良く起きがちな工場のクレーム問題「未加工品混入」に対するAI・デジタル化対策案
「どうしてまた同じミスをしたんだ!」「もっと注意しろと言っただろう!」
工場の現場で、このような怒声が響いていませんか? あるいは、ミスが発生するたびに「再教育」という名目で、作業者にマニュアルを読み直させ、反省文を書かせて終わりにしていないでしょうか。
はっきり申し上げます。「不注意」を原因にしている限り、そのミスは必ず再発します。
人間はミスをする生き物です。疲れていれば判断力は鈍りますし、悩み事があれば集中力は落ちます。それは「たるんでいる」からではなく、人間の脳の仕様です。 したがって、私たち管理・監督者が目指すべきは、「ミスをしない人間をつくる」ことではなく、「ミスが起きにくい、あるいはミスをしても大事に至らない仕組みをつくる」ことです。
今回は、現場を守る「監督者」と「管理者」が、それぞれの立場で明日から実行できる具体的なアプローチをご紹介します。
1. 現場監督者(職長・リーダー)への提言
「人の顔色」ではなく「変化点(4M+3H)」を見よ
現場の最前線に立つ皆さんの役割は、作業者の精神状態を監視することではありません。「いつもと違うこと(変化点)」をいち早く察知し、先手を打つことです。
事故や不良の多くは、定常状態ではなく、何かが変化したタイミングで発生します。精神論ではなく、以下のフレームワークを使って「物理的な変化」を管理してください。
●4Mで変化を捉える
Man(人): 今日は応援者が入っていないか? 新人はいないか?
Machine(設備): 昨日の修理明けの機械はないか? 異音はしていないか?
Material(材料): ロットが変わっていないか? 部品メーカーが変わっていないか?
Method(方法): 手順の変更や、タクトタイムの変更はないか?
●魔の「3H」をマークする
初めて(Hajimete): 初めて扱う製品、初めての作業者。
久しぶり(Hisashiburi): 久しぶりの生産ロット、休暇明けの作業者。
変更(Henkou): 設計変更、手順変更があった箇所。
●明日からのアクション
朝礼で「今日はみんな頑張ろう」と言う代わりに、「今日の3H(変化点)はここだ。だからこの工程を重点的にケアしよう」と具体的に指示を出してください。変化点ボードを活用し、リスクを可視化するだけで、現場の「気づき」のレベルは劇的に向上します。
2. 現場管理者(課長・マネージャー)への提言
「個人の責任」を問うな、「プロセスの穴」を塞げ
もし、監督者が「変化点管理」で防ぎきれないミスが多発しているなら、それは現場の責任ではありません。その工程を設計し、リソースを配分している管理者の責任、つまり「仕組み」の敗北です。
管理者の仕事は、現場が気合を入れなくても品質が守れる「レール」を敷くことです。
●QAネットワーク(品質保証の網)を張り巡らせる
自工程でミスが起きても、次工程に行く前に必ず止まる仕組みになっていますか? 「作業者が確認する」という工程は、信頼できる保証ではありません。ポカヨケ(物理的な制約)や自動検査機を導入し、「人間がミスをしようとしてもできない」環境への投資を経営層に提言するのがあなたの仕事です。
●SOP(標準作業手順書)を疑う
ミスをした作業者を責める前に、その手順書を自分でやってみてください。 「判断に迷う表現」や「記憶に頼る作業」がありませんか? 使いにくいマニュアルを放置して「ルールを守れ」と言うのは、管理者の怠慢です。現場からの「やりにくい」という声を、改善の宝として歓迎してください。
3. 結論:心理的安全性が現場を救う
最後に、最も重要なことは「悪い報告こそ歓迎される文化」を作ることです。
「ミスをしたら怒られる」現場では、作業者はヒヤリとした瞬間(ニアミス)を隠すようになります。この「隠されたヒヤリハット」こそが、将来の重大事故の種です。 「報告してくれてありがとう。おかげで仕組みの欠陥が見つかった」と感謝を伝えることで、現場は初めて「本当の原因」を語ってくれるようになります。
ミスは「人」の恥ではありません。「仕組み」を強くするための貴重なデータです。 明日から、誰かを叱責する代わりに、「どの仕組み(4M)が機能しなかったのか?」をチーム全員で話し合うことから始めてみませんか?
高崎ものづくり技術研究所では、社員の皆さんと一緒に仕組みを考えたり
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