世界を支える「見えない巨人」(6)日本の「見えない強さ」を可能にする独自のDNA

濱田金男

濱田金男

テーマ:中小製造業の生き残り策

第3章:日本の「見えない強さ」を可能にする独自のDNA
日本の技術が「目立たない」形で世界に貢献できる背景には、単なる産業構造やビジネスモデルだけでなく、日本独自の文化や価値観に根ざした「DNA」が存在します。

3.1 長期志向の研究開発と人材育成
日本の企業文化には、短期的な利益追求よりも、長期的な視点での研究開発を容認する風土があります。これが、革新的な技術の創出と、それを支える人材の育成を可能にしています。

日本の企業や投資家には、長期的な研究開発を容認する風土があり、株主は配当や利回りの安定を求める傾向が強いため、企業は長期的な視点で技術開発に取り組むことができます 。これは、短期的な収益を追求する欧米型の経営とは対照的です 。

日本の「ものづくり」には、古来より熟練された技能と技術を基盤に、海外の先端技術を柔軟に取り入れ、それを応用して世界を驚かすハイテク技術を生み出してきた歴史があります 。例えば、16世紀の火縄銃の国産化や、19世紀の蒸気機関車の模型からの迅速な複製は、日本の優れた柔軟性と応用性を示すものです 。  

日本では優秀な人材が安定した雇用環境を選択する傾向にあり 、企業は雇用の維持、優れた人材の育成、そして仕事に没頭できる環境の整備を重視します。これにより、失敗を恐れずにイノベーションに挑戦できる文化が育まれます 。

これは、シリコンバレーなどで見られる人材の流動性の高さとは異なります 。
半導体材料開発のように、最適化すべきパラメータが多く、マニュアル化が難しい分野では、日本企業はきめ細やかさや忍耐強さ、そして特許化せずにノウハウとして情報を外部に出さない戦略を通じて、長年にわたり暗黙知やノウハウを蓄積し、高い市場シェアを獲得しています 。  

日本の「長期志向の研究開発」は、単なる時間軸の長さだけでなく、忍耐強さやきめ細やかさといった文化的価値観と、安定した雇用を重視する企業統治モデルに根ざした体系的なアプローチであり、持続的な技術的リーダーシップの源泉となっています。

スニペットは長期的な研究開発を容認する風土を明確に示し、それを株主の期待(短期的な利益ではなく安定した配当)と結びつけています。これは多くの欧米経済とは異なる構造的特徴です。火縄銃や蒸気機関車の歴史的例は、これが日本の深い国民性であることを示唆しています。

半導体材料開発における「きめ細やかさや忍耐強さ」への言及は、この研究開発の成功が文化的特性と結びついていることをさらに裏付けます。これにより、長期投資が複雑で高純度な材料・部品の開発を可能にし、それがきめ細やかさと忍耐強さを要求し、それが安定した雇用環境によって支えられ、優秀な人材を引きつけ、定着させるという好循環が生まれています。

この忍耐強く深層的な基礎研究と人材への投資は、最終製品市場が変化しても、日本が「イネーブリング技術」や「隠れたチャンピオン」を生み出し、グローバルに不可欠な存在であり続けることを可能にし、永続的な影響力を保証します。

99.999999999%という超高純度シリコンウェハを何十年もの研究開発を通じて開発できる能力は、産業全体を可能にする根本的なイネーブラーとなります 。たとえ最終消費者向け電子機器市場で日本ブランドが他国に取って代わられても、その基盤となる部品や材料は依然として日本製です。

この戦略は、技術的リーダーシップの「将来性保証」のようなものであり、彼らの革新が技術ピラマッドの基盤にあるため、永続的な影響力を持つことになります。これが、彼らの貢献が「目立たない」が「不可欠」である核心的な理由です。  

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