設計技術者として自立するには、設計初心者の心構え、学習・経験の積み方、そして設計者としての最終目標は何か?

濱田金男

濱田金男

テーマ:若手人材の育成

企業に就職した設計初心者に対し、製品設計者や部品設計者として自立するための
学習方法、心構え、そして設計者としての目標をどのように差抱ければよいかアド
バイスとなる内容をまとめました。

企業に就職した設計初心者の方が、製品設計者や部品設計者として自立し、成長し
ていくための学習方法、心構え、そして目標設定について、以下の通りアドバイス
いたします。

1. 学習方法
製品設計者として自立するためには、多岐にわたる知識と経験を体系的に習得する
ことが重要です。

• 設計の全体像の把握
まず、「設計の全体像」「設計の進め方」「設計の考え方」の3つをできるだけ早く
身につけることが推奨されます。設計は、企画部門が顧客ニーズに合った商品コンセ
プトを練り上げるところから始まり、構想設計、基本設計、詳細設計、試作評価、
量産へと進む一連のプロセスです。
この流れの中で、企画品質、設計品質、製造品質、使用品質が作り込まれます。

• 積極的な情報収集と現場の理解
 ・担当製品の実際の使用状況や運転状況を自分の目で確認する。
 ・使用者にヒアリングし、要望事項や困りごとを収集する。
 ・製造現場へ足を運び、素材・加工・組立・検査など関係各部門の意見に耳を傾ける。
 ・担当製品以外にも、世の中のあらゆる機械に目を向け、自身の設計に役立てる。
 ・顧客の要望や期待値は、下流工程に進むほど劣化・欠落する可能性があるため、
  部門間のコミュニケーションが不可欠です。

• 固有技術と管理技術の習得
 ・固有技術:設計開発や製造における差別化技術、ノウハウ、過去の成功・失敗
  事例、商品の安全性・信頼性に関わる設計・製造ノウハウなど、組織全体で共有

 ・活用できる知識と実現手段です。経験豊富な若手設計者は、まず適切な参考
  図面を選定するスキル、そして参考図面のどこまでを変更できるかを判断する
  スキルを磨く必要があります。

 ・管理技術:固有技術の蓄積と共有の仕組み、それを効率的に引き出し利用でき
  る仕組み、設計・製造現場のマネジメントシステム(工程管理、品質管理、生
  産管理など)を指します。設計プロセスにおけるインプットとアウトプットの
  記録、そして「見える化」を徹底することが重要です。

• 過去トラブル事例の活用と知識の構造化
 ・過去の不具合事例(市場クレーム、試作問題点、工程異常、再発防止設計事例
  など)は、設計の問題点を指摘し、再利用可能な知識として活用すべき情報源
  です。

 ・ただし、単に過去トラブルをデータベース化するだけでなく、不具合の発生メ
  カニズムと対処方法が、今後どのようなアイテムの設計に再利用されるべきか
  という視点を持って記述するなど、「不具合知識の構造化」を行うことが有効
  です。

 ・これにより、設計者は自分の設計に必要な知識を効率的に検索・抽出できるよ
  うになります。

• 設計審査(デザインレビュー:DR)の積極的な活用
 ・DRは、今後のトラブルを早期に発見することを目的とし、構想設計で決定した
  仕様に基づき設計結果を審査する場です。

 ・設計者自身が、何をレビューしてもらいたいのかを明確にしておく必要があり
  ます。自身の設計プロセスの説明、新規点・変更点の明示、そしてそれを採用
  した根拠や比較検討データも準備し、レビューを通じて設計の欠陥や問題の検
  出密度を高めることを意識しましょう。

 ・3次元データ(DMU機能)を活用することで、より突っ込んだ議論や、部品同
  士の干渉確認、組立順序の確認などが可能になります。

• 信頼性・安全性設計手法の習得
 ・製品の安全性は、法規制遵守だけでなく、使用者の視点に立ったリスクアセス
  メント(危険源の特定、リスクの見積もり・評価、リスク低減策の検討)を活
  用し、高めていくことが求められます。

 ・フェールセーフ(故障時に安全側に機能を停止させる)、フールプルーフ(誤
  った使い方をしても安全を確保する)、フォールトトレランス(故障しても機
  能を維持する)、冗長設計 といった考え方を理解し、設計に組み込むことが
  重要です。

 ・特に、パラメータ設計(ロバスト設計)は、使用環境条件や劣化などのノイズ
  に影響されにくく、安定した性能を発揮する頑健な設計を行うための手法とし
  て有効です。

 ・状態遷移表設計手法は、組み込みソフトウェアの不具合を設計段階で早期に発
  見し、対応するために有効な手法です。

2. 心構え
設計者としての成長には、技術的なスキルだけでなく、人間性や仕事への姿勢も大
きく影響します。
• プロフェッショナル意識:市場の信頼を失うと企業経営に大きく影響するため、
 信頼性は設計から作り込むものと認識し、責任感を持つこと。安全性が高いこ
 とは、製品のアピールポイントにもなります。

• 能動的な姿勢:設計者は「工夫する人」「こだわる人」「追究する人」でなけ
 ればなりません。積極的に行動し、情報収集を行い、視野を広げて設計に活か
 す努力が求められます。

• 失敗からの学習:問題を正しく捉え、放置せず、発生したミスの原因を速やか
 に解明し、仕組みの不備を是正する活動を継続することが重要です。

• 三現主義の徹底:問題解決において「現場」「現物」「現実」を重視し、事実に
 基づいた原因究明を行う。報告書に写真や比較データを入れる、ヒアリング時
 には事実・推測・意見を明確にする、具体的な数値や表現を用いるなどの実践
 が求められます。

• リスクへの意識:設計時に「この部品が壊れたら製品にどのような影響が出る
 か?」「事故や災害につながらないか?」というリスクベースの考え方を徹底
 すること。

• コミュニケーションの重要性:設計作業は目に見えない情報を基に行われるた
 め、情報を大切に扱い、なぜそうするのかの背景を含め正確に理解し、正確に
 伝えることがミスを防止する上で最も重要です。先輩や同僚と意見交換し、
 自身の考えや設計内容が正しいかを確認することも不可欠です。

3. 設計者としての目標
長期的な視点で目標を設定することで、継続的な成長を促し、組織への貢献度を
高めることができます。
• 「マネジメント人材」への成長:単なる職人(スペシャリスト)に留まらず、
 業務に精通し、社内外から認められ、周囲を巻き込みながら企業全体に価値を
 もたらす「調整能力」や「コミュニケーション能力」を併せ持つ人材を目指す
 こと。

• 組織の技術力強化への貢献:個人のノウハウを組織の共有知識(固有技術)と
 して蓄積・活用できるよう、標準化や共通化の仕組みづくりに貢献する。

• 未然防止設計の確立:不具合が発見されてから修正する「もぐらたたき」では
 なく、設計段階で欠陥や問題を早期に発見し、対策を講じる「未然防止型」の
 設計思想を実践すること。

• 「攻め」の設計品質の実現:市場のニーズを捉え、曖昧な顧客要求を具体的な
 品質特性に落とし込み、設計仕様を明確にすることで、製品の競争力を高める
 こと。

• グローバルな安全性要求への対応:国際標準規格に合わせた製品開発を理解し、
 日本の独自の安全に関する工夫やノウハウを世界に発信・提案できる能力を
 身につけること。

これらのアドバイスが、あなたの設計者としてのキャリアを築く一助となれば
幸いです。

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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