチェーンの構築: すでに、オーストラリアで採掘し、放射性廃棄
 物の処理インフラがあるマレーシアで精錬して日本へ運ぶという、中国を経由
 しないルートが活用されています。

• 同盟国との連携: オーストラリアやアメリカ、さらにはイギリス、インドなどと
 協力し、資源・技術・資金を出し合って、量産価格が安定した供給体制を世界に
 宣言することが、日本の本気度を示すことにつながります。

2. 技術開発による「日本独自の強み」の確立
資源そのものを持たなくても、「日本にしかできない技術」を持つことが、他国から
の圧力を跳ね返す最大の武器になります。
• 代替素材の開発: 中国が止めているレアアースを使わず、日本国内にある資源や
 別の素材で代用できるような新素材の研究開発に、国として重点的に投資すべき
 です。

• 精錬・環境技術の活用: 日本は、有害な廃棄物を出しつつも高い純度でメタル
 を取り出す「精錬技術」や、それを無害化する「環境技術」で世界トップレベル
 にあります。
 この強みを活かし、世界中のスクラップから有用なメタルを回収する「アップ
 グレードリサイクル」などの分野で国際競争力を維持すべきです。

• 不可欠な存在になる: 水素エネルギーや高性能な次世代材料など、「世界が日本
 抜きでは立ち行かない」ような技術やサービスを提供し続けることで、孤立を
 防ぎ、国家の尊厳を守ることができます。

3. 戦略的な備蓄と国内体制の整備
不測の事態に備えた「物理的な自立」も重要です。
• 戦略的備蓄: JOGMECなどを通じた政府備蓄を強化し、有事の際にも少なくとも
 1年程度は産業が耐えられる体制を整える必要があります。備蓄は、価格が安く
 世間が注目していない「平時」にこそ多量に行うべきだと指摘されています。

• 経済的自立の意志: 相手の圧力に屈して謝罪するのではなく、「日本は国内に
 あるものと独自の技術で自立できる」という姿勢を示すことで、相手の「上から
 目線」の統治を無効化する必要があります。

4. 南鳥島海底レアアース資源の可能性
日本の排他的経済水域(EEZ)内にある南鳥島沖の海底レアアースは、大きな注目を
集めていますが、専門家からは冷静な見方も示されています。
• 資源量のポテンシャル: 海底には陸上の何百倍ものレアアースが眠っていると考え
 られており、資源量としての魅力は非常に高いです。2026年1月からは試験掘採も
 始まる予定です。

• 商業化の壁(コストと技術): 最大の課題はコストです。水深4,000メートルと
 いう深海から引き上げ、精錬して販売するビジネスモデルを成立させるのは極め
 て困難です。

• 廃棄物処理の問題: 海底から取り出した後の廃棄物をどう処理するか、海に戻し
 て良いのかといった環境議論も必要であり、これらを含めたコストを考慮すると、
 商業利用は「相当先の話」になると予測されています。

• 現状の評価: 少なくとも今後10年でゲームチェンジャーになる可能性は低く、
 当面は夢やロマンを追う学術的な段階に留まるとの見方もあります。

まとめ
レアアース問題の本質は資源の有無ではなく、「環境コストを誰が負担し、いかに
安く精錬するか」というコスト競争にあります。日本は技術力と外交を駆使して
中国依存からの脱却を図っていますが、南鳥島の資源がすぐにその解決策となる
わけではなく、中長期的な視点での粘り強い戦略が必要です。

レアアースを巡る状況は、例えるなら*「宝の山(資源)は世界中にあるが、そこ
から金目銀目を取り出すためのゴミ処理場(精錬所)を誰も自分の庭に作りたがら
ない」という構図に似ています。

中国はそのゴミ処理を引き受けることで、世界中の製造業の首根っこを掴むこと
に成功したのです。

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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