製造業の若手設計者・技術者のためのオンデマンドセミナー:ものづくりドットコム
熟練技能の継承を確実に行うための作業手順書作成・運用戦略は、単に作業手順を記述するだけでなく、熟練者の「暗黙知」(勘やコツ)をいかに「形式知」に変換し、組織全体で共有・活用できるかが鍵となります 。
●作成戦略:ノウハウを「見える化」する
目的と背景(Know-Why)の明記
各作業ステップが「なぜ」必要なのか、その目的や背景、守らない場合に起こりうる不具合などを具体的に記述します 。これにより、作業者は手順の意図を理解し、重要性を認識できます 。
「勘・コツ」の言語化・視覚化
熟練者の作業を動画で撮影し、スロー再生や静止画、注釈などを活用して、微妙な手の動き、力加減、判断のタイミング、音や見た目の変化などを捉えます 。
「〇〇な音がするまで」「表面が△△色になったら」のように、五感で感じ取れる判断基準を具体的に示します。
センサー技術やVR(仮想現実)を活用し、力のかかり具合や動きの軌跡などをデータ化・可視化することも有効です 。
作業分解とキーポイントの抽出
熟練作業を観察し、基本ステップに分解します 。
各ステップで特に重要となる「急所(キーポイント)」と「その理由」を明確に洗い出します 。これはTWI-JI(仕事の教え方)の考え方に基づいています 。
過去トラブル(過去トラ)の反映
過去に発生した不具合やヒヤリハットの事例を分析し、その原因と対策を作業手順書に具体的に盛り込みます 。これにより、同じ失敗の再発防止に繋がります 。
熟練者の参画
手順書の作成・レビュープロセスには、必ず熟練者本人に参加してもらい、内容の正確性やニュアンスを確認します 。
●運用戦略:「生きた手順書」にする
教育訓練(OJT)との連動
手順書を渡すだけでなく、TWI-JIなどの標準化された指導法を用いて、熟練者がOJTで直接指導する機会を設けます 。手順書と実地指導を組み合わせることで、理解が深まります。
デジタル化によるアクセス性向上
手順書(特に動画マニュアル)は、クラウドや社内ポータルサイトで管理し、現場のタブレットやスマートフォンからいつでも簡単にアクセスできるようにします 。QRコードを活用すると便利です 。
フィードバックと継続的改善
現場の作業者が手順書の分かりにくい点や改善提案を気軽にフィードバックできる仕組みを設けます 。
管理者による定期的な現場モニタリングを行い、手順書と実際の作業との乖離がないか確認し、必要に応じて迅速に手順書を更新します 。
ナレッジマネジメントシステムとの連携
手順書だけでなく、関連する技術情報、過去のトラブルシューティング記録、改善事例などを一元的に管理・検索できるナレッジデータベースを構築します 。AIを活用して、必要な情報を効率的に検索・抽出することも可能です 。
これらの戦略を実行することで、作業手順書は単なる指示書を超え、熟練技能を組織全体に確実に継承し、継続的な改善を促すための強力なツールとなります



