なぜなぜ分析を「現場止まり」で終わらせない!真因は設計にあり。「越境型」分析で品質問題を根絶する方法
外注管理と工場監査は、製造業における品質維持・向上、コスト削減、納期遵守を
実現するために不可欠な活動です。特に、生産を社内で完結できない場合や、高度
な専門技術を持つ企業と連携する目的で、外部への委託(外注)が行われます。
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1. 外注管理のポイント
外注管理は、単に価格を安くするためだけのものではなく、自社の生産能力を補完
したり、専門性を追求したりするためのパートナーシップ構築が重要視されています。
1.1. 管理の基本事項
外注の選定から発注業務、品質・納期管理、そして評価に至るまで、以下の基本事項
を明確にし、文書化することが求められます。
•内外作区分とその比率の決定
社内で生産するか、外注するかを判断する基準と比率を明確にします。この判断は
コスト効率、資産利用、供給チェーンのリスク、柔軟性、知識・専門知識、法的要
件と件と規制など、複数の要因を総合的に評価して行われます。
•外注先への生産割当計画
どの外注先にどれだけの生産を割り当てるかを計画します。
•材料支給方式、設備貸与方式の決定
材料や設備を自社から支給するかどうかを決定します。
•単価決定、変更ルールの決定
製品の単価や、単価変更のルールを明確にします。
•技術指導体制(管理組織)の整備
外注先への技術指導体制を整えます。
•外注評価とランク付けのルール作成
外注先のパフォーマンスを評価し、ランク付けするルールを定めます。
1.2. 不良・納期遅延対策
外注化における最大の課題は、品質不良と納期遅延です。これらの問題の原因は、
発注側と外注工場側の両方に存在し得ます。
•発注側の主な原因:
◦生産計画立案の遅れによるリードタイム不足
◦設計不備、設計変更多発
◦外注先生産能力把握不足
◦無理な納期設定
◦甘い納期管理、品質管理
◦材料支給、治工具、図面等の貸与の遅れ
◦安すぎる単価
◦技術水準の調査不足、評価ミス
•外注工場側の主な原因:
◦責任感欠如、労働意欲の欠如
◦能力以上の受注
◦工程管理、品質管理の不備
◦作業の習熟度が低い
対策:
•受け入れ態勢の強化: 不良品を自社工程に入れないよう、受け入れ検査を実施し、
不良ロットは返却して再発防止策を講じさせます。
•納期管理体制の強化: 生産計画、製造部門、技術部門、生産管理部門などが連携し、
コンピュータによる発注・納期管理システムを導入するなど、管理支援体制を強化
します。
•外注管理組織の強化: 専任スタッフを置いた外注管理課を組織し、専門の指導員を
養成して外注先で改善指導を行います。
1.3. 外注の評価と格付け
外注工場を定期的に評価・格付けし、その結果に基づいて取引量(発注拡大または縮小)
をコントロールする「ボーナス&ペナルティー制度」を設けることが推奨されます。
•評価項目
◦納期遵守率
◦不良率
◦コストダウン率
◦経営状況
◦全生産高に対する自社製品の依存度
◦取引年数
◦その他
これらの評価は少なくとも年に1回は実施し、PDCAサイクルを回す仕組みを構築する
ことが求められます。
1.4. 契約の種類
外注先との円滑な取引のためには、以下の契約を適切に締結することが重要です。
•取引基本契約書: 継続的な取引に共通する基本的な取り決めを定めます。
•品質保証契約書: 納入される製品の品質基準、瑕疵発見時の協力体制、費用負担、
損害賠償などを明確にします。
•秘密保持契約書: 企業秘密の漏洩防止に関する事項を定めます。
•技術ライセンス契約書: 知的財産権やノウハウの使用許諾に関する契約です。
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2. 工場監査・工程監査のポイント
工場監査や工程監査は、委託生産、特に新製品の立ち上げにおいて重要な位置づけと
なります。
2.1. 監査の目的と重要性
監査は、単に問題を発見するだけでなく、品質管理体制や生産状況を把握し、必要に
応じて改善を促すために実施されます。特に、海外工場への委託生産では、不良品を
日本へ入れさせないことが大前提となるため、管理が手薄になりがちな海外工場では
監査がより一層重要です。
2.2. 監査実施のポイント
監査を効果的に実施するためには、以下の3つのポイントが重要です。
•目的を明確にする: 何のために監査を行うのか、その目的をはっきりさせます。
•求める品質管理のレベルをはっきり伝える: 委託先に求める品質レベルを具体的に
伝えます。
•活動の記録(実績)を見る: 規定や手順書が存在するだけでなく、実際に活動が行
われ、その記録が残されているかを確認します。例えば、不良発生の原因調査
・対策記録、多能工の教育計画と実績、生産性向上への取り組み内容と成果、在庫
削減の取り組みと経過・結果、機械設備・測定機のメンテナンス・精度確認記録
などが挙げられます。
2.3. 監査内容の分類と具体的な確認項目
監査は、その目的や方法によって分類されます。
•監査の目的別分類:
◦新規協力企業の経営状態確認
◦新製品立ち上げ時の製造工程適合性確認
◦不良発生時の再発防止策確認
◦量産開始後の工場の環境、作業方法、品質の問題確認
•監査方法による分類:
◦ISO9000や14000などのマネジメントシステムに沿った監査
◦商品の規格や製造手順書に沿った製造工程の監査
◦工場設備や機械装置の基準、法律に沿った監査
◦両社間の契約内容への適合性確認
◦独自の監査項目に沿った監査
具体的な監査チェックリストの構成としては、経営者の責任、品質保証体制、文書
・記録管理、部品材料・購入品管理、外注管理、工程管理図、指図書管理、工程内
検査、工程内異常処置、トレーサビリティ、不適合品管理、是正処置・予防処置、
出荷検査、設備・治工具管理、計測器管理、教育訓練、5S、静電対策などが含まれ
ます。
特に海外工場においては、以下のMの観点から対策の仕組みが構築されているかを
詳細に確認することが推奨されます:
•人(Man): 新人教育、検査員教育、専門技能教育、管理者教育など、教育制度の
仕組み化がポイントです。作業者の技能や熟練度、教育実施内容を特に確認します。
•設備(Machine): 定期保守、機械精度のばらつき管理、日常管理の手順が重要です。
設備の性能だけでなく、それを使いこなしているか、特性を把握しているか、精度
測定を定期的に行っているかを確認します。
•方法(Method): ポカよけ治具、限度見本、検査体制、特殊工程の管理、見える管理
など、人のミスを防ぐ仕組みや検査体制を整えます。
•材料(Material): 先入れ先出し管理、受入検査の実施、購入先の指定など、材料管理
の仕組みを確認します。
•測定(Measurement): 測定機の校正、測定技術者の有無、自動計測器の導入状況を
確認します。
•マネジメント(Management): 経営者の意識、組織体制、人事制度、品質保証契約、
委託先選定基準の明確化などを監査します。
2.4. 監査方法と限界
監査を行う際は、事前にチェックシートを相手に送付し準備を促し、実際の監査では現場
規定書、手順書、記録類を確認し、決まり事と実際の状況が一致しているかを確認します。
ただし、監査実施の予告があると、工場が一時的にきれいにされたり、監査のために作業
標準を整備したりすることもあるため、単に目に見える範囲だけでなく、見えない部分
(管理システムが機能しているか、固有技術が蓄積されているか、人材が育成されている
か、特に中間層・管理層の長期在籍状況など) を監査することが重要です。
これらの外注管理と工場監査のポイントを実践することで、企業は安定した品質と納期
を確保し、競争力を高めることができるでしょう。



