世界を支える「見えない巨人」(7)「ものづくり」と「カイゼン」の精神

濱田金男

濱田金男

テーマ:中小製造業の生き残り策

3.2 「ものづくり」と「カイゼン」の精神
日本の「ものづくり」は単なる製造技術の集合体ではなく、品質と効率を追求する文化的な精神です。特に「カイゼン」は、その象徴であり、現場主導で継続的な改善を重ねることで、製品の品質と生産性を極限まで高めています。

日本の「ものづくり」は、文化・伝統に裏打ちされており、チームワーク力、資源を大切にする「もったいない」精神、そして製造業だけでなくデザイン、ソフトウェア、コンテンツ、サービスまでを包含する広い概念です 。熟練された技能と技術を基盤に、海外の先端技術を柔軟に取り入れてきた歴史があります 。  

「カイゼン」は、戦後の高度経済成長期、特に製造業(トヨタ)の現場で培われ、広がった取り組みです 。漢字の「改善」(悪い部分を良くする)に対し、カタカナの「カイゼン」は「現状に満足せず、今よりもっと良くする」という意味を持ちます 。

これは現場で働く一人ひとりが主体となって、生産過程のムダを省き、品質や生産性を向上させる手法であり 、新たな設備投資なしに、既存設備を使いながら品質向上やコスト削減を実現します 。「5S」(整理、整頓、清掃、清潔、躾)はその重要な一環です 。  

「KAIZEN」として世界的に通用する言葉となっており、国や人種、製造業だけでなくサービス業や公共サービスにも応用可能です 。エチオピアの製造業競争力強化にも導入されています 。カイゼンは、徹底した在庫管理によるコスト削減、業務の標準化によるスムーズな作業、製品・サービスの品質向上、顧客満足度向上といった効果をもたらします 。  

「ものづくり」と「カイゼン」の哲学は、単なる業務改善手法ではなく、完璧さと効率性を追求する深く根付いた文化的価値観であり、日本製品や部品の高品質と信頼性に直接的に結びついています。「ものづくり」が「文化・伝統に裏打ちされ」、「チームワーク力」や「もったいない」精神に言及されていることは、単なる技術論を超えた文化的側面を示唆しています 。

また、「カイゼン」が「現場で働く一人ひとり」による改善であり、「現状に満足せず、もっと良くする」という姿勢は 、ボトムアップで継続的な品質追求が行われていることを意味します。この集団的かつ細部にわたる品質へのこだわりが、日本製の部品や材料が世界的に信頼され、選ばれる理由となっています。  

製造におけるこの絶え間ない、漸進的な完璧さの追求は、最終ユーザーには見えにくいものの、信頼性と精密性が最重要視されるBtoB市場において決定的な競争優位性を生み出し、「目立たない貢献」をさらに強化しています。半導体や医療機器のように極めて高い信頼性が求められる部品において、「カイゼン」文化が不良品の削減やプロセス改善を絶えず行うことは 、他国に対する明確な優位性となります。

この細部への品質への献身は、日本の部品が他のメーカーから高く評価され、信頼される理由となります。最終ユーザーは「カイゼン」のプロセスを見ることはありませんが、その結果としての製品の品質と安全性から恩恵を受けます。これにより、貢献は「見えない」が、最終製品の性能と安全性にとって絶対的に不可欠なものとなります。  

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