IT・デジタル化の遅れが食品工場にもたらすリスク:食の安心・安全を目指す食品工場の品質管理

濱田金男

濱田金男

テーマ:製造業の正しい品質管理手法

IT・デジタル化の遅れは、食品工場において様々なリスクを高める可能性
があります。
食品工場のIT、デジタル化とは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して
製造プロセスや業務フローの効率化を図る取り組みを指します。

1.食品工場のIT/デジタル化取り組み状況
これらの取り組みは、人手不足や食品ロスなどの課題の解決、生産性の
向上、工場での一貫管理、人的ミスの抑制、 サービスへの付加価値向上
が期待できます。

ただし、多くの食品工場ではコストの負担が大きいため、DX導入がなか
なか進みません。特に小規模な食品工場にとって、高額な初期投資は財政
的に大きな負担となります。

農林水産省の調査報告によると、売上高100億円以上の企業では54.9%の
企業がIoT・デジタル技術を活用しているのに対し、売上高10~100億円
未満の企業では、わずか31.8%に留まっています。

2.リスクを高める要因について詳しく解説
(1)食品事故発生時の対応の遅延
食品事故発生時に、原因究明や製品回収を迅速に行うためには、正確な
履歴情報の把握が不可欠です。しかし、紙ベースでの管理やシステム化
が不十分な場合、情報収集に時間がかかり、対応が遅れてしまう可能性
があります。
これは、被害の拡大や風評被害の深刻化に繋がりかねません。

(2)食品の安全性・品質の低下
IT・デジタル化を活用することで、製造工程における温度、湿度、時間
などの管理を自動化し、記録することができます。
しかし、これらの管理が手作業で行われている場合、人為的なミスが発生
しやすく、食品の安全性や品質が損なわれるリスクがあります。

(3)コンプライアンス違反のリスク増加
食品表示やアレルゲン情報など、消費者に提供する情報は正確でなければ
なりません。手作業での管理は、誤表示や情報漏洩のリスクを高めます。
また、法改正への対応が遅れる可能性もあります。

(4)競争力低下
消費者ニーズの多様化や競争激化が進む中、食品工場には、効率的な
生産体制や迅速な情報提供が求められます。
IT・デジタル化の遅れは、これらのニーズに対応することを難しくし、
競争力を低下させる可能性があります。

以上述べた通り、IT・デジタル化を積極的に推進することで、食品工場
はこれらのリスクを低減し、安全・安心な食品を提供することができます。

2.食品工場におけるIT/デジタル化の遅れに対する解決策
食品工場のIT/デジタル化の遅れは、人手不足や食品ロス、品質管理など
の様々な課題解決を遅らせる要因となっています。 しかし、コストや人材
不足など、多くの食品工場で導入が進まない現状があります。
そこで、以下に具体的な解決策と事例をご紹介します。

(1)低コストで導入しやすいツールを活用する
高額な初期投資や複雑なシステムは、特に中小規模の工場にとって大きな
負担となります。
そこで、誰でも簡単に使える、リーズナブルな価格のツールを導入する
ことで、コストを抑えながらデジタル化を進めることができます。

事例1: 動画マニュアル作成ツールで、スマホで撮影した動画から簡単に
マニュアルを作成できるツールを導入します。多言語翻訳機能も搭載して
おり、外国人労働者への教育にも役立ちます。

事例2:帳票のデジタル化、記録、承認を簡単に行えるツールを導入します。
異常値アラート機能など、品質管理に役立つ機能も備えています。

以上により、教育工数の削減、技術伝承の促進、品質管理の向上、業務
効率化などが期待できます。

(2)業務プロセスを見直し、段階的に導入を進める
全社的なシステム導入は、費用も時間もかかり、現場の抵抗も大きくなる
ため、まずは、紙ベースで行っている業務の中で、デジタル化による効果
が大きいものから着手します。

事例1: 生産スケジュール、教育資料、勤怠管理、品質管理記録など、紙
ベースの書類や記録をデジタル化することで、業務効率化、情報共有の
促進、ペーパーレス化によるコスト削減などが図れます。

事例2: 倉庫管理システムを導入し、商品情報をバーコードで管理する
ことで、商品を探す手間や誤配送を減らし、コスト削減につなげること
ができます。

以上により、業務効率化、コスト削減、人為的ミスの削減、データに
基づいた分析が可能になるなど、段階的に成果を積み重ねることで、
更なるデジタル化への理解と推進力を得られます。

(3)デジタル人材の育成と外部リソースの活用
デジタル技術を使いこなせる人材が不足していることが、デジタル化推進
の大きな障壁となっています。
そこで、社内での人材育成と並行して、外部の専門家やサービスを活用
することで、不足するスキルやノウハウを補うことができます。

事例1: 社員研修: デジタル化推進に必要な知識やスキルを習得するため
の研修を実施します。外部の研修機関を利用したり、オンライン学習
プラットフォームを活用したりする方法があります。

事例2:システム導入のコンサルティング、システム開発、運用サポート
などをSIerに委託します。専門知識を持つSIerに任せることで、効率的
なシステム構築が可能になります。

以上により、デジタル化推進に必要な知識やスキルを身につけた人材を
育成することで、社内推進体制を強化できます。

(4)食品工場における成功事例を参考にする
具体的な導入方法や効果がイメージできないことが、デジタル化への躊躇
に繋がります。
そこで、他の食品工場の成功事例を参考に、自社に合った略を立てること
ができます。

(5)補助金の活用
食品工場のデジタル化推進には、様々な補助金制度が用意されています。
これらの制度を活用することで、導入コストを抑制することができます。

具体的な補助金制度については、経済産業省や農林水産省のウェブサイト
などを参照してください。
食品工場におけるIT/デジタル化は、もはや避けて通れない課題です。
これらの解決策を参考に、段階的に導入を進めることで、安全・安心な
食品の提供と、企業の成長を実現できるでしょう。

 高崎ものづくり技術研究所では、社員の皆さんと一緒に工場の仕組みを
 考えたり社員向け講習会を行ったり、品質向上のお手伝いをしております。
 また、「若手社員グループ学習」「熟練技術の見える化」「AI活用業務効率化」
 などの個別案件についてもご相談をお受けしております。
  ★お問い合わせは <こちらから

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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