製造業における熟練技術の要素とは?熟練技術の伝承のための取り組みとは?
1. はじめに
画像を用いた外観検査は、製造業における品質管理、製品の安全性確保、そして様々な
産業における効率的な運用に不可欠なプロセスです。製造、農業、インフラ、医療など
多岐にわたる分野で、製品や設備の品質、異常の早期発見、そして全体的な効率性を
高めるために重要な役割を果たします。
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(気軽に導入できるAI外観検査ツールを使ってみよう)
AIによる画像認識と分析は、客観的で一貫性のある検査を可能にし、人間の目では捉え
きれない微細な異常や変化を高精度に検出することができます。また、自動化によって
検査の効率が向上し、人件費の削減にも貢献します。さらに、検査結果をデータとして
蓄積、分析することで、品質管理の高度化や生産プロセスの改善にも役立てることが
期待されます。
特に、プログラミングの知識がなくてもAIを活用できるノーコードAIプラットフォーム
の登場は、外観検査の分野においても大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
これらのプラットフォームは、専門的な技術を持たない現場の担当者でも、直感的な
操作でAIモデルを開発し、外観検査の自動化を実現することを可能にします。
また、無料またはトライアルベースで利用できるツールが増えており、企業規模に関わ
らず、これらの先進技術を導入しやすくなっています。
2.調査の概要
本記事の作成にあたり、以下の4つの項目について調査を行ないました。
(a) 主な機能と特徴: ツールの核となる機能と、他のツールと比較して際立った特徴は
何か。
(b) 無料プランまたはトライアルの有無と内容: 無料で利用できる範囲や試用期間、
およびそれらの具体的な内容と制限事項は何か。
(c) 画像外観検査への適用事例: 実際に画像を用いた外観検査に適用された事例が
あるか。
(d) 利用の際の技術的な知識の必要性: ツールを効果的に利用するために、どの程度
の技術的な専門知識が必要か。特に、プログラミングスキルが不要であるという
「ノーコード」の側面に着目します。
3.無料ツールの紹介
①ADFI (Advanced Data Fusion and Intelligence)の解説
ADFIは、株式会社AIロボティクスが提供するクラウドベースのプラットフォームであり
プログラミングを一切行うことなく、画像認識および異常検知AIモデルを開発できるこ
とを目的としています。外観検査などのタスクへのAI導入を簡素化することに重点を
置いています 。
●主な機能と特徴
ADFIの大きな特徴の一つは、わずか10分程度で最先端の画像認識AIを作成できるとい
う開発スピードです 。この高速な開発サイクルは、迅速なプロトタイピングと導入を
可能にします。基盤技術として、Googleが開発した画像認識AIアルゴリズムである
Vision Transformer (ViT) を独自に改良したアルゴリズムを使用しており 、高い認識
精度が期待できます。
開発はすべてWebブラウザ上で行われ、高性能なサーバーやPCは不要です 。画像認識
だけでなく、異常検知にも対応しており 、外観検査における欠陥検出に特に有効です。
AIモデルの開発とテストは無料で提供されており 、「トライアルフリー」で気軽に試
すことができます 。学習に必要なデータ量も少なく、一部のアルゴリズムではカテゴ
リあたりわずか3枚の画像で学習が可能であり、Deep Metric Learning (DML) でも
約20枚程度です。
●無料プラン/トライアルの情報
ADFIの無料プランでは、AIモデルの開発とテストを無制限に行うことができます 。
無料トライアルでは、ローカル環境でのAI実行が90日間、API呼び出しが300回まで
可能です 。無料トライアルでアップロードできる画像は1000枚までとなっています 。
トライアル期間は最終ログイン日から1年間で、期間終了後にはデータが自動的に削除
される可能性があります 。
●画像外観検査への適用事例
ADFIは、特に異常検知と外観検査システム構築のために設計されています 。活用事
例としては、食品への異物混入検査、工場での製品不良検出、建設現場での安全確認
などが想定されています 。また、ベアリングの錆検査、ヒートシンクの傷検査、コ
ネクターの挿入検査、電子機器製造における部品の欠品チェックなどにも応用できる
と考えられます 。実際に、製造業の現場で外観検査に活用され、大幅な時間とコスト
削減につながった事例も報告されています 。
●利用の際の技術的な知識の必要性
ADFIはノーコードプラットフォームであり、プログラミングの知識は一切不要です 。
AIモデルの作成と性能検証は、Webブラウザ上の直感的なインターフェースを通じ
て行えます 。学習用およびテスト用の画像をアップロードし、「学習実行」ボタン
をクリックするだけでAIモデルを作成できる簡単なプロセスです 。
ADFIが異常検知に特化しており、外観検査での利用が明示されていること、そして
