デジタル時代におけるQC7つ道具と新QC7つ道具の活用:データを基に事実を把握し、論理的に問題を解決する

濱田金男

濱田金男

テーマ:製造業の正しい品質管理手法

QC7つ道具と新QC7つ道具は、品質管理や問題解決の基本的なフレームワークとして
長年活用されてきました。デジタル化が進む現代においても、これらのツールが持つ
「データを基に事実を把握し、論理的に問題を解決する」という本質的な価値は変わ
りません。
むしろ、デジタル技術と組み合わせることで、その効果は飛躍的に向上します。

●QC7つ道具のデジタル時代における活用
QC7つ道具は主に数値データを扱うため、デジタルツールとの相性が非常に良いです。

<チェックシート (Check Sheet)>
デジタル化の恩恵: 紙のチェックシートから、タブレットやスマートフォンで入力でき
るデジタルチェックシートアプリやフォームに移行することで、データ収集が自動化さ
れ、リアルタイムでの集計が可能になります。
IoTセンサーと連携して、自動的にデータを記録することも可能です。
メリット: 入力ミス削減、集計作業の効率化、データ活用の迅速化。

<パレート図 (Pareto Chart)>
デジタル化の恩恵: Excelなどの表計算ソフトウェアやBI(ビジネスインテリジェンス)
ツールを活用することで、収集したデータを瞬時にパレート図として可視化できます。
不良項目やクレーム内容のデータをリアルタイムで更新し、常に重点管理すべき項目を
把握できます。
メリット: 集計・グラフ作成の手間削減、リアルタイムでの問題把握、重点課題の迅速
な特定。

<ヒストグラム (Histogram)>
デジタル化の恩恵: 測定機器から直接データを取り込み、統計解析ソフトウェアやデータ
分析プラットフォームで瞬時にヒストグラムを作成できます。これにより、工程のばらつ
きや特性をリアルタイムで監視し、異常を早期に発見できます。
メリット: 大量のデータ処理、工程能力の正確な把握、異常の早期発見。

<散布図 (Scatter Diagram)>
デジタル化の恩恵: 2つの要因間の相関関係を、データ可視化ツールや統計ソフトウェア
で簡単に分析できます。例えば、製造条件と不良率、作業時間と生産量などの関係を、
膨大なデータから自動的に抽出し、グラフ化できます。
メリット: 要因間の関係性の迅速な発見、原因究明の効率化。

<グラフ (Graphs/Control Charts)>
デジタル化の恩恵: IoTデバイスから収集される生産ラインの稼働状況や品質データを
リアルタイムダッシュボードで監視し、管理図として表示できます。管理限界を逸脱
した際に自動でアラートを出すことも可能です。
メリット: リアルタイムでの工程監視、異常発生時の即時対応、予知保全への応用。

<層別 (Stratification)>
デジタル化の恩恵: データベースやデータウェアハウスに蓄積されたデータを、製品
ロット、製造ライン、作業者、時間帯など様々な条件で瞬時にフィルタリング・集計
できます。これにより、問題発生の傾向を詳細に分析できます。
メリット: 多角的な視点でのデータ分析、問題発生要因の深掘り。

<特性要因図 (Cause and Effect Diagram)>
デジタル化の恩恵: オンラインホワイトボードツールやデジタルマインドマップツール
を使用することで、遠隔地のメンバーともリアルタイムで共同作業しながら特性要因図
を作成できます。ブレインストーミングで出たアイデアをデジタル付箋として貼り付け
簡単に整理・分類できます。
メリット: リモートでのコラボレーション、情報の整理・共有の効率化、図の修正・更
新の容易さ。

●新QC7つ道具のデジタル時代における活用
新QC7つ道具は主に言語データや定性的な情報を扱うため、デジタルツールは情報収集
整理、共有、そして分析の補助として活用されます。

