トヨタ、テスラ、BYD自動車知能化の最前線:SDVが拓く移動の再定義

濱田金男

濱田金男

テーマ:日本の未来を考える

世界の自動車競争は、単なる「電動化(EVシフト)」の段階を超え、電子
プラットフォームやアプリケーションが競争力の源泉となる「知能化」の
領域へと激変しています。

かつての車体やエンジンの性能を競う時代から、ソフトウェアが車両の価値
を規定するSDV(Software-Defined Vehicle)への移行が、現在の最前線です。

世界の主要プレイヤーの現状と、トヨタの勝算について、解説します。

1. 競争の最前線:「知能化」という新たな戦場
現在の自動車産業では、車両単体の進化だけでなく、AI、半導体、そして常時
接続によるデータ活用が不可欠となっています。

①第4世代への突入
グローバルな伝統的メーカーがようやく第3世代のSDVに入ろうとする中、テスラ
や中国勢はすでに第4世代(AIや高度な電子アーキテクチャを駆使する段階)へ
の進化を始めています。

②価値の転換
競争軸は「車体」から、OSやアプリケーションを含む「知能化領域」へ移って
おり、この領域での感応度が極めて高まっています。

2. BYDとテスラの現状
両者は「革命的な価値を提供するグループ」として市場をリードしてきましたが
それぞれ異なる課題に直面しています。
①BYD(垂直統合の覇者)
電池やモーターなどの主要部品を内製化する垂直統合型モデルにより、欧州メ
ーカーと比較して約4割ものコスト優位性を持ちます。しかし、中国国内での
過酷な価格競争(内巻き)や補助金依存、支払サイトの問題など、ビジネス
モデルの限界も見え始めており、今後の成長は海外市場での成功にかかって
います。

②テスラ(SDVの先駆者)
過去7年以上にわたりOTA(無線アップデート)による機能更新を提供し、
SDVの概念を確立しました。現在は「モノリシック・エンド・ツー・エンド」
と呼ばれる高度なAIを用いた自動運転技術(FSD)で先行していますが、中国
市場では既存モデルの陳腐化などにより、以前ほどの勢いに陰りが見られます。

3. 「出遅れた」とされるトヨタの勝算
トヨタは電動化で遅れていると批判されることもありましたが、実際には保守
的なアプローチをとることでシェアを維持・防衛してきました。トヨタの逆転
に向けた勝算は以下の4点に集約されます。
① 「Arene(アリーン)」OSによる基盤構築
2029年をターゲットに、ハードウェアとソフトウェアを切り離して制御できる
次世代OS「Arene」リカーリング(継続課金)モデルへの転換を目指しています。

②中国を「知能化の学習拠点」とする戦略
変化の速い中国市場を「学びの場」と捉え、レクサスの新エネルギー工場を上海
に設けるなど、現地で最先端のSDV開発を加速させています。
中国のエコシステム(ファーウェイやモメンタ等)を活用して開発スピードを
上げ、その知見をグローバルモデルにフィードバックする戦略です。

③「交通事故死傷者ゼロ」という独自のゴール
他社が「人より安全な自動運転」を目指す中、トヨタは「交通事故ゼロ」と
いう極めて高い目標を掲げています。ブラックボックス化しやすいAI(エンド
・ツー・エンド)だけに頼らず、ログを残して改善し続ける「安心・安全」の
ブランド力で、マスマーケットの信頼を勝ち取る構えです。

④バリューチェーンでの収益化
新車の販売利益だけでなく、金融、整備、中古車流通、エネルギー管理など、
車のライフサイクル全体(バリューチェーン)で利益を上げる構造を強化
しています。
現在すでに年間約2兆円の利益をこの領域から生み出しており、SDV化によって
この収益基盤をさらに強固にする計画です。

トヨタの戦略は、単に「EVを売る」ことではなく、車を社会インフラや生活
のエコシステムとつなげ、移動の価値そのものを再定義することにあります。
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比喩による解説
これまでの自動車競争が「より速く走るための靴の性能」を競うマラソンだっ
たとすれば、知能化時代の競争は、靴とスマホが連動して最適なコースを教え
体調まで管理してくれる「スマート・スポーツ」への転換と言えます。

トヨタは、靴(ハードウェア)の品質を守りつつ、後から最高のアプリ(ソフ
トウェア)を搭載できる仕組みを整え、街全体のインフラ(Woven Cityなど)
と連携することで、レースのルールそのものを書き換えようとしているのです。

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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