「期待するだけでは、何も変わらない」― 失われた30年の先に、本当に必要な私たちの覚悟とは ―

「失われた30年」を経て、ようやく日本に明るいムードが戻りつつある。
株価は史上最高値圏にあり、円安を背景に企業業績も改善。
政権交代により誕生した高市内閣に対する期待も、かつてないほど高まっている。

だが、ここで一度立ち止まって考えたい。

この変化は、本当に私たち一人一人の生活や、
中小事業者の現場を変えているだろうか。

マクロの「回復」と、現場の「実感」の乖離

GDPは伸び、株価は上がっている。
しかし多くの中小事業者は、
　輸入原材料の高騰
　輸送費・エネルギーコストの上昇
　深刻な人手不足
　価格転嫁の難しさ

に直面し、「回復」を実感できていない。

これは偶然ではない。
成長の果実が、必ずしも現場に届く構造になっていないからだ。
国策分野の陰で、中小は何を担わされているのか

半導体、AI、防衛、GX――
政府が掲げる成長分野の多くで、中小企業は「重要な存在」とされている。
しかし現実には、
　投資負担は中小
　技術リスクも中小
　価格決定権は大企業
という構図が変わっていない。

中小は「主役」ではなく、
サプライチェーンを支える実働部隊として期待されているに過ぎない。

「政権が変われば良くなる」という幻想
高市内閣への期待は理解できる。
政治が方向性を示すことは、確かに重要だ。

しかし、ここに大きな落とし穴がある。

政治が変われば、
誰かが何とかしてくれるのではないか。

この「待ちの姿勢」こそが、
失われた30年を長引かせてきた最大の要因ではなかったか。

政治は環境を整えることはできても、
企業や個人の競争力そのものを作ることはできない。

今、本当に問われているのは「私たち自身」
中小事業者に、いま突きつけられている問いは明確だ。

「あなたの会社は、何で“指名”されているのか？」
　安いからか
　断らないからか
　昔からの付き合いだからか

もしそうなら、その立場は極めて脆い。
これから求められるのは、

得意技術を深化させること
代替されにくい工程に立つこと
「便利な下請け」から脱却すること

これは「攻め」ではない。
生き残るための最低条件だ。

結論：変わるのは、政治ではなく「主体」

明るいムードも、政権交代も、追い風ではある。
しかし、それだけで日本が変わることはない。

本質的に変わるかどうかは、
中小事業者が
働く個人が

「待つ側」から「動く側」に変われるか
にかかっている。

失われた30年の次の10年を、
「また待った10年」にするのか、
それとも「動いた10年」にするのか。

その答えは、
私たち一人一人の行動の中にしかない。