新規開拓が困難な3つの背景!しっかりした会社になるためには?「短納期」「高品質」「小ロット対応」では世の中通用しない
「長年の付き合いがある、あの会社からの仕事が減ってきた…」
「新規開拓をしたいが、従来のやり方では門前払いだ…」
「EV化のニュースを見るたび、うちの会社の将来が不安になる…」
社長として、このような悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。特に、自動車部品の受注加工などを手掛ける中小製造業の経営環境は、まさに地殻変動の真っ只中にあります。
「CASE」という言葉に代表される自動車業界の大変革、特にEV(電気自動車)へのシフトは、もはや対岸の火事ではありません 。エンジン関連部品の需要は構造的になくなり、完成車メーカーを頂点とした「系列」ピラミッドも過去のものとなりつつあります 。
「うちには高い技術力がある」――。
その自信は、間違いなく貴社の誇りです。しかし、その技術を今までと同じ市場、同じ顧客にだけ向け続けていて、本当に10年後も会社は存続できるでしょうか?
この記事は、そんな強い危機感をお持ちの社長様のために書きました。外部環境の変化を嘆くのではなく、それを好機と捉え、会社の未来を自らの手で切り拓くための具体的なステップをご紹介します。答えは、意外にも貴社の「中」に眠っているのです。
★ステップ1:まず、自社の「お宝」を掘り起こす
新しい事業の種を探して、闇雲に外部の展示会に足を運んでいませんか?その前に、やるべきことがあります。それは、自社の中に眠る「お宝=本当の強み」を徹底的に掘り起こし、誰にでもわかる形に「見える化」することです。
貴社の本当の資産は、立派な工作機械だけではありません。ベテラン職人が持つ「勘」や「コツ」、過去に納品した何万という製品の図面、山積みの作業日報――。これらの中にこそ、未来を切り拓くヒントが詰まっています 。
●「暗黙知」を「形式知」へ
まずは、ベテラン社員の頭の中にしかない「暗黙知」を、誰もが共有できる「形式知」に変えることから始めましょう 。
熟練工の作業をスマホで撮影し、解説を加えて動画マニュアルにする 。
なぜその加工方法を選んだのか、なぜその手順なのか、ベテランにインタビューして判断プロセスを文書化する。
過去の不良品データを分析し、成功パターンと失敗パターンを体系化する 。
こうした地道な作業が、個人の技に依存していた貴社の強みを、組織全体の揺るぎない資産へと変えていくのです。
●自社の技術を「翻訳」する
次に、掘り起こした技術を「翻訳」してみましょう。例えば、貴社が「自動車用エンジンブラケットの精密プレス加工」を得意としているとします。これを、業界用語を使わずに表現するとどうなるでしょうか?
「金属を、軽量かつ高剛性な複雑形状に、ミクロン単位の精度で大量生産する技術」
このように「何を作っているか(名詞)」ではなく、「何ができるか(動詞)」で自社の技術を棚卸しするのです 。この「技術ポートフォリオ」を作成することで、今まで考えもしなかった異業種への扉が開きます 。
★ステップ2:AI営業マンに「未知の市場」を探させる
自社の「お宝」が見えてきたら、次はその宝を欲しがっている新しい顧客を探しに行きます。しかし、人手も時間も限られる中で、どうやって?――ここで、デジタルツールの出番です。
「AIなんて、うちみたいな中小企業には関係ない」と思っていませんか?それは大きな誤解です。今や、月数万円から使えるAI搭載の営業支援ツール(SFA/CRM)は、中小企業にとって最強の武器になります 。
過去の取引データをAIに分析させ、自社の「隠れた得意分野」を発見する 。
「高精度チタン加工」といった技術キーワードで、Web上から見込み客を自動でリストアップさせる 。
AIが初期アプローチのメール文面を考え、営業活動を記録し、成約確度の高い顧客を教えてくれる 。
まるで、社長の分身である優秀な営業マンが24時間365日、文句も言わずに働いてくれるようなものです 。これまで接点のなかった医療機器や航空宇宙、ロボットといった成長産業の担当者から、ある日突然問い合わせが来る。そんな未来が、デジタルツールを使えば現実になるのです 。
★ステップ3:「魔法の公式」で事業アイデアを量産する
社内の「お宝」と、社外の「市場ニーズ」。この2つを結びつけ、具体的な事業アイデアを生み出すためのシンプルな思考法が「MFTフレームワーク」です 。
T (Technology): 自社の技術(例:精密プレス加工)
F (Function): それが提供する機能(例:金属を軽く、強く、精密に成形する)
M (Market): その機能を必要とする市場(例:ドローン、医療機器、ロボット…)
この公式に当てはめて考えるだけで、アイデアは面白いように広がっていきます 。
「軽量で剛性の高い構造」という機能(F)は…
航空宇宙分野なら、ドローンの機体フレームや小型衛星の部品になるかもしれない 。
医療機器分野なら、携帯型診断装置の筐体や手術器具の部品に使えるかもしれない 。
アウトドア分野なら、革新的なキャンプ用品が生まれるかもしれない。
実際に、金属加工の町工場がその技術を活かして立ち上げたアウトドアブランド「muraco」は、多くのファンを獲得しています 。また、自動車部品で培ったチタン加工技術を応用し、医療用のインプラント開発に成功した企業もあります 。
彼らに共通するのは、自社のコア技術という「幹」から、新しい市場という「枝葉」を論理的に広げていったことです。決して、流行りに乗って全くの畑違いの事業に手を出したわけではないのです。
明日からできる「はじめの一歩」
ここまで読んで、「うちにもできるかもしれない」と感じていただけたでしょうか。変革への道は、決して平坦ではありません。しかし、何もしなければ、会社の未来は静かに閉ざされていくだけです 。
社長である、あなたにしかこの舵は切れません。明日から、ぜひこの「はじめの一歩」を踏み出してみてください。
数名の若手・中堅社員を集め、「うちの会社のお宝探しプロジェクト」を立ち上げる。
まずはベテラン社員の作業をスマホで撮影してみる。
ホワイトボードを囲み、「うちの技術を翻訳したらどうなる?」とMFTフレームワークの練習をしてみる。
デジタル化やAIというと難しく聞こえるかもしれませんが、その本質は、これまで貴社が培ってきた貴重な資産を「見える化」し、「新しい価値」に繋げるための道具に過ぎません。
変化の波に飲み込まれるのか、それとも波に乗って新たな大海へ漕ぎ出すのか。その選択は、社長であるあなたの今日の決断にかかっています。この記事が、その勇気ある一歩を後押しできれば幸いです。



