形骸化の本質と日本社会における構造的問題(3)なぜ、形骸化は起こるのか?その構造的要因の分析

濱田金男

濱田金男

テーマ:日本の未来を考える

第2部:なぜ、形骸化は起こるのか?その構造的要因の分析
形骸化は、個人の怠慢や能力不足によって引き起こされるのではなく、組織的、文化的な構造に深く根ざした複数の要因が複雑に絡み合った結果として生じる。この章では、形骸化の根本原因を、その背景にある文化的特性を含めて多角的に分析する。
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2.1. 根本的な4つの原因
形骸化の発生には、主に以下の4つの原因が複合的に作用している。

原因1:目的意識の喪失と未共有
新しい制度や業務が導入された当初は目的が明確であっても、時間の経過、担当者の異動、組織の変更などによって、その本来の目的意識が薄れていく 。管理層や導入者が目的を理解していても、現場の担当者や新入社員にその背景や意図が適切に伝承されないケースが多く見られる 。

その結果、「なぜこの業務が必要なのか」という問いが忘れ去られ、単なる手続きとして反復されるようになる。これは、組織の活動がその存在意義を失っていく第一歩である。  

原因2:環境変化への不適応と慣習墨守
時代や市場、技術の変化により、過去に有効だった制度や業務が、現在の状況に合わなくなることは必然的に起こる 。しかし、多くの日本企業や行政には、「一度決めたら安易に変更しない」という硬直的な文化が根強く存在し、これがルールの陳腐化を放置する原因となる 。

特に、公務員組織に多く見られる「失敗できない文化」は、過去の事例をそのまま踏襲する「前例踏襲主義」を生み、押印や紙媒体でのやり取りなど、本来は改善可能な業務プロセスの見直しを遅らせる 。これにより、組織は変化の潮流から取り残され、住民ニーズとの乖離を招いてしまう。  

原因3:手段の目的化と形式主義
業務や制度の「遂行」自体が目的となり、本来の目的である「成果」や「価値創出」が忘れられる状態は、形骸化の最も典型的な兆候である 。報告書は「提出すること」が目的となり、その内容が読まれているかは問題にならなくなる。会議は「開催すること」が目的となり、建設的な議論は生まれず、参加者が顔を合わせるだけで終わってしまう 。

また、マニュアルが現場の実情と乖離しているにもかかわらず、それに従うことが責任回避の手段として認識されるようになると、形骸化はさらに加速する 。  

原因4:組織のコミュニケーション不全と現状維持バイアス
形骸化は、組織内のコミュニケーションが機能不全に陥っていることの明確なサインでもある。会議で誰も発言せず、疑義があっても相談がされにくい職場状況は、組織の課題を可視化する機会を奪う 。また、組織全体に「現状維持でよい」という空気や、変化への抵抗感が蔓延していると、新しいアイデアや業務プロセスの改善提案が埋もれてしまう。これは、特に日本企業に根付く「非効率な商習慣」が温存される主要因となり、形骸化を慢性的な問題へと悪化させる。  

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