日本人が勤勉で質の高い仕事をしているにもかかわらず、なぜ生産性が低いのか?
都会のサラリーマンよりローカルリーダー/大学の9割は職業訓練校に/社会科学はAIに滅ぼされる/新しい中間層/
https://youtu.be/i0jlwHFpFs0?si=1xpH_DAn21YPcHHD
この動画では、冨山和彦氏がAI時代における10年後の日本経済の展望と、それに伴う社会構造、教育、働き方の変革について論じています。
1. 働き方の変革と地方のリーダーシップ
• 都会で中途半端なホワイトカラーとして働くよりも、ローカルリーダーになった方が良いという推奨は、AI時代においてさらに正しくなっています,。
• 従来のホワイトカラーのサラリーマンは、集団での意思決定や責任の分散(多責)に慣れており、大胆な意思決定能力や、失敗の責任をすべて負う人間力が磨かれにくい傾向があります。
• 一方、地域や小さな事業体(ローカルビジネス)では、物事を解決し、失敗の責任を最終的に負う、自立的な生き方が求められます。
• 人手不足という切実な問題があるため、特に地方のローカルビジネスでは、オーダーや生産の自動化といったフィジカル AIが急速に現場に導入されています。
2. 教育と大学の再構築
• 高等教育機関(大学)のあり方は大きく変わるべきであり、グローバル型(G型)は1割程度で良く、残りは職業訓練に近いような大学にすべきだという見解は、ますます現実味を帯びています,。
• Fランク大学なども、資格取得など職業訓練校的な方向へと移行しており、これは生活のための技能・技術を身につけるという高等教育本来の目的に照らして良い変化だとされています。
• 従来の社会科学のほとんどは、AIによって滅ぼされると予測されています,。これは、社会科学の多くが二次情報学問であり、AIによるリアルデータの解析(データ駆動)によって、より自然科学に近い形に再構築される可能性があるためです,。
• 一方、文学、哲学、歴史学といった人文科学(リベラルアーツ)の価値は上がります。リベラルアーツは単なるうんちくではなく、人間が苦難に対峙する際に普遍的な教訓を引き出す実学であり、人間としての本質的な能力(知的な高度な作業や意思決定能力)を深めるために重要だからです。
3. AIが促す企業文化の変革
• 日本の大企業に未だに残る、会議などに多くの部下を連れていく(ゾロゾロと行く)慣習は、非効率的であり、AIによるデータ処理や記録が可能になることで、5年でなくなる可能性があるとされます,。これによって、企業は販管費率を削減し、利益率を向上させることが期待されます。
• AIの時代において重要となるのは、AIを使う側のマネジメント能力や、AIに指示を出すためのプロンプト力であり、これは目的や意思決定の判断をするための知的に高度な作業です。
4. 成長戦略と新しい中間層
• 過去30年間、日本以外の世界が追求したグローバル化とデジタル化を前提とした成長モデルは格差を生み出し、日本がこれから追うべきモデルではありません。
• AIはホワイトカラーを代替しますが、ブルーカラー(現場労働者)にとっては保管剤となります。
• 日本は、AIを徹底的に活用し、人手不足の領域で生産性を高め、賃金を向上させることで、アドバンスエッセンシャルワーカーや、ライトブルーワーカーと呼ばれる新しい中間層を再生させる機会を持っています。
• AIモードの産業革命は、IT革命の時とは異なり、日本に「めちゃめちゃフィットしている」と見られています。
• 日本の圧倒的な比較優位性は、複雑で不定形のオペレーションを、極めて高い再現性で真面目にやりきる組織能力(フィジカルAIや、ソフトとハードと人間の「すり合わせ」)にあります,。この能力は、海外では容易に真似できない資産です。
• 日本は、自国で技術を発明すること(技術から入ること)にこだわるのではなく、世界中で生まれているイノベーションを「借り物競争」として使い倒し、その技術を使って新しい経済価値を生み出す「使う側のイノベーション」を追うべきです,。
5. 初中等教育の現状
• 日本の初頭中等教育モデルは、言語能力(自然言語と数理言語)を鍛えており、成功していると評価されています,。
• ただし、唯一の欠点は、国語教育が論理や理論ではなく、登場人物の気持ちを問うような情緒国語に偏っている点であり、論理言語力を強化すべきだとされています,。
このAI革命の時代は、特に若い人々にとって、これまでの常識を覆し、大きなチャンスがある時代だと結論づけられています,。
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補足としての比喩: AIと新しい成長戦略の関係は、例えるならば、これまで手動で行っていた高度な精密作業を、高性能な電動工具(AI)を誰もが手に入れた状態に似ています。
重要なのは、道具を発明することではなく、その電動工具を使いこなし、いかに緻密で質の高い「作品」(サービスやオペレーション)を生み出すかという、道具を使う側の技能と目的意識(プロンプト力)にかかっているということです,。