<親和図法 (Affinity Diagram)>
デジタル化の恩恵:オンラインコラボレーションツール(例:Miro, Muralなど)のデジタ
ル付箋機能を使って、ブレインストーミングで出たアイデアを自由に配置・グループ化で
きます。テキストマイニングツールで大量の顧客の声やアンケート結果を分析し、親和性
の高いキーワードを自動抽出する補助も可能です。
メリット: 大量の言語データの効率的な整理、リモートでの共同作業、アイデアの体系化。

<連関図法 (Interrelationship Digraph)>
デジタル化の恩恵: デジタル図形描画ツールや専用の図解ソフトウェアを用いて、複雑な
原因と結果の因果関係を視覚的に表現できます。修正が容易で、関係性の追加・削除も
柔軟に行えます。
メリット: 複雑な問題構造の可視化、チーム内での認識共有、修正・更新の容易さ。

<系統図法 (Tree Diagram)>
デジタル化の恩恵: プロジェクト管理ソフトウェアやマインドマップツールで、目標達
成のための手段を階層的に展開できます。各手段に担当者や期日を設定し、進捗管理を
行うことも可能です。
メリット: 目標達成への道筋の明確化、具体的な行動計画への落とし込み、進捗管理と
の連携。

<マトリックス図法 (Matrix Diagram)>
デジタル化の恩恵: Excelなどの表計算ソフトウェアで簡単に作成・管理できます。複数
の要素間の関係性を数値や記号で入力し、条件付き書式などで視覚的に強調することで
優先順位付けや評価を効率的に行えます。
メリット: 多次元的な関係性の整理、評価・優先順位付けの効率化、データ更新の容易さ。

<マトリックスデータ解析法 (Matrix Data Analysis Chart)>
デジタル化の恩恵: 唯一数値データを扱う新QC7つ道具であり、統計解析ソフトウェア
やデータマイニングツールと組み合わせることで、多変量解析を自動で行い、膨大な
データの中から潜在的な関係性や傾向を発見できます。
メリット: 大量データの高度な分析、隠れた関係性の発見、客観的な評価。

<PDPC法 (Process Decision Program Chart)>
デジタル化の恩恵: フローチャート作成ソフトウェアや専用のリスク管理ツールを用い
て、不測の事態やリスクを想定したプロセスを視覚的に作成できます。各ステップでの
リスクと対策を明確にし、シミュレーションを行うことも可能です。
メリット: リスクの事前特定と対策検討、緊急時対応計画の明確化。

<アローダイアグラム法 (Arrow Diagram Method)>
デジタル化の恩恵: プロジェクト管理ソフトウェアやガントチャートツールで、作業の
順序、所要時間、クリティカルパスなどを自動計算し、最適なスケジュールを作成でき
ます。進捗状況をリアルタイムで更新し、遅延を早期に把握できます。
メリット: プロジェクトスケジュールの最適化、進捗管理の効率化、ボトルネックの特定。

●デジタル統合による全体的なメリット
デジタル技術とQCツールを組み合わせることで、以下のような全体的なメリットが得ら
れます。
・データ収集の自動化とリアルタイム化: 現場のIoTデバイスや各種システムから自動で
 データを収集し、リアルタイムで分析に活用できます。

・分析の高速化と精度向上: 膨大なデータを短時間で処理し、人間では見落としがちな
 パターンや相関関係をAIや機械学習が発見する手助けをします。

・情報共有とコラボレーションの促進: クラウドベースのツールにより、場所や時間を
 問わずチームメンバーが情報にアクセスし、共同で作業を進めることができます。

・意思決定の迅速化: リアルタイムのデータと分析結果に基づき、より迅速かつ的確な
 意思決定が可能になります。

・継続的な改善の容易化: PDCAサイクルをデジタル上で回しやすくなり、改善活動の
 継続性と効果を高めることができます。

デジタル時代においても、QC7つ道具と新QC7つ道具は、データを活用した問題解決
と品質改善の「思考の骨格」として不可欠です。デジタルツールは、その骨格をより
強固にし、肉付けするための強力な「筋肉」となるでしょう。

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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