開発とテストが無償で行えることは、ユーザーのニーズに非常に合致していると考え
られます。開発に必要なデータ量も比較的少なく、短時間でAIモデルを作成できる
点は、実用的な導入を検討する上で大きな利点となります。
②Teachable Machine (Google)
Teachable Machineは、Googleが提供する無料のノーコードAI開発ツールであり、
主に画像、音声、姿勢認識といった分類タスクに重点を置いています 。プログラミ
ングの経験がないユーザーでも簡単にAIモデルを作成できることを目指しています。
●主な機能と特徴
Teachable Machineの最も特徴的な点は、直感的なドラッグ&ドロップインター
フェースを通じてAIモデルを訓練できることです 。画像、音声、姿勢の認識に対応
しており 、ユーザーは自身の画像データをファイルからアップロードするか、Web
カメラを通して直接取り込んでモデルを訓練できます 。
モデルは比較的短時間で訓練可能であり、クラスあたり10枚程度の少ない画像デー
タでも学習できます 。訓練されたモデルは、Webサイトやアプリケーションなど
の他のプラットフォームで使用するためにエクスポートできます 。標準的な画像
モデルを含む、様々なプロジェクトタイプが用意されています 。また、Webカメ
ラやアップロードしたファイルを使用して、モデルをリアルタイムでテストする
機能も備わっています 。
●無料プラン/トライアルの情報
Teachable Machineは、基本的な機能は完全無料で利用でき、月額料金や年間料
金はかかりません 。無料プランでは、1ユーザーあたり1プロジェクトという制限
がある可能性があります 。Teachable Machineの主な用途の一つにオンライン
コースの作成がありますが、画像認識機能自体は無料で利用できるようです 。
●画像外観検査への適用事例
Teachable Machineは主に分類タスク向けに設計されていますが、画像を「良品」
と「不良品」に分類するようにモデルを訓練することで、外観検査に応用できます
寿司ネタの種類を判定する例 は、その画像認識能力を示しています。教育現場で
AIを教えるために使用されている例もあり 、基本的な外観検査タスクにも利用で
きる可能性があります。
●利用の際の技術的な知識の必要性
Teachable Machineは、コーディングを一切必要とせず、視覚的なドラッグ&ドロ
ップインターフェースを使用します 。機械学習の専門知識がない初心者でも直感
的かつ簡単に使用できます 。
Teachable Machineは、その使いやすさと完全無料という点が大きな魅力です。
高度な異常検知機能は期待できませんが、単純な良否判定のような分類タスクで
あれば、外観検査の初期段階でのプロトタイピングや教育目的での利用に適して
いると考えられます。
③MELSOFT VIXIO (三菱電機)
MELSOFT VIXIOは、三菱電機が提供するAI外観検査ソフトウェアです 。
●主な機能と特徴
AIの専門知識がなくても簡単に導入できることを特徴としています 。良品画像
を学習させるだけで、約10秒でAIモデルを生成できるとされています 。
オートチューニング機能により、高い精度を実現します 。ノーコードでシステ
ム構築が可能であり、三菱電機のシーケンサとの連携により、トレーサビリ
ティを確保できます 。
GigE Vision (GenICam) 対応のカメラを使用できるため、様々なカメラに対応
可能です 。FTP通信により、既存の機器や設備の画像ファイルを利用すること
もできます 。
●無料プラン/トライアルの情報
1ヶ月間の無料トライアルが提供されています 。
画像外観検査への適用事例: 自動車部品(スナップリングの傷)、電気・電子部
品(電子部品の割れ)、半導体(基板のはんだの焦げ付き)など、様々な業種
での活用事例が紹介されています 。ルールベースの検査とAIによる検査を併用
することも可能です 。
利用の際の技術的な知識の必要性
AIの専門知識は不要で、簡単にAIモデルを作成できます 。ノーコードでシステ
ム構築が可能です 。
MELSOFT VIXIOは、三菱電機が提供する強力な外観検査ソフトウェアであり、
特に三菱電機のシーケンサを利用している環境においては、非常にスムーズな
導入と運用が期待できます。1ヶ月の無料トライアルが提供されているため、
実際に試してみることが可能です。
4.結論と推奨事項
本レポートでは、画像外観検査に利用できる無料またはトライアル可能なノーコード AI
ツールについて、評価を行いました。その結果、複数の有望なツールが見つかりました。
特に、ADFI は、外観検査と異常検知に特化しており、無料プランで開発とテストを無制
限に行えるため、最も推奨されるツールの一つです。少ないデータで高速にモデルを作成
できる点も、実用的な導入を検討する上で大きなメリットとなります。
Teachable Machine は、完全無料で非常に使いやすいツールであり、AI 初心者や基本的な
分類タスクに適しています。高度な異常検出には向きませんが、簡単な良否判定などの用
途であれば十分に活用できる可能性があります。



