形骸化の本質と日本社会における構造的問題(4)企業と社会に蔓延る形骸化の実態と深刻な影響
こんにちは!高市政権がスタートし、「責任ある積極財政」 という言葉がニュースを賑わせています。
「金融とか財政って難しそう…」と感じるかもしれませんが、これは私たちの生活や将来に直結する、とても大切な話です。
高市総理は「財政の持続可能性は確保する」 と言っていますが、経済界からは「ちょっと待った!」という声も聞こえてきます 。
この記事では、高市総理が目指す「未来の日本」とはどんな姿なのか、かつてのアベノミクスや経済界が求める「規制緩和」と何が違うのか、そしてどんな「リスク」があるのかを、分かりやすく解説します!
高市総理の「責任ある積極財政」って、結局なに?
高市総理の経済政策のキーワードは「経済あっての財政」 です。
これは、「まず経済を力強く成長させることが最優先。経済が育てば、税率を上げなくても税収は自然に増えるでしょ?」という考え方です 。
そのために「戦略的に財政出動を行う」 としています。 「財政出動」と聞くと「バラマキ?」と心配になるかもしれませんが、高市総理がやろうとしているのは「危機管理投資」 と名付けた、未来への「戦略的な投資」です。
具体的には、以下の5つの分野に国が積極的にお金を使い、経済を引っ張っていこうとしています 。
①経済安全保障(半導体やAIなど、重要な技術を守り育てる)
②食料安全保障(食料を海外に頼りすぎず、国内で作れるようにする)
③エネルギー安全保障(次世代原発などでエネルギー自給率を上げる)
④健康医療安全保障(医薬品や医療体制を国内で確保する)
⑤国土強靱化(災害に強い国づくり)
これらは「国家の危機」に関わる分野だからこそ、国が主導して投資すべき、というのが高市流のロジックです。
アベノミクスとの「違い」と「同じところ」
高市総理の戦略は、安倍政権時代の「アベノミクス」と比べると、違いがハッキリします。
アベノミクスには「3本の矢」がありました。
第1の矢:大胆な金融緩和(日銀がお金をたくさん市場に流す)
第2の矢:機動的な財政出動(公共事業など)
第3の矢:成長戦略(規制緩和や構造改革)
高市戦略は、第1の矢(金融緩和)と第2の矢(財政出動)は、基本的に引き継ぐ姿勢です 。特に金融政策については、日銀に対して「まだデフレ脱却は終わっていない」という立場で、利上げを牽制し、できるだけ金融緩和(低金利)を続けてほしい、という暗黙のメッセージを送っています 。
決定的な違いは、「第3の矢(成長戦略)」の考え方です。
アベノミクスの第3の矢(供給側の改革) これは「規制緩和」や「構造改革」が中心でした。 例えるなら、「民間の皆さん、走りにくいでしょうから、道の障害物(規制)を取り除きますよ!さあ、自由に走って経済を成長させてください!」というアプローチです。
高市戦略の第3の矢(需要側の政策) こちらは「政府主導の投資」が中心です。 例えるなら、「国がまずAI、半導体、宇宙など(17の戦略分野 )で大きなプロジェクト(需要=仕事)を作りますよ!民間の皆さんも、これを見て『儲かりそうだ』と判断して、一緒に投資して走りましょう!」というアプローチです 。
つまり、アベノミクスが「民間の自主性(規制緩和)」に期待したのに対し、高市戦略は「国家の主導力(公的投資)」で経済を引っ張ろうとしている点が最大の違いです。
経済界との「ねじれ」— なぜ意見が合わない?
この「国家主導」の戦略に、経済界(経団連など)は必ずしも全面的に賛成しているわけではありません。ここに「ねじれ」が生じています。
経済界のホンネはこうです。 「政府がAIや半導体に投資してくれるのは歓迎だ。しかし、日本経済が本当に復活するために必要なのは、それだけじゃない」 。
経済界が本当に求めているのは、アベノミクスが目指したような、痛みを伴う「構造改革」です 。具体的には、
①労働改革(人がもっと自由に会社を移れるようにする)
②税・財政・社会保障の一体改革(将来の不安をなくす)
などを強く求めています 。
なぜ意見が「ねじれ」るのでしょうか?
●経済界の言い分
先に『構造改革』(走りやすい道)を整備してくれ。そうすれば将来不安も減り、我々(民間)も安心して投資して走るよ
●高市政権の言い分
いや、先に国が『危機管理投資』(大きな需要)を作る。それを見て景気が良くなれば、民間も安心して投資するようになるはずだ
まさに「鶏が先か、卵が先か」の議論になっているのです。
高市総理が目指す「未来の日本」と「リスク」
では、高市総理は、この戦略でどんな未来を作ろうとしているのでしょうか?
目指す未来像:「強く、豊かな日本」の再起
スローガンである「日本再起」 の通り、目指すのは「強い経済」 を取り戻した日本の姿です。
国家主導の産業ルネサンス: AI、半導体、宇宙、防衛といったハイテク分野 に国が集中投資し、再び日本が世界の技術をリードする姿を目指します。
自給できる国: 食料 やエネルギー(原発推進を含む )、医薬品を過度に海外に頼らず、国内でまかなえる「安全保障が確立された国」を目指します。
地方の活性化: 岸田政権の「デジタル田園都市国家構想」 の基盤も活かしつつ、国がインフラ投資などを支援し、地方に「半導体の町」「AI研究の町」といった「産業クラスター」を作る「地域未来戦略」を進めます 。
リスクと、その「軽減策」(政権のロジック)
もちろん、これだけ国がお金を使えばリスクもあります。 最大の懸念は、「財政出動しすぎて、借金だけが膨れ上がり、制御不能なインフレや金利上昇(悪い円安)を招いてしまうのではないか?」という点です 。
このリスクに対し、高市政権はこう説明しています。
「責任ある」投資: これは単なるバラマキではなく、「危機管理」という未来に必要な戦略分野に投資を絞っているため「責任ある」財政だ、と主張しています 。
「成長による税収増」の好循環: 政権のロジックはこうです。 (1) 国が投資する → (2) 所得が増える → (3) 消費が改善する → (4) 企業の収益が上がる → (5) 結果として(税率を上げなくても)税収が増える 。
借金の比率を下げる: この好循環が回り、「経済成長率」が「借金の伸び率」を上回れば、国のGDP(経済規模)に対する借金の「比率」は下がっていく。これが「財政の持続可能性」だ、としています 。
まとめ:高市戦略は「大きな賭け」
高市総理の成長戦略は、アベノミクス時代の「規制緩和」中心の考え方から、「国家が主導して需要(仕事)を作る」という、ある意味で戦後の高度経済成長期のようなスタイルへの大きな方向転換です 。
成功すれば… 政府の投資が呼び水となり、経済界が求める「構造改革」も進み、民間投資が活発化する。そして、AIや半導体といったハイテク産業が復活する「強い日本」が実現するかもしれません。
失敗すれば… 政府が投資しても民間がついてこず、経済界との「ねじれ」も解消できないまま、一時的な景気刺激に終わり、後に巨額の借金だけが残る…というリスクも指摘されています 。
この「大きな賭け」が、私たちの未来をどう変えるのか。経済界とのズレをどう乗り越えていくのか、しっかり注目していく必要がありそうです。



