【従業員の皆様へ】見逃し厳禁!製造不良がもたらす損失と効果的な管理術
動的環境の管理:変更管理とサプライヤー品質
品質は静的な状態ではない。生産環境の変化やサプライチェーンにおけるばらつきによって、常に脅威にさらされている。堅牢なQAネットワークは、このダイナミズムを管理する仕組みを内包していなければならない。
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4M変更管理
4M(Man: 人、Machine: 機械、Material: 材料、Method: 方法)は、製造現場における品質に影響を与える4大要素である。4M変更管理とは、これらの要素に変更が生じた際に、その変更が品質に悪影響を及ぼさないよう、体系的に管理する取り組みである 。
変更管理のプロセスは、まず変更点を特定することから始まる。作業者の交代(Man)、設備の更新(Machine)、材料の仕入先変更(Material)、作業手順の改訂(Method)などがその例である 。次に、その変更が品質、効率、安全性に与える影響を予測し、リスクを評価する 。そして、具体的な変更計画を立案・実施し、最終的に変更後の結果を評価して、品質が維持・向上されたことを検証する 。
いかなる4M変更も、特に製品の品質に直接影響を与える可能性のある「重要変更」は、関連するFMEAおよびQAネットワークのレビューと更新を必須とするトリガーとなるべきである 。例えば、主要原材料の供給元を変更する場合(Materialの変更)、受入検査基準や工程パラメータの再検証が必要となり、その結果はQAネットワークに明確に反映されなければならない。
この文脈において、QAネットワークは単なる計画書ではなく、品質に関する一種の「契約書」として機能する。4M変更管理プロセスは、この契約の根幹を成す条件が変更される際に、契約書を正式に改訂し、再承認する手続きを保証するものである。これにより、非公式あるいは文書化されていない変更が、未評価のリスクを工程に持ち込むことを防ぐ。
変更が発生すると、4M変更管理手順が発動され、PFMEAやQAネットワークといった関連文書の更新が要求される。チームは、新しい条件が既存の故障モードの発生や検出にどう影響するかを正式に評価しなければならない。このように、QAネットワークは品質ゲートとしての役割を果たし、変更がもたらす品質への影響が、変更の本格的な実施前に十分に検討され、管理されることを保証するのである。
サプライヤー品質マネジメント
現代の製造業において、サプライチェーンは自社工場の延長線上にあると捉えるべきである。最終製品の品質は、購入する部品や材料の品質に根本的に依存している 。したがって、サプライヤーからもたらされる情報は、QAネットワークの重要な構成要素となる。
主要な情報源には以下のようなものがある。
・サプライヤーの選定と監査: 新規サプライヤーを選定する際の品質マネジメントシステム(例:ISO 9001やIATF 16494への準拠状況)の監査や、継続的な取引における定期的な監査から得られる情報 。
・生産部品承認プロセス (PPAP): サプライヤーが量産開始前に、自社の製造工程が全ての設計・品質要求事項を満たしていることを客観的な証拠をもって提出する包括的なプロセス。PPAPは、後述するAPQPプロセスの重要なアウトプットの一つである 。
・受入検査とデータ共有: 購入部品や材料の受入検査から得られるデータ、材料分析証明書、そしてサプライヤーとリアルタイムで品質情報を共有するための協調プラットフォームからの情報 。
これらの情報は、QAネットワークの「受入」や「受入検査」工程の管理方法を具体的に定義するために使用される。検査のレベル(例:全数検査、抜取検査、無検査)や確認すべき特性は、その部品の重要度や、サプライヤーがPPAPや継続的な納入実績を通じて証明してきた品質レベルに基づいて決定される。
サプライヤーの品質データを自社のQAネットワークに直接統合することは、従来の「取り締まり型」の品質管理から、より協調的な「パートナーシップ型」への移行を促す。受入検査という最終防衛ラインに頼るのではなく、重要特性や工程能力に関する理解をサプライヤーと共有するのである。
サプライヤーが提出したPPAPデータ(彼ら自身のSPCやFMEAの結果を含む)が、発注側のQAネットワークの情報源として活用される時、それは信頼と透明性の証となる。対話の焦点は、「なぜ不良品を送ってきたのか?」から、「我々双方が重要だと合意したこの特性を、下流工程で問題が発生しないように、あなたの工場でいかに効果的に管理できるか?」へと変化する。このようなプロアクティブでリスクを共有するモデルは、はるかに効率的で効果的な品質保証を実現する。



