中小製造業は「多品種少量生産」で利益を上げるノウハウを蓄積すること。(2)加工工程の改善ステップはこう進める!
製造業の現場において、作業ミスは品質低下、生産性悪化、そして最悪の場合、安全
上の問題を引き起こす要因となります。長年、製造現場では様々な対策が講じられて
きましたが、「人」の細かな作業内容を客観的に捉え、ミスを未然に防ぐことは依然
として大きな課題でした。
このような状況を打破する画期的な解決策として注目されているのが、AI(人工知能)
を活用した作業分析システム、特にAIカメラシステムです。本稿では、製造現場の作
業ミス防止という観点から、AIカメラシステム導入の効果について詳しく解説します。
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●AIカメラシステムが作業ミスを防ぐメカニズム
AIカメラシステムは、製造現場に設置されたカメラで撮影された映像データを、AI
(機械学習やコンピュータビジョン技術)を用いて分析し、作業内容や動作に関する
情報を抽出します。
この分析を通じて、以下のようなメカニズムで作業ミスを防止します。
標準作業手順(SOP)からの逸脱の特定
システムにあらかじめ登録された正しい作業手順と、作業者が実際に行っている動作
を比較照合し、工程飛ばし、手順間違い、余計な動作などをリアルタイムまたは事後
的に検出します。逸脱が検出された場合は、即座にアラートを発報し、作業者や管理
者が早期に対応できます。
異常検知アルゴリズムによる予期せぬミスの検出
大量の正常な作業データを学習したAIが、通常とは異なる動作やパターンを「異常」
として検出し、潜在的なエラーや予期せぬ問題の兆候を早期に捉えます。これにより
SOPで定義されていないような、未知のミスも発見できる可能性があります。
行動認識、姿勢推定、物体検出による組立・品質ミスの検出
作業者の手の動き、姿勢、使用している部品や工具などをAIが認識し、部品の選択
ミス、工具の誤使用、組付不良、欠品などを検出します。例えば、ケーブルがコネ
クタに正しく挿入されているかをAIが画像から判断する事例や、必要な部品が取り
付けられているか(欠品チェック)を確認することも可能です。
センサーフュージョンによる非視覚的エラーの検出
AIカメラだけでは捉えられない、ネジの締め付けトルク不足のような品質に関わる
重要なパラメータを、スマートツールや設備に搭載されたセンサーの情報と連携さ
せて監視します。
視覚的な作業と物理的な計測データを統合的に分析することで、より包括的な品質
保証が可能になります.
■ノーコードでAIによる物体検知/作業認識を実現
■画像認識と作業指示の連動で、ポカミスを防ぐ
●AIカメラシステム導入による具体的な効果
AIカメラシステムの導入は、作業ミス防止に大きく貢献し、以下のような具体的な
効果をもたらします。
品質向上: 作業ミスを早期に発見し、不良品の発生や流出を未然に防ぎます。また、
標準作業の遵守を徹底することで、製品品質の安定化と均一化に繋がります。
作業効率の向上: ミスや不良品の発生が減少することで、手直しや再作業にかかる
時間やコストを削減できます。リアルタイムなアラートにより、問題が深刻化する
前に対応できるため、ライン停止などのリスクも低減します。
教育・訓練への活用: 熟練作業者の正しい手順や動作をデータとして記録・分析し
新人作業者の教育に活用できます。標準との差異を可視化することで、具体的な
改善点を指導しやすくなり、教育期間の短縮や早期の品質安定化を支援します。
データに基づいた改善: 作業データやエラー発生状況を蓄積・分析することで、
ミスの傾向や原因を特定し、効果的な対策を講じることができます。これにより、
PDCAサイクルを回し、継続的な品質改善活動を推進することが可能になります。
●導入時の注意点
AIカメラシステムの導入は多くのメリットをもたらしますが、以下の点には注意が
必要です。
プライバシーへの配慮: 作業者の映像を記録・分析するため、プライバシー保護に
関する適切な対策を講じる必要があります。データの収集目的や利用範囲を明確にし
従業員への十分な説明と理解を得ることが重要です.
AIの精度限界と環境への対応: AIの認識精度は環境要因(照明、カメラの角度、遮蔽
物など)に影響を受ける可能性があります。導入前に十分な検証を行い、現場環境
に合わせた最適なシステム構築が求められます。また、AIの判断を過信せず、必要
に応じて人間の目による確認プロセスを設けることも重要です.
導入コストとROI: システム導入には、カメラ、サーバー、ソフトウェアなどの初期
投資に加え、運用・保守費用が発生します。導入目的を明確にし、期待される効果
(品質向上、コスト削減など)を定量的に評価し、投資対効果(ROI)を見極めるこ
とが重要です.
●導入事例
実際に、多くの製造業でAIカメラシステムが導入され、効果を上げています。
自動車部品製造B社
骨格検知と姿勢評価により作業負荷を定量的に特定し、工程改善に活用。
自動車製造C社
部品組立作業におけるNG作業・準NG作業をリアルタイムに検出し、見回りコスト
を削減。
島根富士通: ノートPC組立ラインで画像認識AIを活用し、従来困難だったケーブル接
続検査を自動化。
キユーピー株式会社: 画像認識AIを活用し、不良ポテトを高精度に自動選別し、品質
を向上。
OKI: PHS組立時のエアー吹き作業の良否を行動認識AIで判定し、作業漏れ・ミスを
防止。
これらの事例からもわかるように、AIカメラシステムは様々な業種・工程で作業ミス
防止に貢献しています。
●まとめ
AIカメラシステムは、これまで困難であった人手作業の詳細な分析を可能にし、標準
作業の逸脱、予期せぬエラー、組立・品質ミス、そして非視覚的なエラーを高精度に
検出することで、製造現場の作業ミス防止に大きく貢献します。
導入にあたっては、プライバシーへの配慮やコスト、精度などの課題を考慮する必要
がありますが、戦略的に導入・活用することで、品質向上、生産性向上、コスト削減
といった多岐にわたる効果が期待できます。
製造現場の作業ミス撲滅を目指し、品質と効率を向上させるために、AIカメラシステム
の導入を検討してみてはいかがでしょうか。



