中小製造業の多品種少量生産管理において、よく発生する問題、その背景・原因、そして対策とは?

濱田金男

濱田金男

テーマ:中小製造業の生き残り策

中小製造業の多品種少量生産管理において、よく発生する問題として、生産計画立案、
生産進捗管理がうまくいかず、納期遅れや品質不良が発生します。
その背景、原因は何か?また対策はどうすれば良いかを考えてみます。

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1. よく発生する問題
(1)生産計画の精度が低い・頻繁な計画変更
 ・個々の製品の加工時間や段取り替え時間の見積もりが不正確。
 ・急な受注変更や特急オーダーへの対応で計画が崩れる。
 ・負荷状況を正確に把握できず、無理な計画を立ててしまう。

(2)生産進捗の把握が困難
 ・多くの異なる品目が工場内に点在し、どの工程まで進んでいるかリアルタイムで追跡できない。
 ・作業者からの報告頼みで、情報が遅れたり不正確だったりする。
 ・問題発生(設備故障、材料不足、不良発生など)の発見が遅れる。

(3)納期遅延の頻発
 ・計画のずれや進捗の遅れが積み重なり、最終的に納期を守れなくなる。
 ・特定の工程や設備、作業者に負荷が集中し、ボトルネックとなる。
 ・手配漏れや情報伝達ミスによる遅延。

(4)品質のばらつき・不良発生
 ・製品ごとに作業手順や注意点が異なり、標準化が難しい。
 ・作業者のスキルへの依存度が高く、担当者によって品質が変動する。
 ・急な計画変更や特急対応で、作業が雑になりやすい。
 ・不良発生時の原因究明と対策が後手に回り、再発しやすい。

(5)リソース(ヒト・モノ)の有効活用ができない
 ・段取り替えが多く、実質的な加工時間が短くなる。
 ・作業者や設備の「手待ち」時間が発生しやすい。
 ・仕掛品が増加し、工場内のスペースを圧迫し、管理も煩雑になる。

(6)コスト管理が難しい
 ・製品ごとに原価計算を正確に行うのが困難。
 ・予期せぬ手戻りや不良対応でコストが増加する。

2. 背景・原因
(1)多品種少量生産の特性
 ・段取り替えの多さ: 生産効率を低下させる主要因。
 ・作業の多様性・複雑性: 標準化が難しく、熟練工への依存度が高まる。
 ・受注量の変動: 生産負荷の予測が困難。
 ・短いリードタイム要求: 計画・準備・実行の各段階で余裕がない。

(2)情報の分断・可視化不足
 ・営業、設計、購買、製造など部門間で必要な情報がリアルタイムに共有されていない。
 ・現場の状況(進捗、負荷、問題)が事務所側から見えにくい。
 ・紙や口頭での指示・報告が多く、情報伝達に漏れや遅れ、誤りが生じやすい。

(3)標準化・仕組み化の不足
 ・作業手順、使用工具、品質基準などが製品ごと、あるいは担当者ごとに異なり、
  属人化している。
 ・計画立案や進捗管理のルールが曖昧。

(4)リソースの制約
 ・限られた人員で多くの業務をこなしている(兼務が多い)。
 ・最新の生産管理システムや自動化設備への投資が難しい。
 ・熟練工の高齢化と若手への技能継承の遅れ。

(5)外部要因
 ・顧客からの急な仕様変更や納期変更。
 ・サプライヤーからの部品供給の遅れや品質問題。

3. 対策
(1)生産計画の精度向上
 ・標準時間の設定: 実績データに基づき、製品ごと・工程ごとの標準作業時間や
  段取り時間を設定・見直しを行う。
 ・生産スケジューラの活用: Excel等での管理から一歩進め、負荷を考慮した計画
  立案を支援するツール(比較的安価なものもある)の導入を検討する。まずは
  簡易的なものでも良い。
 ・バッファの設定: 計画に意図的に余裕(時間や能力)を持たせ、不測の事態に
  対応できるようにする。
 ・小ロット化・平準化: 可能であれば、ロットサイズを小さくし、生産量の波
  をならす工夫をする。

(2)「見える化」の推進
 ・進捗状況の可視化: ホワイトボードや進捗管理盤、シンプルなITツール
  (例:かんばん方式ツール、プロジェクト管理ツール)を活用し、誰でも進捗
  状況が分かるようにする。
 ・リアルタイムな情報収集: バーコードやRFID、タブレット端末などを活用し、
  実績入力の手間を削減し、情報の鮮度を上げる(IoTの活用)。
 ・問題の可視化: アンドン(行灯)などを活用し、設備異常や材料切れなどの
  問題をすぐに知らせる仕組みを作る。

(3)標準化と仕組み化
 ・作業手順書の作成・整備: 特に重要な作業や繰り返し発生する作業について、
  写真や図を用いて分かりやすい手順書を作成し、徹底する。
 ・作業の単純化・共通化: 部品や工程の共通化を進め、段取り替えや作業の種類
  を減らす努力をする。
 ・5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底: 作業環境を整え、探すムダをなくし
  異常を発見しやすくする。

(4)コミュニケーションと情報共有の強化
 ・定例ミーティングの実施: 製造現場と関連部署(営業、設計、購買など)が定期
  的に情報交換を行う場を設ける(例:朝礼での短時間ミーティング)。
 ・情報共有ツールの活用: グループウェアやビジネスチャットなどを活用し、迅速
  かつ正確な情報伝達を行う。

(5)ボトルネック工程の特定と改善
 ・どの工程が全体の生産スピードを律速しているか(ボトルネック)を特定し、
  集中的に改善(能力増強、段取り改善、応援体制など)を行う。
 ・段取り改善 (SMED): 段取り時間を短縮するための改善活動に取り組む。

(6)多能工化の推進
 ・一人の作業者が複数の工程や機械を扱えるように教育・訓練を進め、人員配置の
  柔軟性を高め、ボトルネックを緩和する。

(7)品質管理体制の強化
 ・品質チェックポイントの設定: 各工程で品質を確認する仕組みを明確にする。
 ・不良発生時の原因究明と再発防止: なぜなぜ分析などを用いて真の原因を突き
  止め、恒久的な対策を実施する。
 ・品質基準の明確化と共有: 誰が作業しても同じ品質が出せるよう、基準を明確に
  する。

(8)ITシステムの段階的導入
 ・最初から大規模なシステムを目指すのではなく、課題解決に直結する部分
  (例:進捗管理、簡単なスケジューリング)から、スモールスタートでIT化
   を検討する。安価なクラウドサービスなども選択肢に入れる。

4.重要な視点
 ・現状分析: まずは自社の問題点を具体的に把握することが重要です。どこで、何が
  なぜ起こっているのかをデータに基づいて分析します。
 ・優先順位付け: 全ての問題に一度に取り組むのは困難です。最も影響の大きい問題
  や、比較的取り組みやすい問題から着手し、優先順位をつけて改善を進めます。
 ・継続的な改善: 生産管理の改善は一度で終わるものではありません。PDCAサイク
  ル(Plan-Do-Check-Action)を回し、継続的に改善活動を行う文化を醸成する
  ことが不可欠です。
 ・従業員の巻き込み: 現場の担当者は日々問題に直面しており、改善のヒントを
  持っています。改善活動に従業員を巻き込み、主体的に取り組んでもらうこと
  が成功の鍵です。

多品種少量生産の管理は複雑ですが、これらの対策をヒントに、自社の状況に合わせ
て組み合わせ、粘り強く実行していくことで、納期遵守率の向上、品質の安定、コス
ト削減といった成果につながるはずです。

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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