製造業で使える DVD版:教育マニュアル(品質向上、生産性向上、DX推進)の紹介
製造現場で働いていると、「あれ?この製品、傷があるぞ…」「なんだか動かない
部品があるんだけど…」なんて不良品に遭遇することは日常茶飯事ですよね。
特に、パッと見てわかるような「傷」や「変形」といった物理的な不良は、どうし
て発生したんだろう?と頭を悩ませるものです。
でも大丈夫!実は、不良品の原因を特定するための、まるで探偵のような「型」が
あるんです。今回は、製造現場の初心者さんでも分かりやすいように、その「探偵
術」をステップごとにご紹介します。
●ステップ1:不良品をよーく観察しよう!「現場・現物・現実」の三現主義
不良の原因を探る上で、まず一番大切なのが「三現主義」です。難しそうに聞こえ
ますが、要は「不良が出ているその場所(現場)に行って、実際に不良品(現物)
を見て、何が起きているか(現実)を把握する」ということ。これがすべてのスタ
ートです。
●不良品を見つけたら、まず隔離!
これ以上、不良品が次の工程やお客様のところに流れていかないように、すぐに
取り除きましょう。そして、どのロットの、いつ作った、どの設備で、誰が作った
製品なのか、できる限り細かくメモしておきましょう。
・不良品をまじまじと観察!
・傷の形はどう?(線?点?広がりがある?)
・傷の深さはどれくらい?
・傷は製品のどこについている?(特定の場所だけ?全体的に?)
・どれくらいの頻度で発生してる?(いつも?たまに?)
・不良品は何個くらいある?
もし可能なら、傷がどの方向についているか?(加工の向きと関係ありそう?)
良い製品と不良品を並べて比較するのもおすすめです。何が違うのか、目で見て
感じることが大切です。
周りの情報を集めよう!「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」
「不良品が出た!」という情報だけでなく、その背景にある情報も集めます。
・いつから不良が出始めた?
・どのどの工程で、どの機械で出ている?
・その時、誰が作業していた?
・どんなどんな材料を使っていた?
・どんな作業をしている時に出た?
その時の機械の条件(速さ、温度など)はどうだった?
機械の点検記録や、使った工具の情報などもヒントになりますよ。
●ステップ2:怪しい容疑者を絞り込もう!「人・機械・材料・方法・環境」
たくさんの情報が集まったら、次は「もしかしてこれが原因かも?」という容疑
者(原因候補)を絞り込みます。製造現場では、よく「4M+1E」という考え方
を使います。
・Man(人):作業者の手順ミス、うっかりミス、知識不足など
・Machine(機械):機械の故障、摩耗、ズレ、汚れなど
・Material(材料):材料そのものの品質不良、異物混入など
・Method(方法):作業手順の間違い、加工条件の設定ミスなど
・Environment(環境):温度、湿度、ホコリ、振動など
集めた情報をもとに、「この傷は、もしかしたら作業者がぶつけた時にできたの
かも…?」とか、「いや、機械がガタガタ動いてるから、それが原因で傷がつい
たのかも…?」など、具体的な仮説を立ててみましょう。
例えば、加工部品の傷不良なら…
・「工具の刃が欠けているから、製品に線状の傷がついたのでは?」
・「部品を運ぶときに、他の部品とぶつかって擦り傷がついたのでは?」
・「切削油が足りなくて、摩擦熱でバリ(余分な出っ張り)ができて、それが
傷になったのでは?」
こんな風に、できるだけ具体的に考えてみましょう。
●ステップ3:探偵の腕の見せ所!仮説を検証して真犯人を特定する
仮説を立てたら、いよいよ探偵の腕の見せ所です。その仮説が本当に正しいのか、
実際に試して確認します。
実験してみよう!
「工具が原因かも」と思ったら、新しい工具に交換して試してみましょう。「加工
条件が悪いのかな」と思ったら、少し条件を変えて加工してみましょう。
「不良品がなぜ発生したのか」を意図的に再現できるか試すのも有効です。もし再
現できたら、それが原因である可能性がグッと高まります。
よーく調べてみよう!
変更した後の製品や、不良品・良品を再び詳細に調べます。必要であれば、顕微鏡
で拡大して見たり、専門の機械で表面の状態を測定したりすることもあります。
結果を評価しよう!
実験結果が、立てた仮説と一致するかどうかを判断します。
「やっぱり工具が原因だった!」となれば、真の原因が特定できたことになります。
「あれ?違ったみたい…」となれば、別の仮説を立てて、もう一度ステップ2に戻っ
て原因を絞り込みましょう。
真の原因が特定できたら、同じ不良が二度と起きないように、根本的な対策を考え
ます。一時しのぎではなく、原因そのものをなくすような対策ですよ。
例えば、「工具の交換頻度を見直す」「機械のメンテナンスを強化する」「作業手
順書を分かりやすく修正して、みんなで共有する」などです。
●ステップ4:再発防止と横展開!経験を次に活かそう
対策を実行したらそれで終わりではありません。
効果があったか確認!
対策を実施した後、しばらくの間、不良が本当に減ったか、なくなったかを継続的
にチェックしましょう。
みんなで共有して、ルール化!
効果があった対策は、それが当たり前になるように、作業手順書に盛り込んだり、
マニュアルにしたりして、ルールとして定着させます。
他の場所にも活かそう!
今回の不良の原因と対策は、もしかしたら他の製品や別のラインでも役立つかも
しれません。今回の経験を、会社全体で共有して、将来の不良を未然に防ぐこと
に繋げましょう。
いかがでしたか?製造現場での不良の原因究明は、まるでパズルを解くような、
あるいは探偵になったようなプロセスです。一つ一つのステップを丁寧に進めて
いくことで、必ず原因は見えてきます。
もしあなたの職場で不良が発生したら、ぜひこの「探偵術」を試してみてください。
きっと、不良解決の糸口が見つかるはずです!



