品質工学(タグチメソッド)のパラメータ設計を簡単に説明します。
トヨタ生産方式で生まれたポカヨケとエラープルーフは、どちらも人間の「うっかりミス」を防ぎ、品質を確保するための重要な考え方です。これらは非常に似ていますが、ポカヨケは具体的な「仕組みや装置」、エラープルーフはより広い「設計思想」と捉えると理解しやすくなります。
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● ポカヨケ:ミスを物理的に防ぐ「仕組み」
ポカヨケは、作業者が意識しなくても、あるいは間違えようとしてもミスができないようにする具体的な仕組みや装置のことです。「ポカ(うっかりミス)」を「ヨケる(避ける)」という言葉通り、物理的な制約を設けることでヒューマンエラーを未然に防ぎます。
これは、1960年代にトヨタ自動車の生産コンサルタントであった新郷重夫氏によって考案され、「品質は検査で作るのではなく、工程で作り込む」という思想に基づいています。
ポカヨケの主な目的
・不良品の発生防止: 間違った部品の組み付けや、作業のし忘れなどを物理的に不可能にし、不良品が後工程へ流出するのを防ぎます。
・作業の標準化: 誰が作業しても同じ品質を保てるようにします。
・安全の確保: 危険な操作ができないようにし、労働災害を防ぎます。
具体例
・形状による対策: USBメモリのように、決まった向きでしか差し込めない形状にする。
・センサーによる検知: 部品をセットし忘れたり、手順を間違えたりするとセンサーが検知し、アラームを鳴らしたり、機械を停止させたりする。トヨタの工場では、規定のトルクでボルトを締めるとランプが点灯する仕組みが有名です。
・治具の使用: 部品をセットする専用のトレイ(治具)を用意し、全ての部品を使わないと次の工程に進めないようにする。
・アンドン(行灯): 異常が発生した際に作業者がヒモを引くとランプが点灯し、管理者や他の作業者に異常を知らせるシステム。
●エラープルーフ:ミスを防ぐ「設計思想」
エラープルーフは、ポカヨケよりも広い概念で、「エラー(ミス)が発生しないように、または発生してもその影響を最小限に抑えるように、あらかじめ製品や工程を設計する」という考え方そのものを指します。
つまり、ポカヨケはエラープルーフという設計思想を実現するための、非常に効果的な手法の一つと言えます。
エラープルーフの考え方
エラープルーフは、ミスを防止するためのアプローチを体系的に捉えます。
・排除: ミスの原因となる作業そのものをなくす。(例:自動化)
・代替: 人の作業を、よりミスの少ない機械やシステムに置き換える。
・容易化: 作業をより簡単に、間違いにくくする。(ポカヨケはこの部分で大きく貢献します)
・異常検出: ミスが発生したらすぐに検知できるようにする。(例:警告ランプ)
・影響緩和: ミスが発生しても、被害が大きくならないようにする。(例:アイロンが倒れたら自動で電源が切れる機能)
日常生活におけるエラープルーフの例
・電子レンジ: ドアが完全に閉まらないと作動しない。
・ATM: カードや現金を取り忘れると、音声やブザーで知らせてくれる。
・自動車: シフトレバーが「P(パーキング)」に入っていないとエンジンキーが抜けない。
●まとめ
ポカヨケエラープルーフ
結論として、「ポカヨケ」と「エラープルーフ」はほぼ同じ目的を共有しており、厳密に区別されないこともあります。
重要なのは、「人は必ずミスをする」という前提に立ち、個人の注意力に頼るのではなく、ミスが起こらない(または起こっても問題にならない)「仕組み」を構築するという思想です。この考え方は、製造業だけでなく、医療、IT、さらには私たちの日常生活の安全と品質を支える上で不可欠なものとなっています。



